2014/09/30 繁盛の黄金律

コンビニにできることは、やるな

コンビニがどんどん飲食店化している-郊外では、ファミレスの新店がなくなったことと、駐車場がたっぷりあり店内には食事ができるコーナーがある大型コンビニが増えたことに気付きます。

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Vol.37

コンビニがどんどん飲食店化している

今回は郊外のロードサイドの話から始めます。最近、郊外を車で走っていて、「アレ?」と思うことはありませんか。ひとつは、ファミリーレストランの新店が出なくなったことです。パタッと出店が止まりました。もうひとつは、大型のコンビニが増えたこと。駐車場がたっぷりあって、店内には食事ができるコーナーが設けられています。

実は、この2つの現象は密接につながっているのです。両者ともに出店に必要な坪数は400~600坪。コンビニにいたっては、1,000坪の大スペースを取ることがあります。駐車台数と売上が連動することは、データ上わかっていますから、思いきり広い敷地を確保します。

コンビニの郊外大型店は、日商100万円を売る店も少なくありませんから、家賃の支払い能力が高いのです。このため、ファミリーレストランは、欲しい立地があっても、コンビニグループに持っていかれることが多いのです。コンビニは、郊外店に限らず飲食店化しています。サンドイッチがあって、弁当があって、サラダがあって、デザートがあって、フレッシュコーヒーマシンが設置されて、だらに客席を持つ店が増えているのですから、たいていの食事はできてしまいます。

全国5万店以上あるコンビニが、いっせいに飲食店化している(売上の60%以上が食品)のですから、外食産業に与える影響は激甚です。外食市場がコンビニに浸食されている。これが食ビジネス領域の、最大の動きです。コンビニの商品開発力を侮ってはいけません。

逆に郊外のロードサイドで増えている飲食店は、小型の専門店です。うどんの「丸亀製麺」(これは中型ですが)、ラーメンの「幸楽苑」、とんかつの「かつや」、天ぷらの「てんや」や「さん天」、などがその例です。これらの店は、敷地が200~350坪あれば成立します。昔のコンビニ郊外店の規模ですが、先述したように、コンビニは大型店化するために引っ越しをしていますから、この規模の物件は多く出ます。そして、小型専門店は、月商は600万売れば、十分に利益が出ます。これらの小型専門店グループが、郊外の新しい主役になりつつあります。

とんかつ、天ぷらは、ニーズがあるのに家では調理されなくなった

これらの小型チェーンの中でも、とんかつ店、天ぷら店は注目です。この2つの店の共通点は、コンビニが逆立ちしても提供できない商品を持っていることです。揚げたてでアツアツのとんかつに天ぷら。確かにコンビニでは出せません。もうひとつの共通的特徴は、家庭での調理放棄が進んでいること。とんかつも天ぷらも、昔はお母さん自らが揚げてくれて、夕食のメインのおかずになったものです。しかし今や、「家で揚げ物をする」ということが少なくなりました。

それでは食べなくなったのかというと、そんなことはありません。食べたいけれども、家庭では作られなくなっただけです。潜在的な市場は十分にあります。今までは、スーパーの惣菜売場がこの需要を満たしていたのですが、できたて、揚げたてという点では、外食は優位に立てます。

先のとんかつ・天ぷらチェーンが郊外で勢いがいい理由は、スーパーが持っていた市場を奪い取ったからなのです。ですから「かつや」も「てんや」も「さん天」も、皆テイクアウト比率が高い(売上の35%以上)のが特徴です。晩のメインのおかずに買っていくわけですね。ですから、どの店も16~18時にテイクアウトのお客が殺到します。テイクアウトで35%以上を売れたら、収益性の高い商売ができますよね。以上のことから、次のような教訓が導き出されます。

まず第一の教訓が、「コンビニにできることはやるな」です。これは郊外に限ったことではありません。町の中心部でも同じことが言えます。これから外食として生きるにあたっての最大の鉄則です。おいしい寿司も、コンビニでは提供できませんよね。寿司は外食市場だけでも、1兆2,000~3,000億円もある市場ですから、コンビニグループは主力商品のひとつにすべく鋭意努力中です。ですが、できたての鮮度のいい寿司を提供することはなかなかできません。

第2の教訓が、「家庭の主婦が調理放棄した領域を狙え」です。とんかつも、天ぷらも、食べたいニーズは十分にあるのですが、作ることが少なくなったのです。こういう商品は、何か別のもので代替してガマンをしています。不満が蓄積しています。そこを衝くことです。不満のカゲに巨大な市場アリ、これも肝に銘じておかなければなりません。

できたてのアツアツのものを提供する。熱いものと冷たいものを組み合わせる。こういったことは飲食店でしかできないことです。外食にしかできないことのみを追求しようではありませんか。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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