2014/10/31 繁盛の黄金律

客数減のときにやるべきこと、絶対にやってはいけないこと

客数減のときに“引き算”をしたら、さらに客数減に拍車がかかる-客数や売上が下がっているときにはコストカットをするのではなく、「価値の引き上げ」をして人気を取り戻さなければならなりません。

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Vol.38

客数減のときに“引き算”をしたら、さらに客数減に拍車がかかる

店の売上が落ちてきたとき、その対策として打つ手は、そのほとんどが悪手(あくしゅ。悪い手)です。たいてい、店主は次のような手を打ちます。

  1. 原価率を削る(値上げをする。量を減らす)。
  2. 人を減らす。
  3. 給料を減らす。
  4. 消耗品・備品をカットする。
  5. 追加投資を止める。

これらは、すべて店の“死期”を早めるだけなのですが、目先の出費を減らすために、この方法をとってしまうのです。客数が落ち、売上が下がっているというのは、店の人気が下落しているということですから、本当ならば「価値の引き上げ」をして、人気を取り戻さなければならないはずですが、「貧すれば鈍す」で、コストカットに向かってしまいます。

「価値の引き上げ」とは、食材の質を上げて看板メニューをよりおいしくすること、量目を増やすこと、価格を下げること、調理人の技術レベルを上げること、サービス要員を増やしてサービスの質を高めること、などが考えられます。しかし、これは全部コストプッシュにつながることばかりです。ただ、無い袖は振れませんから、今回はやれることに絞って話をしたいと思います。

まず確認しておきます。価格を下げて客数を増やそうと考える経営者がいますが、これは悪手です。人気が下がっているときに価格を下げても、客数は上がらず、客単価を下げるだけで、ジリ貧に拍車がかかるだけです。では値上げをする?これもいけません。単純な値上げはさらに客離れを促進させます。

ボリュームアップして価格は据え置き、これはアリです。ガルニ(付け合わせ)を良質なものに変えるという方法もあります。立て直しの王道は「素材の質アップ+技術力アップ」ですが、コストがかかるのでなかなか踏み込めません。単純なボリュームアップでもコストプッシュの要因になりますが、きわめてわかりやすい「価値の引き上げ」としてアピールすることができます。

客単価は上げ、原価は下げる

結論から言いますと、メニューを絞り込み、看板商品を磨き込む。これが最高のジリ貧脱出策です。しかし、言うは易しでこれは至難の業です。

「切り捨てるメニュー」の対象は、

  1. 売れていない。
  2. 手間がかかる(かかり過ぎる)。

仮に、1日5つ売れているメニューだとすると、なかなか切れないものです。しかし、そのメニューをカットすることで、主力メニューにエネルギーが集中し、きちっとした調理がなされることで、素材を変えなくても主力メニューのレベルは上がります。そして提供時間は早くなります。絞り込みのメリットは、売れ筋が限定されることで、看板商品にますます磨きがかかり、さらに売れ筋の集中化が進むことです。この連載で何度も言ってきましたが、メニューの数と客数とは関係はありません。強い看板メニューがあれば、メニューを減らした方が客数は増えます。

これまで言ってきたことと矛盾するようですが、客単価は上げなければなりません。最良の手を打っても、客数はすぐには上がりません。しかし、客単価は単純な値上げをしなくても、すぐに上がります。その方法は2つです。ひとつは、看板商品群の中に、上位価格品目を投入するのです。カレーにしろ、ラーメンにしろ、パンケーキにしろ、トッピングを変えることで高額商品が作れます。スペシャルメニューや季節限定メニューとして、いろいろなメニューを考えられます。これらのメニューは、看板メニューよりも「ちょっと上」の価格に設定することがポイントです。

もうひとつは、看板メニューに連動するサイドメニューの強化です。「これは必ず注文するよな」という強力なサイドメニューをどれだけ持っているかが、店の強さを表す指標になります。このときに大事なことは、原価率を降下させるメニュー開発をすることです。

看板ジャンルの上位価格メニューの投入、そして強いサイドメニューを持つ。この2つの方針を貫くことで、客単価は確実に上がります。しかしこれも、看板メニューの質のアップとセットになっていなければなりません。

整理してみましょう。

  • 看板商品の価格引き下げはやってはいけない。
  • メニューを絞り込む。
  • 新商品とサイドメニューの開発で、客単価は上がる。
  • 原価率は下げる。

以上です。

価値を引き上げなければ、お客さまは戻ってきません。当たり前のことですね。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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