2014/08/29 繁盛の黄金律

「もう1品」の注文を取るメニュー力、サービス力とは

テーブルに通う頻度が上がれば、客単価も上がる‐もう1品追加注文をとり、客単価を上げるには、頻度を高くお客のもとへ通うサービス力とサイドメニューとデザートメニューに秘訣があります。

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Vol.36

テーブルに通う頻度が上がれば、客単価も上がる

同じチェーンで全店メニューが同一であっても、店ごとの客単価にはけっこう高低があります。立地は少しずつ違いますから、その立地差によって客単価の差が出ます。例えばファミリーレストランのチェーンですと、朝食時間帯のお客が多い店は客単価は下がります。また、居酒屋でも、団塊の世代を目当てに15時から開店したりすると、客単価は降下します。当然ですね。

もうひとつ、店長の力量によっても客単価は変わります。力がある店長の店は、客単価が高いのです。従業員をきちっと訓練し、レベルの高いサービスを遂行していると、客単価は自然に上がるものなのです。

最近のチェーングループは、できるだけ人件費を抑えて、サービスレスでも店が回るように努力している傾向がありますが、あれでは客単価は上がりません。訓練の行き届いた従業員ができるだけ頻度高くお客のテーブルに行き、お客の要望を引き出す。このことによってのみ、客単価が上がります。これも、当たり前の話ですね。中間バッシングをこまめに行い、飲み物のおかわりや料理の追加オーダーを受けることで、客単価は上がるのですから。テーブルの上に食器、皿がいっぱいに広がっている状態では、お客は追加注文をしなくなります。

まずは中間バッシング、次にトークです。従業員とのコミュニケーションが生まれると、お客の心は開かれ、「何か注文してみようかな」という気持ちになるものです。そのときに、お客の状況に合わせて、リコメンドする(おすすめする)料理やお酒が用意されているか。それができるように訓練されているか。これが問題になります。つまり、店の方針がまずあって、その方針に従って追加注文を取るように従業員が訓練されているかどうか、ということです。

例えば居酒屋の場合、まだ主力メニューを注文したがっているお客と、最後の仕上げ(シメ)の一品を求めているお客が混在しています。テーブルごとに食事の進行度が違いますし、また客層の違いによっても求められるメニューは異なります。それぞれの「場」に合ったメニューを推薦するのは、相当なサービスレベルが要求されます。

「安い」「早い」「低原価」が追加メニューの3条件

一番いけないのは、客単価を無理に上げようとすることですね。客単価が3,000円の店で、6,000円支払う羽目になったお客の心境を考えてみてください。従業員の口車に乗って、必要以上に注文して法外な金額を払ったときぐらい「裏切られた感」を味わうことはありません。

私もこの前、こんな経験をしました。有名フランス料理店に(若い!)女性といったのですが、高いワインを飲まされる羽目になり、11万円以上(!)も支払わされました。私が見栄を張ったのがいけなかったのですが、二度とその店に足を踏み入れることはないでしょう。心が狭いので、まだその店を恨んでいます。ですから、リコメンドは所定の客単価に到達させるために行うサービスだ、と考えるべきでしょう。

メニュー開発をするときに、特に力を入れなければならないのが、サイドメニューとデザートメニューです。ともに、サブベーシックメニューとしての看板メニューが作られていなければなりません。「あの店に行ったら、仕上げはあれだよな」と大半のお客の心に刻印されるメニューを持っていれば、これはしめたものです。リコメンドしやすくなりますし、お客も当然のこととして、ごくごく自然に「それ、お願い」と注文します。このように主力ではないが、キラリと光るサブベーシックメニューを持つ店が、お客の来店頻度を高めてくれるものです。

すぐれたサブベーシックメニューの基本条件は、次の3つです。まずひとつは、低価格帯に集中していること。480円のデザートならば抵抗なく注文できますが、880円となると「やめときます」ということになります。抵抗なく注文できることを、英語で「アフォーダブル」と言いますが、デザートやサイドメニューは、このアフォーダブル・プライスが実現されていなければなりません。

次に、クイック提供ができること。いつまで経っても出てこないようなメニューは、お客を苛立たせるだけです。「さっきのあれ、キャンセルして」などという、トガッたと言葉がお客の口から発せされるようでは、サブベーシックメニュー失格です。

3つめは、低原価率であること。客単価を上げて、原価を降下させる。しかし、これがサブベーシックメニューの役割です。明らかに価値がないようなメニューを出していては失格です。お客には十分に満足を与えながら、結果として全体の原価を下げる力を持っていなければならないのですから、その開発には相当な知恵と力量が必要です。

でも、繁盛店のサブベーシックメニューのいくつかを思い浮かべてみてください。けっこうな低原価であることがほとんどです。その秘密のひとつはポーション。もうひとつは技術をともなった素材の組み合わせです。普通のバニラアイスに熱いチョコレートをかけただけで、倍以上の値段になるではないですか。コツはあれです。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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