2020/05/21 特集

何を売る? どう売る? テイクアウト&デリバリー

コロナ禍の中、売上の補填や事業の拡充を目的に、新たにテイクアウト・デリバリーを始める飲食店が増えている。そのコツやポイントを、株式会社船井総合研究所の飲食専門コンサルタント・小林耕平氏に伺った。

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株式会社船井総合研究所 フード支援部グループマネジャー シニア経営コンサルタント 小林 耕平氏
30業種以上のコンサルティングに携わった後、宅配やケータリング、惣菜業、テイクアウトなど、中食事業の開発や業績アップに従事し、2019年にグループマネジャーに。最新技術やノウハウを活用した独自の業態開発などに定評があり、赤字企業の即時業績アップから、年商数十億・数百億円企業の次代の戦略づくりまで、幅広い領域において数多くの成果を上げている。

船井総合研究所フードビジネス専門サイト『フードビジネス.COM』
https://funai-food-business.com/

“中食慣れ”がマーケットを拡大。本格的な事業展開に動き出す企業も

 新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、緊急事態宣言の対象が4月16日に全国へ拡大されてから、すでに1カ月以上が過ぎた。5月14日には特定警戒都道府県の一部を含めて39県が解除されたが、5月21日現在、引き続き外出自粛などが強く要請されるエリアもある。また、政府の専門家会議からは、新型コロナを想定した感染防止対策や日常の様々な行動に関して「新たな生活様式」が提言され、人が集まる飲食店にとっては厳しい状況が長期化しそうだ。そうしたなか、売上減の補填などを目的に、中食に活路を求めてテイクアウトやデリバリーを始め、収束後も継続して行うことを視野に入れている飲食店が増えてきている。

※「ぐるなび大学」では、すべての飲食店向けに「【ぐるなびYouTubeチャンネル】」(http://pp.gnavi.co.jp/mlcnt/?id=424520)にて、「いまこそテイクアウト ~テイクアウトのはじめ方~」「いまこそテイクアウト ~期限付酒類小売業免許について~」などを配信中。こちらもぜひご覧ください。また、ぐるなび加盟店向けに「ぐるなびPRO」管理画面では様々なテーマのセミナー動画を配信中です。

 株式会社船井総合研究所のコンサルタント・小林耕平氏は、「以前より、多くの飲食店が中食に参入していましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に参入が加速しています」と語る。飲食店側の売上補填という動機はもちろんあるが、「大きいのは消費者側のニーズの高まり」と小林氏。ステイホームやテレワークの推奨、休校や休園などによって“巣ごもり”需要が増加し、「これまでテイクアウトやデリバリーをほとんど利用してこなかった層が利用し始め、飲食店による中食市場を活性化させている」と指摘する。在宅の人々が、自宅の近隣にある飲食店のテイクアウトを好んで利用するほか、外出自粛の中でも稼働せざるを得ないオフィスや工場などでも、ランチを中心に中食のニーズが急増している。彼らが求めているのは、作り置きの弁当ではなく、“店内調理&できたて”が期待できる飲食店の料理なのだ。「最近では、このニーズに合わせて、テイクアウトやデリバリーの商品のトレンドが変化してきています」と小林氏。「飲食店が提供する“レディミール”、すなわち解凍したり湯煎したりして、家庭で飲食店の味を再現できる商品が伸び始めている」という。10品前後のコースをクール便で届ける高級フレンチ店の取り組みが評判になってニュースで紹介された例もあり、飲食店が提供する新たな食のシーンが、多くの家庭に広がり始めている。

 合わせて、購入方法にも変化がある。特にテイクアウトでは、「待ち時間や三密(密閉・密集・密接)を避けるため、予約や決済をオンラインで行いたいという要求が消費者側で強くなっています」(小林氏)。事前予約の普及は、飲食店の強みである“でき立て”を可能にするとともに、仕込みや調理の効率化、食品ロスの低減にもつながる。オンライン決済も業務の軽減や、キャンセルによる損失防止が期待できるだろう。消費者にとっても飲食店にとっても、中食のメリットはますます顕著になっている。「見逃せない重要な点は、コロナ収束後もこの流れが継続するであろうこと」(小林氏)だ。緊急事態宣言が解除されても、ソーシャルディスタンスなどへの配慮から、イートインの売上がすぐに従来どおりに回復するとは限らない。なによりも、多くの飲食店の参入によって、テイクアウトやデリバリーの快適さ・便利さを消費者が経験し、消費行動の1つとして定着しつつあるからだ。

 そうであるなら、テイクアウトやデリバリーを、コロナへの緊急対応という一過性の取り組みではなく、コロナ収束後の売上の柱の1つとして、積極的に位置付けるべきものと言えるだろう。小林氏は「この機会に店外売上の仕組みを構築して、コロナ収束後には店内・店外の両方で攻勢的に売上を作ろうとする動きがあります。チェーン展開している飲食企業の中には、既存店の一部をテイクアウト専門店に切り替えて、本格的に事業展開に乗り出すところも出てきています」と指摘する。さらに、小林氏は「飲食店の価値がこれまでとは変わってくることも予想される」と言う。「飲食店への来店動機の基本は“食べたい・飲みたい”という要求。しかし、テイクアウトやデリバリーがこれだけレベル高く出揃うと、飲食の欲求自体は家でも満たされやすくなる」からだ。飲食店としては“わざわざ来てもらう”ための価値付けが、ますます重要になってくるだろう。同時に「レディミールの人気に見られるように、家庭で最後の仕上げをする料理も、飲食店が狙う新たな市場の1つに位置付けられる」と小林氏。飲食事業の可能性が広がっているとも言えそうだ。

 ただし、飲食店がテイクアウトやデリバリーなどに取り組む際には、飲食店の営業許可だけでは足りない場合もあるので、注意が必要。例えば仕入れた農産物をそのまま販売するのは問題ないが、生肉の販売には「食肉販売業」の許可、自家的ハムやソーセージなどの加工肉は「食肉製品製造業」の許可、刺身は「魚介類加工業」の営業許可が求められることもある。また、セントラルキッチンで製造し、各店舗に配送した弁当などは、「加工食品品質表示基準」による表示が必要。不安な点は、自店のエリアの保健所に確認するのが安心だ。

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