2019/05/21 特集

地震、台風、集中豪雨…いざという時のために!万全ですか? お店の災害対策

昨夏、各地で台風や豪雨が多数発生し、大きな被害をもたらした。地震も含め、自然災害への備えは飲食店も日頃から万全を期す必要がある。来店客とスタッフを守るための災害対策を、防災のエキスパートに聞いた。

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近年の自然災害の特徴は?

災害リスク評価研究所・代表 災害リスクアドバイザー 松島 康生氏
国や自治体向けの防災コンサルタントとして活躍し、2012年、災害リスク評価研究所を設立。民間企業の災害リスク評価やBCP(事業継続計画)策定をサポートする。

多発、激甚化する自然災害。飲食店でも対策が不可欠

 2018年、様々な自然災害が日本各地を襲った。6月には大阪府北部地震、9月には北海道胆振(いぶり)東部地震が発生。7月には台風、および梅雨前線などの影響で、広島・岡山・愛媛など西日本を中心に、豪雨が深刻な被害をもたらした。また、日本列島に上陸した台風は、平均の2・7個を上回り、5個。気象庁は特に、「近年、雨の降り方が局地化・集中化・激甚化」と指摘している。1時間に50㎜以上の「非常に激しい雨」の年間発生回数を示した下のグラフを見ると、1976~1985年の年間平均が約226回であるのに対し、直近10年(2009~2018年)の年間平均は約311回。およそ、1.4倍に増えている計算だ。

青い棒グラフは、1976~2018年までの1時間降水量50mm以上の年間発生回数を示している。赤い直線は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示している

 災害リスク評価研究所・代表で、災害リスクアドバイザーの松島康生氏は、「都市の排水機能は、基本的に毎時50㎜の雨量を基準に設計されています。これを超えると、土地の高低など条件によって変わりますが、河川の流域だけでなく、市街地でも浸水被害が出る可能性が高まります」と解説する。しかも、「日本中どこで起こってもおかしくないのが、近年の集中豪雨の特徴の1つ」だという。決して油断してはいけないのだが、松島氏は「『ここは大丈夫』という過信が、防災意識を低下させている」と語る。「過去に自然災害が少ない地域ほど、この“過信”が強い傾向があります。それが命取りになりかねない」と指摘。さらに、「治水対策や耐震対策などのハード面は日々、進歩しています。ただ、今後の防災対策はソフト面の強化、すなわち、防災意識をどう高めるかがより重要になってきます」と解説する。

 被害がなければ防災意識が下がってしまうのは、自然の流れ。だからこそ、常に注意を喚起し、啓発を続けること、いざというときに動けるように準備をしておくことが大切なのだ。

 「防災意識の高い企業や、医療品など命に関わる製品を扱っている企業のなかには、各地にある自社の営業所や工場について、それぞれ災害のリスクがどのくらいあるのかを評価し、非常時の行動はもちろん、できるだけ早い事業再開のための計画を作成するところも出てきています」(松島氏)。

 では、飲食店の防災対策はどうだろう。松島氏は、「店内のディスプレイ、照明器具、調度品などを見ると、防災を意識している飲食店は、残念ながらほとんど見当たりません」と語る。確かに、グラスや食器類を高い場所に置いていたり、ドリンクのボトルを壁面にずらりと並べてアピールしている店は珍しくない。「もちろん、飲食店において内装など見た目は大事な要素でしょう。しかし、まず考えるべきなのは、お客様と従業員の安全を守ること。その視点を持って店内を見渡せば、見た目を大きく損なうことなく実施できる防災対策もたくさんあります」と松島氏。不用意に置いていたボトルが地震の揺れなどで落下し、来店客やスタッフを傷つけてしまったら、取り返しのつかない事態も予想される。たとえ小さな事故であっても、ひとたび不祥事が起これば、今はSNSによってすぐに拡散されてしまう。災害による直接的なダメージだけでなく、店や飲食業そのものに対する印象が悪くなり、二次被害につながりかねない。

 逆に、飲食店の存在が災害被害を小さくすることにつながるケースもある。東日本大震災のとき、一部の商業施設やホテル、飲食店などが、帰宅困難になった人々に対して、一時避難の場所を提供して喜ばれたことを思い起こしたい。「こうした防災対策は店長任せ、現場任せにしてはいけません」と松島氏。そして、「チェーン店ならば本部、個人店ならば経営者が責任を持って取り組んでほしい」と呼びかける。

 飲食店に必要な防災対策について、次ページから具体的に見ていこう。

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