2023/09/29 繁盛の黄金律

検証しよう。商品構成、価格、立地にズレがないか

お客様の来店頻度を増やすためには、店の立地に対し、業種、業態、価格が合っていることが重要です。また、主力商品の他に強い商品があると来店頻度が飛躍的に高まることがあります。

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Vol.145

郊外ロードサイドは自分で顧客をつくらなければならない

 前回に続き、立地の話をします。前回は、郊外ロードサイドが意外に面白いよ、という話をしました。地域で人気を確立できれば、息の長~い商売ができますよ、という話をしました。

 しかし、個人店、単独店がこの立地に出ていくには、大変に勇気が要ります。何よりも怖いのは、人が歩いていないという事実です。通りがかりのお客様をつかまえられない。

 それから、前回も言った、投資額の大きさです。土台から天井、屋根まですべて自分で作らなければならないのですから。ファサード、内装だけでOKという街中立地とは投資額が根本的に違います。また、駐車場は必須です。よほどの高売上、高収益が見通せないと、出ていく勇気は持てません。

 人が歩いていない立地と言いましたが、郊外ロードサイドは、自分の力だけでお客様を引きつけ、そのお客様を顧客化し、その顧客数を増やしていかなければなりません。知名度の全くない単独店をすぐに軌道に乗せることは、なかなか難しい。どんなに優れた商品とサービス力を持っていても、名前が知られて繁盛店になるには、街中の店以上に時間がかかります。だからこそ、知名度の高いチェーングループが、この郊外ロードサイドのベストポイントに、先を争って出店したがるのです。

 前回では、幹線道路と生活道路の中間の生活幹線道路が面白いという話をしました。地元客が取れて、生活幹線道路沿いに、さらに広い商圏を確保できる立地、ここが狙い目だと言いました。そして、商圏というものは、固定したものではなく、時間によって、また曜日によってダイナミックに伸縮するものである、ということも申し上げました。

 そして、もう一つの要素が来店頻度です。

立地、価格、商品構成で来店頻度は大変化する

 外食業は、業種によって、業態によって、また価格によって、つまり、使われ方によって来店頻度がガラリと変化します。たとえばウナギ屋。ずいぶん価格が高くなってしましたが、土用の丑(うし)日が近づくとウナギが食べたくなる。そして大方の日本人はウナギ屋でウナギを食べ、来年もまた来ようと思う。今や牛丼チェーンや和食ファミリーレストラン、定食チェーンでもウナ重、ウナ丼は準定番商品になっています。まさか年に1回ということはないでしょうが、ウナギ屋が来店頻度の低い商売であることは、間違いありません。

 スターバックスやドトールは、来店頻度が高いですね。平日に毎日1回は行く、という人も少なくありません。業種だけではありません。価格によっても来店頻度は変わりますし、提供形態(ファストフード型かテーブルサービス型か)によっても頻度はガラリと変わります。

 自分が考えている、業種、業態、価格がどのような来店頻度を生み出すか、それをじっくり考えて、それに合った立地を決めなければなりません。

 話は変わりますが、最近のドラッグストア戦争は尋常ではない状況になっています。覇権を争ってM&A(吸収と合併)も盛んに行われています。競争力をつけるために、どこのドラッグストアも食品部門を強化しています。特に最近は、劇的に安い総菜を提供しているチェーンも出ています。ドラックストアの競争ポイントが、食品に、特に日配食品に移行しています。なんでこんなことをやるのかというと、来店頻度を上げるためです。

 特に、日配の総菜が安くて強い、ということになると、来店頻度は毎日、ということになります。たとえば、商圏人口が10万人必要なドラッグストアがあったとしましょう。来店頻度が上がれば、これまで出店できなかった5万人の街にも出店できるようになります。出店力が倍になって、より強力な商勢圏を築くことができるようになります。商勢圏とは、「縄張り」という意味です。

 一つのエリアで圧倒的に強い店舗布陣ができている状態をドミナント化が成功した、と言いますが、それが商勢圏の確立(つまり、縄張りができた)ということになるのです。商圏と商勢圏とを混同してしまう人が多いですが、商勢圏を縄張りと憶えておけば、混同が避けられます。

 繰り返しになりますが、業種、業態、価格によって生まれる来店頻度を強く意識して、自分が目標とする店に合う立地を探し続けなければなりません。また、先のドラッグストアの変身と同様に、主力商品の他に「何か別のもの(メニューと売り方)」を加えることによって来店頻度が飛躍的に高まることがあります。そして、これまでは通用しないと思っていた立地が、最適地として浮かび上がってくることもあるのです。

 たとえば、街の中のから揚げ定食屋さんがあったとします。独自商品を持っていて、なかなかの繁盛店ですが、なにしろキャパが小さいので、売上の限界を突破することができない。この店を郊外のロードサイドに移して、ドライブスルーを付けたらどうなるでしょう。売れ方がガラリと変わります。もしかしたらテイクアウト、ドライブスルーの売上が8割を占め、全売上が3倍になる、ということになるかもしれません。劇的な業態転換の成功です。これもロードサイドという立地に着目し、その特性(商圏が広がる、テイクアウト力が高まる)を見極めたからできたことです。

 郊外ロードサイドに出ていけば、必ず、成功するということを言っているわけではありませんから、早とちりしないでくださいね。商売はいろいろな要素で構成されています。

  • 価格を変えるとどうなるか。
  • 商品構成を変えるとどうなるか。
  • 売り方を変えるとどうなるか。

 立地においても新しい可能性が広がります。また、もしかしたら今の店は、強い商品を持っていながら価格、組み合わせ、売り方、立地、つまりフォーマットが狂っているがために、十全の力が発揮できていないのかもしれません。

 新しい商売というと、新商品を考えることだと思っていませんか。違います。新商売とは、フォーマットの組み立て直しのことなのです。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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