2015/06/26 繁盛の黄金律

商品知識と極限の営業経験が、成功経営者を生む

商品を知り抜いていない経営者は、時代から取り残される-「商品を知り尽くしていること」「極限の営業を体験していること」が成功する外食経営者の条件。外食経営者と会ってきた経験の1つの結論です。

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Vol.46

商品を知り抜いていない経営者は、時代から取り残される

「商品を知り尽くしていること」「極限の営業を体験していること」。この2つが、成功する外食経営者の条件です。これが40年以上にわたって外食の経営者と会い、彼らの話をとことん聞いてきた経験を持つ私がくだす、1つの結論です。

まず「商品」について。看板商品のレベルを上げていくことが、外食業界で生き残っていくための条件ですが、そのためには核商品並びに周辺商品の知識を持たなければなりません。調理技術がまったくなくても成功している経営者はいますが、その人のそばには必ず調理のプロ中のプロがピッタリと寄り添っています。その人は、単に調理技術を身に付けているばかりではなく、技術を論理的に説明できなければなりません。料理は「技術の組み合わせ」「火力」「時間」で構成されていますが、なぜこの時に、この技術が注入されなければならないのか、そのプロセスを明快に経営者に説明できなければなりません。また、経営者にはその説明を理解する能力がなければなりません。その能力があればこそ、集中化(食材の一次加工)、単純化という形で、味のレベルを下げずに多店舗経営へのシステム構築もできるようになるのです。

それから、経営者は料理全般について、広範な知識と知識欲を持っていなければなりません。特に、自分の店よりも客単価が高く、上位業態に位置する店の試食(視察)を積極的に行っていなければなりません。ビジネスチャンスは、上位業態の価格を引き下げることによってもたらされることが大半ですから、その対象たる店舗群がどのようなレベルの商品を提供しているかを、常に熱いまなざしで注視し続けていなければならないのです。

また、新しいトレンドも上位業態から起こるものです。そのトレンドをつかんでいないと、自分の店はアッと言う間に時代から取り残されてしまいます。他店のチェックや、試食する力が失われたなと思ったら、経営者は即引退すべきでしょう。

極限の営業が、店の欠陥を次々に浮かび上がらせる

次に「極限の営業」について。外食産業の特徴は、店舗で調理し、サービスをする、というところにあります。はなはだ変な業種であり、ゆえに店舗での人件費がやたらにかかります。だからといって、ここを単純化し過ぎてしまうと、外食業の強さが失われてしまい、食品小売業に負けてしまいます。また、放っておくと人件費は膨れ上がって、利益は吹き飛んでしまいます。これを回避するためには、少数精鋭の部隊を作り上げねばなりません。

その部隊はどうすればできるでしょうか。それは「極限の営業」です。戦力は実戦によってのみ鍛えられます。実際の営業で、何度も何度も極限を経験させること以外、少数精鋭部隊は生まれません。パンク寸前までフル稼働させることです。

ホテルの料理人が鍛えられるのは、宴会があるからです。大勢のお客へ同時に次々と料理を提供していかなければなりません。周到な準備と日頃のスキルの鍛練、役割分担と一糸乱れぬ統率によって、はじめて実現されます。

個店で鍛えられる「場」は、繁盛(客数)です。繁盛が極限の営業を生み、それがもう一段高い営業力の具備につながるのです。料理人でも、一度にお客が殺到した「場」の経験を持たない人は、ひと皮むけません。一日一客とか気取ったことを言っている店では、本物の料理人は生まれない、ということです。

前述したように、経営者は料理人である必要はありませんが、常に現場に密着して、意識的に極限の営業を現出させなければなりません。極限の営業は、店の欠陥を次々に表面化させます。集中化やプレパレーション(準備)の不足、キッチンレイアウトの致命的なミス、キッチン設備の不足、キッチンとサービスの“つなぎ”の悪さや両者のレベルの不一致、料理一品一品のスタンダードの不徹底。改善テーマが矢継ぎ早に出てきます。

これらを1つひとつ改善することによって、営業力がもう一段高まるのです。それこそが、利益を生む営業力であります。店を「上がった」経営者も、もう一度現場に張り付いてみてください。時間帯別にやるべき作業、やってはいけない作業が混在していることに、まず驚かされることでしょう。そして、足手まとい労働(新人、未熟練作業者)がいかに全体のオペレーションレベルを停頓させているか。このことにも驚くことでしょう。「このままではうちはつぶれる」という危機感を持ち続けた経営者だけが、成功の道を歩むことになるのです。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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