2012/11/27 特集

ぐるなびシェフ BEST OF MENU 2012 No.1メニューへの道のり(2ページ目)

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デザート部門 優勝作品 琵琶湖かぶせ茶のクレマ・カタラーナ 秋の詩のソース

滋賀特産の「琵琶湖かぶせ茶」と、滋賀県産米「秋の詩」を使ったアシェットデセール(皿盛りデザート)。かぶせ茶を牛乳で煮出して作ったクレマ・カタラーナには、お茶の苦みを含んだ独特の味わいがあり、米と牛乳で作った甘くモチモチとした冷たいソースを合わせることで、食べやすくまとめあげている。さらに、アプリコットのアイスクリームを添えることで酸味を加え、絶妙な味のバランスを創出。

縁 enishi 中井 雅恵 氏
京都府生まれ。料理好きの母と一緒に、小さい頃からお菓子作りに親しみ、高校卒業後は製菓学校へ。ガーデンオリエンタル京都(現THE SODOH HIGASHIYAMA KYOTO)やハイアットリージェンシー京都で経験を積み、2009年、夫・裕文氏とともに「縁 enishi」を開店。店のデザートをすべて手作りし、ハレの日に華を添える。

決勝審査員評

苦み、甘み、酸味の味のバランスが非常によい。お茶の強い旨味を上手にデザートに取り入れて、大人の味を作り出すことに成功している。また、アシェットデセールとしてのまとまりにもすぐれた感性がのぞいている。決勝では二次審査時より、ビジュアルが洗練されており、パティシエとしての将来性を感じさせる。今後の飛躍が期待される作品だ。

滋賀県産の茶と米から生まれたデザート

「BEST OF MENU(以下、BOM)」の存在は以前から知っていましたが、応募を意識したのは、昨年のことでした。しかし、その年は東日本大震災の影響で中止に。今年は開催されることを知り、「それなら応募してみようかな」と、漠然と考えていました。

実は同じ時期に、ぐるなびの滋賀県産食材のキャンペーンに参加していたのです。滋賀県産食材5種類の中から2種類を使って一つのメニューを作るという企画で、デザートの素材として選んだのが「琵琶湖かぶせ茶」と県産米の「秋の詩」。そもそも京都にはおいしいお茶がたくさんあるので、今まで滋賀のお茶には目が向かなかったのですが、「琵琶湖かぶせ茶」を飲んでみて本当においしいお茶だと感じました。古くからあるお茶や米を使ったデザートなら、今回のBOMのテーマ「ニッポンの恵み~素材再発見~」に合致すると思い、応募を決めました。

ていねいで緻密なワザが要求されるパティシエの仕事。集中力を高めて決勝審査会に挑んだ

素材の特徴を引き出し味のバランスを熟考

かぶせ茶とは、茶摘み直前の1週間ほどを遮光することで、渋みの元となるカテキンの生成を抑え、旨味成分を増殖させたお茶の総称です。これでクレマ・カタラーナ(クレームブリュレを凍らせ、上に砂糖をふって焦がしたイタリアやスペインのお菓子)を作ったのですが、お茶の旨味と苦みを強めにしたので、お米を使った甘いまろやかなソースと組み合わせることにしました。それが「秋の詩」という滋賀県産米です。粘り気が強く、粒が大きいのが特徴で、冷たいソースにしたときにモチモチ感が残るようにしました。さらに、アプリコットのアイスクリームで酸味も加えました。無難な組み合わせともいえますが、素直に食材のよさに注目して作ったことが、今回の結果につながったのではないかと思います。

とはいえ、一次審査を通過したときも、決勝に残ったときも、「大変なことになった」と思ったものです。デザートは目で見て楽しむ要素も必要ですが、私の作品はそういった"仕かけ"が乏しかったからです。決勝審査までに可能な範囲で、デザインのブラッシュアップに取り組みました。決勝当日は、まさか優勝できるなんて思っていなかったのですが、多くの審査委員の方々に「おいしい」と言ってもらえたことが、大きな自信につながりました。これまでやってきたことは、間違っていなかった!それを実感できたことが、一番の収穫だったと思います。

いただいた賞金で、業務用のアイスクリーマーを購入する予定です。これがあれば、デザート作りの幅も広がります。これからも、人に喜んでもらえるパティシエという仕事を楽しみながら、おいしいデザートを作っていきたいと思います。

京都・木屋町の高瀬川から一本入った細い路地に佇む、中井裕文・雅恵氏の「夫婦で営むイタリアンレストラン」。京野菜をふんだんに取り入れたコースが人気で、総席数12という隠れ家的な落ち着きある空間も魅力。

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