2024/03/28 繁盛の黄金律

それでもテイクアウト・宅配を続けますか

強い食品スーパーのデリ・総菜は、コロナ禍が明けた今も売上が好調だといいます。一方で、飲食店のテイクアウトと宅配は、一定数の需要はあるものの、売上はだいぶ落ち込んできているそうです。この差は一体、何が原因なのかを解き明かしてみます。

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Vol.151

外食業は、経時劣化に無頓着すぎる

コロナ禍の間、外食グループはテイクアウトと宅配に力を入れてきました。コロナ禍が明けて、外食のテイクアウトと宅配の売上はだいぶ落ちましたが、一定数は残ってはいます。

この4年間で分かったことは、外食業は総じてテイクアウト、宅配商品を作るのが下手だ、ということです。やはり経時劣化や、荷崩れに対する意識が低いのです。

ハンバーガーチェーンやフライドチキンチェーンは経時劣化を前提にした商品設計がされていますから、時間が経っても(さほど)劣化はしません。
というよりは、ビジネスの主力がオフ・プレミス(テイクアウト、宅配、ドライブスルーなど)なのですから元々、経時劣化に対する意識が明敏なのです。

食品スーパーのデリ・総菜部門が強いところでは、コロナ禍の4年間でこの部門の売上をどこも高めました。ある食品スーパーのデリ・総菜部門のトップと話をしたときに、彼は「うちのライバルは外食さんです。コロナ禍の間に外食グループがテイクアウト、デリバリーに力を入れてくれたおかげで、うちのデリ・総菜の売上が飛躍的に伸びました」と話していました。

なぜ伸びたのかというと、劣化の激しい外食のテイクアウト商品が出回ったおかげで、「うちの商品との差が鮮明になったのです」。

コロナ禍が終わっても、強い食品スーパーのデリ・総菜の売上の伸びは止まりません。むしろ外食との差は開く一方です。

イートイン主力の外食業は、ここで決断をしなければならなくなりました。
①テイクアウト・デリバリーを続けるのか
②本来のイートインだけの営業に戻るのか
この決断をです。

①の続行路線を選ぶのであれば、経時劣化に耐える商品開発をゼロから練り直さなければなりません。そもそも、お客様がテイクアウトした商品や宅配で届けられた商品をいつ、どのような状況で喫食しているのか。その現状を把握しているでしょうか。

その現状を知ったら、背筋が寒くなると思います。荷崩れして盛り付けが台無しになっている状態、温度が下がって味がすっかり落ちている状態。そもそも自店の商品のそういう状態を実見したことがあるのでしょうか。一度、自店の商品を宅配注文してみてください。

コロナ禍の間は仕方なく食べていたお客様は、イートインで来店することをやめるでしょう。イートインのお客様の回復が遅れている店の多くは、テイクアウト、デリバリーに力を入れ過ぎた店なのです。評判を落としてしまったのです。

今でも少しは売れているからやめるわけにはいかない、と考えている人がいたら、さらに危機的な状況に向かっているのです。本来のイートインのお客様の来店数は、さらに減るでしょう。

その場で作って、その場で提供。これこそが外食業の強み

京都では、力のある料理屋がその力を競い合っています。

しかし、お茶屋への食事の提供はやりません。また、茶会や花見の宴などが盛んに行われている街ですが、料理人を連れての出仕事はやりますが、食事や弁当の提供は料理屋とは別の仕出し屋がやります。すみ分けがちゃんとできているのです。同じ素材を使っていても、料理屋が作る料理と仕出し屋の作る料理とでは、中身が違います。

一言で言うと、仕出し屋の料理は経時劣化を前提に作られているのです。そして経時劣化に耐えられない素材は使いません。そして、味付け、調理法が違います。

スーパーのデリ・総菜商品も同じです。先のトップも、「すべての商品は、出来上がって5時間経過したものを試食している」と話されていました。これをあなたの店はやっていますか。こういう経時劣化を前提にした商品開発のプロがひしめく中で外食業の多くは、無謀にもテイクアウト、デリバリー商品作りに励んでいたのです。

イートインと同じ商品を作るにしても、素材、組み合わせ、加熱・調理の方法を変えなければなりません。経時劣化を最小化する技術が必要なのです。

まずは、百貨店の食品売り場や食品スーパーのデリ・総菜コーナーの商品を買って、試食をしてみましょう。もちろん、出来立てのおいしさはありません。しかし、時間が経っても味が落ちない細心の工夫が凝らされていることがわかります。

もう一つは、価格です。百貨店の商品はそれなりの値付けになっていますが、注目すべきは食品スーパーのデリ・総菜の品ぞろえと価格です。外食業がどれだけ高い価格帯で勝負しているか、を思い知らされることでしょう。

そして、その品質の高さ。外食業のオフ・プレミス(テイクアウト、宅配)商品が、どれだけ競争力のないものか、骨身にしみて実感すると思います。

食品スーパーのデリ・総菜コーナーでは、外食業の品ぞろえをほぼ全領域カバーしています。そして、スーパー内での最終店舗調理を重視しています。先のトップの「外食業がライバル」という言葉がずっしりと重く感じられます。

食品スーパーは、まさにデリ・総菜戦争に入っています。つまり、どれだけ高質で広範な品ぞろえができるか、そして価格力、そこが勝負どころになっているのです。先述のデリ・総菜部門のトップがデリ・総菜で勝つための5つの鉄則を教えてくれました。

<デリ・総菜で勝つための5つの鉄則>

第一に、野菜の質が決め手。すべて無農薬とは言いませんが、生産者とうまく手を組み、減農薬のものを使う。力のない野菜を使っては、高質な総菜は作れない。

第二に、自然素材で毎日だしを作る。うま味調味料を使うと飽きる味になって、必ず来店頻度が落ちる。

第三に、売れ筋10品の絶えざる改善。売上のトップは、ポテトサラダですが、年に5回の改良をします。素材が変わるのですから、その度に店舗調理の工程も変わります。

第四に、売れるピークに合わせて、調理と品ぞろえを行う。陳列から購買の時間を短くするためです。これでロス率も下がります。調理と陳列は1日複数回行われます。

第五に、世界規模の調達力を持つ。特にマグロと牛肉の質の追求を継続する。

この5つの鉄則は、すべて外食業に当てはまるではないですか。

外食業の強さは、その場で調理してその場で即時提供することだけです。この強さを守ることに徹するのか。いや、オフ・プレシスの追求を止めない、と決意するのか。外食業は、特にテーブルサービス業は、大きな岐路に立たされています。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

■飲食店経営の明日をリードするオピニオン誌「Food Biz」

「Food Biz」の特徴
鍛えられた十分な取材力、現場を見抜く観察力、網羅的な情報力、変化を先取りする予見力、この4つの強みを生かして、外食業に起こっている変化の本質を摘出し、その未来を明確に指し示す“主張のある専門誌”です。表層的なトレンドではなく、外食業に起こっていることの本質を知りたい人にこそ購読をおすすめします。読みたい人に直接お届け!(書店では販売しておりません)

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