2015/03/10 特集

特別対談 観光庁 長官 久保成人氏×株式会社ぐるなび 久保征一郎(2ページ目)

URLコピー

外国語メニューブックも作れる自動変換付きの「辞書」を開発

長官 それはどんな仕組みですか?

社長 大きなポイントは、日本語のメニューを外国語に自動変換できるシステムを開発したことです。現在、自動翻訳ソフトはかなりハイレベルになっていますが、こと食については、まったく使い物になりません。

長官 では、今までは「カツ丼」を外国語にするときはどのようにしていたのですか?

社長 店ごとに翻訳者をつけて、1つひとつ、プロの翻訳家が外国語にしていました。これでは、人によって訳し方が違って統一がとれないばかりでなく、適確な情報かどうかのチェックも行き届きません。しかも時間もコストも膨大なものになってしまいます。メニューが変わるたびに、翻訳者に頼まなければいけないのでは、とても追いつきません。

長官 同じカツ丼でも、店によって外国語の表記が違うということでしょうか?

社長 そうです。今、世の中にある外国語メニューは、それぞれ独自に訳したもので統一されていません。そこで、私たちは逆説的ですが、翻訳をしないことにしました。つまり、外食のメニュー、食材、味付け、調理法をほぼ全部カバーする、外食専用の「辞書」を作ったのです。

長官 なるほど、いい発想ですね。

社長 例えば「カツ丼」を英語メニューにしてみましょう。(モニターで「ぐるなび外国語版」を一緒に見ながら)「メニュージャンル」を選択すると、多くの日本語メニューが表示されますから(左ページ囲み参照)、ここから「重、丼物、のっけもの」を選びます。すると、ありとあらゆる関連メニューが出るので、「カツ丼」を選びます。次に、食材の選択欄に、カツ丼を作るときに想定される食材がほぼすべて表示されますので、使っている食材を選択します。同様に、調味料の選択欄にもほとんどの種類が掲載されているので、使用したものを選択します。こうやって、食材、調味料、調理方法を日本語で選んでアップすると……。

長官 おっ!「カツ丼」のメニュー名と説明が英語で出てきましたよ。日本語で選ぶと、自動的に外国語に変換されるのですね。この辞書は、Webでの掲載が想定される料理の語彙のほとんどを網羅しているということですか?

社長 そうです。ぐるなびの店舗ページにある約900万のメニュー名を、まず記号や誤字などを除外して280万語に整理し、さらに重複を省いて7万語に絞り、これをベースに2300語を確定しました。これを、今までの外国語メニューとつき合わせたところ、90%以上はカバーできていました。

長官 メニューの分析から出発して作った辞書なのですね。

社長 ですから、辞書の精度には自信があります。また、メニューページをプリントアウトすれば、そのままお店で「外国語のメニューブック」として使えますし、タブレットがあれば、お客様の前で操作してすぐ見せることができます。

長官 なるほど、言葉がわからなくても、この外国語メニューを見せれば、外国人に対応できますね。

社長 そうなのです。メニュー表記は現在4言語(英語、韓国語、中国語の繁体字・簡体字)対応ですが、早急にその他の言語版も作ります。辞書変換テーブルがあるので、スムーズにできますし、さらに応用して今後はムスリムのお客様にも安心して食事してもらえるように対応を計画しています。

長官 お店の検索方法にも工夫があるのですか?

社長 エリアや外国語のメニュー名から検索できると同時に、「訪日ビギナー向け」と「食体験イベント」というコンテンツも設けました。初めて日本へ来た外国人に厳選した情報を提供するとともに、外国人に人気のある「寿司の握り体験」「料理教室」「マグロの解体」などのキーワードから店を探すこともできます。

全4ページ