映画『家族はつらいよ2』 - エンタメレストラン -

2017/06/02

エンタメレストラン

Vol.138
家族はつらいよ2
全国ロードショー中
http://kazoku-tsuraiyo.jp/
© 2017「家族はつらいよ2」製作委員会
【イントロ&ストーリー】
昨年3月に公開され大好評を博した喜劇『家族はつらいよ』の、待望の続編。前回の「熟年離婚」に続いて今回のテーマは「無縁社会」。ともすれば暗くなりがちな素材をユーモアでくるみ、85歳の巨匠・山田洋次監督が新しい家族の絆を描き出す。相変わらずもめごとが絶えない“平田家”を演じる、芸達者な俳優たちのアンサンブルも見もの。
★熟年離婚をめぐるドタバタ騒ぎから数年──。平田周造(橋爪功)はマイカーでのささやかな外出を楽しみにしていた。だが高齢者の危険運転を案じた家族は、運転免許を返上させることを画策。頑固オヤジを説得する嫌な役回りを決めるため、兄弟夫婦たちが召集される。ところが、前日に周造が泊めていた友人の丸田(小林稔侍)が亡くなるという予期せぬ事態が起きる。家族会議は思いもよらぬ方向へとそれていき…。
【キャスト&スタッフ】
原作・監督:山田洋次
脚本:山田洋次、平松恵美子
音楽:久石譲
出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優ほか
制作・配給:松竹株式会社

『男はつらいよ』シリーズを受け継ぐ“国民的ファミリー”の続編
シリアスな素材をコメディの衣に包む、名匠・山田洋次の腕の冴え

 映画やテレビドラマが生み出した「国民的なファミリー」は数多い。例えば、映画『男はつらいよ』シリーズの主要舞台、下町柴又にある老舗団子屋の、人情に厚く喜怒哀楽の激しい“とらや”(途中から“くるまや”)一家。我々の写し鏡のようで、彼らはどこか、憧れの存在でもあった。さてその生みの親、山田洋次監督が新たに創作した“平田家”も、早くも国民的ファミリーの仲間入りをした模様。現在公開中の『家族はつらいよ2』を観て、そう確信した。

 “平田家”の長老は、周造(橋爪功)とその妻・富子(吉行和子)だ。三世帯で同居生活をしており、生意気盛りの息子2人を抱えた長男の幸之助(西村雅彦)、妻・史枝(夏川結衣)と暮らしている。税理士の長女・成子(中嶋朋子)は夫・金井泰蔵(林家正蔵)を尻に敷き、ピアノ調律師の次男・庄太(妻夫木聡)は看護師の憲子(蒼井優)と結婚したばかり。昨年公開された1作目は、周造にまさかの反旗を翻した富子の“熟年離婚”騒動がストーリーを引っ張っていたが、今回もトラブルの中心は頑固オヤジの周造。だが、これがなかなか容易には白黒つけられない案件で、近年深刻化の一途をたどる「高齢運転者問題」を扱っている。

 すなわち、車に凹み傷が目立ち始めたことから周造の、ささやかな楽しみのマイカーでの外出を、家族は「大事故を起こしたら大変!」と止めようとするのだ。しかし、ここで浮上してくるのは、誰が猫に鈴をつけるか……案の定、嫌な役回りを兄妹夫婦でなすりつけ合ううちに、そんな家族の心を見透かした周造は激怒し、こう宣言する。「いつの間に俺の家族は言いたいことも素直に言えなくなってしまったんだ! もう崩壊しているな、この家族は! 俺は死ぬまで車の運転を続ける!」。

 扮する橋爪さんの怒鳴り声が間近から聞こえてきそうなセリフ回し。その橋爪さんを座長にした“平田家”の面々の織りなす演技のアンサンブルも見もので、『男はつらいよ』シリーズに肉薄する『家族はつらいよ』劇団の躍進を楽しみたい。ところで映画は、「高齢運転者問題」だけではなくもうひとつ重要なテーマを提示する。ずばり「無縁社会」、ひとり暮らし高齢者の問題がそれで、車に乗った周造が、高校時代の旧友・丸田(小林稔侍)と思いもかけぬ場所で再会したことから大騒動へと物語は転がっていく。

 普通ならば「高齢運転者問題」「無縁社会」といったテーマを描けば、シリアスなタッチになってしまうのだが、今年の9月に86歳を迎える巨匠のワザはこれを喜劇、コメディの衣(ころも)で賑々しく包んでみせる。1作目で絶賛された「平田家の家族会議のシーン」がこの続編でも踏襲されていて、“うな重の上”を出前で人数分注文したのにアクシデントが起き、誰も食べられないという“お約束”もそのまま。さらに本作では、周造の旧友・丸田の大好物が銀杏で、40数年ぶりの再会を祝した酒の席で彼はたんまりと、銀杏を口にする……のみならず、これがクライマックスへの抜群の伏線にもなっていて、銀杏をこんなふうに映画で使用したことは、史上初に違いない! 泣き笑い必至。いやあ~、山田監督、恐るべし。

Text by 轟夕起夫(映画評論家)
「キネマ旬報」「映画秘宝」「ケトル」などで執筆中。近年の編著に「好き勝手夏木陽介スタアの時代」(講談社)など。雑誌「DVD&ブルーレイでーた」で連載した名物コラム『三つ数えろ!映画監督が選ぶ名画3本立てプログラム』も単行本化。取材・構成を担当した『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』がスペースシャワーブックスより発売中。
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