2021/01/12 特集

牛肉情報をアップデート! 知ればもっとおいしく、もっと価値を高められる(3ページ目)

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熟成肉を最もおいしく提供する、肉おじさん流の火入れを大公開!

肉汁を閉じ込め、うま味を逃さない焼き方

 牛肉について学び、自店にとって良い肉を仕入れると同時に、その素材を生かす調理方法も重要だ。中でも、肉の火入れは調理の際に悩むポイントではないだろうか。そこで、千葉氏が考える、牛肉の火入れを紹介する。

 一つは塊肉の火入れ方法で、熟成肉のポテンシャルを最大限に引き出すために、「格之進」で実践されてきた「水風船理論」。「熟成肉は、肉に含まれる水分の一部を乾燥させ、うま味を凝縮させています。その凝縮したうま味、つまり肉汁を肉の中に閉じ込めるとともに、肉汁の対流によって火を通し、しっとりと仕上げるのがポイントです」(千葉氏)。なお、「水風船理論」は熟成肉の焼き方として開発されたものだが、熟成していない牛肉にも応用できる部分が多い。

 もう一つは、ハンバーグの「三次元焼き」。ハンバーグは小判型に成形し、中央をへこませて表と裏を焼くのが一般的だが、「従来のハンバーグの焼き方は、食肉の処理や流通過程での衛生レベルが今より低かった時代に考案されたもの。中までしっかり火を通すことが重視されるあまり、肉汁が流出して、ジューシーさが損なわれるというデメリットがあります」と千葉氏。衛生レベルが高まった昨今は、肉汁を逃さないことに比重を置きつつ火を通す、新しい焼き方が必要。ぜひ、自店の牛肉調理の参考にしていただきたい。

香ばしく焼き上げつつ、うま味を逃さない水風船理論

最初に肉の繊維の方向を確認。肉は、細いストロー状の繊維が多数集まってできており、繊維1本1本に肉汁が詰まっている。これを逃さないために、繊維と垂直になる面(ストローの両端)から焼く。
繊維の両端にあたる面を、鉄板に当てて焼く。ストローの出口に当たる部分を焼くことで、出口をふさぐイメージ。こうすることで、繊維の中に肉汁を閉じ込める。もう一方の出口も同様にして焼く。
続いて、繊維と並行になる残りの面を焼く。すべての面が均等に熱されるように、時々転がしながら焼いていく。中の肉汁の温度が上昇して膨張することで、肉が少しずつ膨らんでくる。
全体に焼き目がつき、ぷっくりと膨らんだら、一度鉄板から下ろす。肉の中と外の温度差によって、肉の内部で肉汁が滞留する。5分ほど休ませて、肉の内部にゆっくりと火を通していく。
再び鉄板に戻し、表面を香ばしく焼いたら、鉄板から下ろして少し休ませ、内部の肉汁の対流を止める。表面に浮き出てくる汗が落ち着いたら、切り分ける。
繊維に対して直角に切ると、やわらかさがUP

ハンバーグに肉汁を閉じ込める三次元焼き

ハンバーグの肉だねを、立方体をイメージして成形する。冷凍の肉だねの場合は、解凍後、ラップに包んでから軽く練り直し、水分をなじませてから成形する。
立方体の形を保ちながら焼いていく。フライパンの側面を使って、トングなどで少し横を押さえながら二面を焼く。しっかり焼き目が付いたら、裏返して同様に。
全面に焼き目が付いたら、トングで肉だねの向きを変えながら焼く。全体が膨らんできたら、鉄板から下ろす。温まった肉汁が対流することで火が入っていく。
カットすると断面からあふれる肉汁

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