更新日:2022.10.27
目次
・日にちを決め、共通メニューを一斉に仕込み、少人数でも営業可能に
「窯焼きdining 和蘭(オランダ)ししがしら」(群馬・高崎)
・セントラルキッチンを設け、店舗の調理負荷を大幅に軽減!
「創作個室居酒屋 すぎうら 京都駅前店」(京都・京都駅前)
仕込み作業は、キッチンスタッフに負担がかかるだけでなく、人材不足の解消や就業時間の短縮化を目指す飲食業界にとって、課題の1つ。どうすれば仕込みが効率的にできるのか。全店舗共通で提供しているメニューを月2回、一括で仕込んで調理工程を簡略化させ、限られた人数でも営業できるようにしている群馬・高崎の店舗、セントラルキッチンを設けて時間がかかる仕込み作業を店舗から引き上げて料理の品質を高めるとともに、店では季節メニューの開発などに注力できるようになったという京都の店舗の取り組みから、その工夫を探る。
日にちを決め、共通メニューを一斉に仕込み、少人数でも営業可能に
群馬県高崎市栄町12-17 TAMONZ1F
https://r.gnavi.co.jp/7rjb4rbp0000/
営業時の調理工程を簡略化。冷凍による質の低下も防ぐ
ピザや特製ソースと野菜を合わせて450℃の窯で焼き上げる「窯焼きバーニャカウダ」など、窯焼き料理が自慢の「窯焼きdining 和蘭ししがしら」。運営元の株式会社ディライトでは、「ししがしら」を含めた洋食業態3店舗と、和食業態「雨云(あうん)」の計4店舗を群馬県内で展開しており、全店舗共通で提供しているメニューを、月2回、一括で仕込みを行っている。
【POINT】グランドメニューを共通化し月2回、一括で仕込む
洋食業態3店舗のグランドメニューを共通にし、月2回、計10品を一括で仕込む。人気の「窯焼きバーニャカウダ」は、仕込み時にソースを調理。営業前に野菜をカットし、作ってあるソースをかけ、注文が入れば焼くだけにしている
代表取締役の福島浩司氏は、「3店舗目である『ししがしら』オープン後の2015年から一括で仕込みを始めました。当初は仕込みの効率化というよりも、ミーティングを兼ねて月に1回1店舗にスタッフを集め、コミュニケーションを図ることが目的でした」と振り返る。その後、スタッフミーティングを週1回に増やしたことで、仕込みの方法も変更。別途、月2回設けて全店舗で提供している「トロトロ牛すじ肉じゃが」や「鶏のから揚げ」、洋食業態3店舗の共通メニュー「窯焼きバーニャカウダ」のソースなど、計10品を4店舗で振り分け、各店のシェフ5名が中心になって仕込んでいる。
「例えば、『ししがしら』は、麦風鶏の酒粕みそ漬と窯焼きバーニャカウダのソース、『雨云』は、肉じゃがと鶏のから揚げというように、各店舗でメニューを分担。ときには『今回は仕込みが少ないので、2店舗でそれぞれ2名と3名で行う』など、適宜、場所とスタッフの人数を決めて行っています」と福島氏。
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【POINT】解凍後、料理の質が落ちないよう工夫
窯焼き用の肉は、仕込み時に調味液に浸して冷凍。写真は、「窯焼きジンジャーポーク」用のやまと豚(手前)と、「酒粕みそ漬け焼き」用の麦風鶏(奥)。解凍後に水分が出たり、味が落ちないよう、調味料の量や冷凍方法を変えている
各店舗のキッチンスタッフは1~2名のため、限られた人数でも営業時に調理ができるよう、仕込みによって調理工程を簡略化。特に、洋食業態は全店舗グランドメニューを共通にしており、窯焼き料理であれば“あとは窯で焼くだけ”、肉じゃがなどの煮込み料理なら“温めるだけ”の状態まで仕込み、1人前ずつビニール袋で個装して冷凍。これを各店舗に分配する。さらに、仕込む人によって味の違いやクオリティに差が出ないよう、レシピを統一。解凍時に肉や野菜から余計な水分が出て味が落ちたり、食材が劣化しないよう、調味料の分量や肉の包丁の入れ方、冷凍方法を様々に試し、細かくマニュアル化した。
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【POINT】作業効率を考えたメニュー開発
窯焼きメニューは“焼き上げるだけ”の状態に仕込み、各店舗の調理工程を簡略化。これにより、キッチンスタッフが1~2名でも多数のオーダーに対応することができる。写真は、作業効率を考えたメニュー開発。写真は「やまと豚の窯焼きジンジャーポーク」(1,058円)
一括で料理を仕込むため、食材の仕入れコストや仕入れ業者の配送費などが抑えられるほか、食材ロスも減り、原価率は従来より2~3%削減。「削減できたコストはスタッフ育成や福利厚生に回しており、サービスや従業員満足の向上につなげたいと考えています。実際、毎日の仕込みは数時間で済んでおり、スタッフの離職率の低下にもつながっています」(福島氏)。
今後は店舗拡大を見据え、売りである窯焼き料理のバリエーションを増やすとともに、限られたキッチンスタッフでも提供できるメニューをさらに充実したいという。「2019年度中に前橋にカフェをオープンする予定ですが、そこに大きめの厨房を設けてセントラルキッチンとして活用したいと考えています」と福島氏。各店舗への配送についても、専用車の購入を検討するなど、さらなる効率化を進める方針だ。
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セントラルキッチンを設け、店舗の調理負荷を大幅に軽減!
京都府京都市下京区木津屋橋 新町東入ル東塩小路町579-11
スタシオンスェリジェ2F
https://r.gnavi.co.jp/mdkf7u2c0000/
効率性と品質向上を両立。店舗での使いやすさも追求
京都を拠点とする株式会社すぎうらは、1994年「割烹料理 四季の味すぎうら」で創業し、より気軽に本格和食を楽しんでもらいたいと2009年「創作個室居酒屋」にリブランド。その後、新たに2017年、「酒と魚とオトコマエ食堂 京都駅前店」を出店し、さらなるカジュアルダウンを図り、現在、京都市内で6店舗を展開している。
オーナーの杉浦茂樹氏は、厳しい板前修業を積んだ料理人。目利きと技術に誇りを持つと同時に、「長時間労働と低賃金が常態化している飲食業界の体質を変えたい」と考えていた。その柱として導入したのが、2018年10月に開設したセントラルキッチンだ。
「目的はシンプル。時間がかかる仕込み作業を店舗から引き上げること」と杉浦氏。なかでも、看板料理の1つ「焼豚はりはり鍋」に欠かせない「特製濃厚スープ」は、下処理からスープ完成まで10時間以上かけて作る自慢の味だ。「その味を落とさずに作業を効率化し、顧客満足と従業員満足を両立させることが、今後の店舗運営で避けられない課題でした」と杉浦氏は語る。
【POINT】看板のスープ80Lを一度に仕込む
自慢の「特製濃厚スープ」は、以前は各店で毎日のように仕込んでいたが、セントラルキッチンへ移行後、週3~4回一括で調理。店舗で一度に作るときの4倍の量に当たる80Lを作る
そこで、スープ作成の全工程をセントラルキッチンに移行。雑味を取り除くために入念に行う鶏ガラや豚骨などの下処理は、パートスタッフが担当するとともに、それまで人力で行っていたスープを圧搾(あっさく)して漉す作業は、スープ専用の遠心分離機(スープ漉し機)を導入して効率化を図った。以前は、繁忙期であれば各店舗で毎日1人が付きっきりでスープを作っていたが、現在は、従来の4倍の量である80Lを一度に作れるように。同時に、「品質も安定しました」と杉浦氏。以前からレシピは確立していたが、人・場所・季節が変わればどうしても味にブレが出る。セントラルキッチンによって、その心配が一掃されたという。
現在、スープのほか「牛タンわさび」「つくねコリコリ焼き」「焼豚」など、計8品をセントラルキッチンで仕込み、真空・滅菌処理をして、冷凍や冷蔵で保存。店舗では切り分けたり、温めたりと仕上げの調理を行っている。「現場で使いやすいポーションで個装することや、在庫管理と各店舗への配送のシステムを確立したことも効率化を図るうえで、大きなポイントです」と杉浦氏は語る。
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【POINT】店舗で使いやすいポーションにパッケージング
作った料理は、店舗で使いやすポーションで個装する。「つくねコリコリ焼き」(745円)で使うつくね(写真)は、1人前2個で提供するため、無駄が出ないよう2個ずつ詰める
真空にして滅菌処理し、長期保存可能に
セントラルキッチンで作ったものは、真空パックにしたうえで滅菌処理を行い、冷凍または冷蔵で保存。これによって長期保存が可能に。定期的に保菌検査も行っている
こうした取り組みによって、店舗の負担は確実に減少。現場での仕込み時間が毎日2~3時間短縮され、スタッフは14時前後に出勤すれば営業に間に合うようになった。また、仕込み時間が少なくなったため、季節ごとのメニュー開発やサービスに注力できるように。さらに、キッチンでの力仕事が少なくなったため、女性料理人の活躍の場も広がった。合わせて、杉浦氏は魚介の仕込みについても効率を追求している。最盛期に水揚げされたホタテや白魚、カレイは、現地で加工・急速冷凍されたものを、1年分買い付け。店舗では下処理をする必要がなくなり、作業の軽減につながっている。
「セントラルキッチンに仕込みを集約したことで、新規出店や新事業を展開でき、他社のOEMも行っています」と杉浦氏。11月には大阪・梅田に新店を出店する予定だ。
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