2015/01/30 繁盛の黄金律

客単価を上げて、粗利益「高」を増やす

値下げをして客単価を上げる道を考えよう-まず、値上げの中身と目標の設定を明確にしなければなりません。値上げの目標は、客単価を上げて粗利益「高」を上げることです。

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Vol.41

値下げをして客単価を上げる道を考えよう

食材費がこれだけ高騰してきますと、値上げをせざるを得なくなります。食品メーカーも次々に値上げを敢行して、業績を好転させています。牛丼チェーンでは吉野家も松屋も値上げをしましたし、今年は外食の値上げが相次ぐ年になりそうです。値上げって、本当に難しいですね。客数減がこわくて、なかなか踏み切れないものです。ライバル店の動き待ちをしている間に、値上げのチャンスを逸することもしばしばです。あと出しじゃんけんのように、最後にズルッと上げる店は、あまりいい評判を得られません。

まず、値上げの中身と目標の設定を明確にしなければなりません。「そりゃ、原価率を下げることでしょ」とお答えになるかもしれませんが、それは間違っています。値上げの目標は、客単価を上げて粗利益「高」を上げることです。粗利益“率”ではありません。粗利益「高」です。

ここが大事なところです。この目標を達成するためには、むしろ値下げをしたほうがいいケースもあります。値下げをしても、お客が「もう一品」注文してくれれば、客単価は上がります。原価率も上がり、粗利益率は下がりますが、粗利益「高」は上がります。経営で大事な数字は粗利益「高」ですから、たとえ値下げをしても、これが上がれば値上げをした以上の効果が得られます。

ラーメン・餃子の店があるとします。ラーメンは必ず注文してくれますが、餃子はサブメニューですから、「必ず」というわけにはいきません。しかし、餃子の注文率を上げれば、併売率が上がり、必然的に客単価も上がります。250円の餃子を200円にしたらどうでしょう。ずいぶん注文しやすくなりますよね。2人組のお客が1皿注文してくれれば、注文率は50%になります。

このように、値下げによっても、客単価を上げることができるのです。この場合、検証しなければならないのは、サブメニューとしての「実力」を備えているかどうか、です。具体的には下記の内容です。

  • つい注文したくなる価格になっているかどうか。
  • サブとしての人気商品になる質になっているか。
  • サブメニューとしてのポーションになっているか(多過ぎたり、大き過ぎたりで、サブメニューにならないことがしばしばあります)。

単純な値上げは反発を買い、客数を減らすだけ

「俺のフレンチ」、「俺のイタリアン」も、高原価でお値打ち感を出し、客数を多く取り、高い粗利益「高」を確保している典型的な例です。原価率50%でも、高い粗利益「高」を取れれば成功です。ただし、客単価がもともと高い商売でないと、「高」は取れません。また、あの店のユニークなところは、立食形態を採用して客席の回転率を上げたところです。フレンチやイタリアンを立って食べたいか、という根本的な問題は残りますが、カテゴリーキラーではありますね。

要は、高原価率をおそれるな、ということです。外食の究極の価値は原価です。どれだけ原価をかけているか。ここで競争力が決まると言っても過言ではありません。高い原価=価値に向かって、どれだけのお客が来店してくださるか、が第一です。そして次に、どれだけの数の料理(飲み物を含めて)を注文してくださるか、です。

皿数が増えれば、自然に客単価が上がります。そして、粗利益「高」も増えます。お客が大満足をして、より高い支払いをして、また来ようと考える。繁盛店というのは、すべてこの好循環を手に入れている店なのです。自然に注文皿数が増えて、自然に粗利益「高」が増えるためには、どんな手を打つべきか。この点をじっくり考えなければいけません。単純な値上げは、ダイレクトに客数減を招きます。

お客が満足して、店は値上げと同じ効果を手に入れる。ここが店主の腕の見せどころです。まずは「つい注文してしまう」第2、第3のメニュー開発に全力を注ぐことです。

小型店を増やすことより、大型店化を目指す。店数が増えてもチェーンにはならない。これを肝に銘じておいてください。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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