BRASSERIE L’ARDOISE(ブラッスリー ラルドワーズ)
兵庫 神戸・三宮 フランス料理
自家農園で丹精込めて育てた旬の野菜を使ったコースや、肉や魚を藁焼きしたメニューなどが売りのフランス料理店「BRASSERIE L’ARDOISE(ブラッスリー ラルドワーズ)」。JR三ノ宮駅や私鉄・地下鉄の三宮駅を中心に広がる神戸随一の繁華街・三宮の東側、落ち着いた雰囲気の磯上エリアに2005年オープン。洗練されたカジュアルな空間も評判だ。
「ラルドワーズ」では緊急事態宣言発令以降、客足が激減したため一旦通常営業を取りやめたが、その代わりに始めた「フードボックス」が好評を得ている。これは4月13日から5月31日までの期間限定で提供する、ランチ限定の日替わりデリバリー弁当で、値段は10回セット(10食分)で6,000円(税抜き)。また、医療従事者には半額で提供している。利用方法は、購入者は配達日を前週までに指定。「10日間連続」でも「1日おき」でも、自由に決められる。「10回分」は、家族や知人、オフィスの同僚らとのシェアも可能なので、「2食を1日おきに」や「10食分まとめて水曜日に」といった利用もできるのが特徴だ。
「実は当初、テイクアウトやデリバリーはまったく考えていませんでした。やはり作った料理はその場ですぐに食べてもらいたい。フランス料理なので、そもそもテイクアウトには向いていないと考えていました」と話すのは、オーナーの柘植淳平氏。しかし、小学校と保育園に通う子どもを持つ2児の父でもある柘植氏の耳には、休校や休園の影響で毎日家族の昼ごはんを作るのが大変だという父母の声が届いていた。また、同時期に、フランスのシェフたちがコロナ禍で戦う医療従事者のために、ボランティアで弁当を病院に届けるニュースも目にした。「そのとき、“シェフが作る本気の昼ごはんを届ける”というコンセプトが浮かび、モチベーションが急激に高まりました。自分も何か社会に貢献できることはないか、と漠然と考えていましたし、小さな子どもを持つ方に喜んでもらえればうれしい。テイクアウトやデリバリーをやることに意味を見出せました」と柘植氏。「フードボックス」のみで休業中の売上を補うのは難しいが、家賃など最低限かかる固定費や諸経費のために、まずは60万円を売り上げる計画を立てた。「価格は“昼ごはん”なので、1食を600円に設定。10回分で6,000円。客単価6,000円のお客様を月100人集客するイメージです」(柘植氏)。そして、ぐるなびやInstagramで告知をしたところ、4月は目標の100人分(1,000食)を早々に完売。口コミで徐々に人気が広がり、5月に入ってからも順調だという。
「フードボックス」のメニューは、基本的に日替わりのおまかせだ。フランス料理の技法を使う料理もあるが、フランス料理には特にこだわらず、和の要素を取り入れる日もある。自家菜園で様々な野菜を育てているので、野菜で季節を感じてもらえるようにしているほか、メニューは冷めてもおいしいものを心がけています」と柘植氏。同じメニューは作らず、「お米は絶対に炊きたてがいちばんおいしい」(柘植氏)ことから白米は入れず、同様の理由からパスタも外すなどこだわっている。また、医療従事者へ届ける「フードボックス」に関しては、柘植氏の取り組みに賛同する近隣の20店舗近い飲食店と力を合わせて、分担して作っている。
店のInstagramには、今まで作ってきた「フードボックス」のカラフルな写真が並ぶ。中でも、酢飯をローズヒップとビーツでピンクに彩色したホタルイカのちらし寿司と、ブリの塩焼き、自家菜園の大根やトマト、オリーブの南仏風キムチ、海藻サラダを組み合わせた日は、同業者からの反響も高かったという。そのほか、「鰻と自家菜園の人参のきんぴら 十五穀米の炊き込みごはん」「ラルドワーズ流チキン南蛮(クリスピーチキン 豆腐のタルタル オニオンターメリックガーリックライス)」「鰯のハーブコンフィ 加西の裏山でとれたタケノコとサフランのパエリア 自家菜園の玉ねぎと梅のグレック」など、デリバリー弁当のクオリティを超えた、食欲をそそるメニューが並んでいる。「コンセプトには“免疫力アップ!”というのもありますので、ビタミンやたんぱく質、鉄分などのバランスも意識しています」と柘植氏。「料理が趣味だった高齢の女性から『また料理をしてみよう』ですとか、病院内での移動制限があるという医療従事者からは『ランチが癒やしになっている』など、様々な声をいただいてます」(柘植氏)といった感謝の声を励みに頑張る毎日が続いている。
「フードボックス」のほか、ゴールデンウイークに特別企画として実施して大好評だったのが、“世界を食べ尽くせ!美食の旅”と銘打った「ラルドワーズツアー」。柘植氏が添乗員となって、ヨーロッパを巡る架空の旅を設定し、5月4日~7日の4日間のディナーをデリバリーするというもので、もちろん当日のメニューは、行き先の国にちなんだ料理だ。「5月4日の夜にフランス・パリに到着し、チェックインを済ませたら、まずは観光客の来ない路地裏にある隠れ家レストランへ…などと、本当に旅をしている気分で細かくシーンを設定し、まずは僕自身がメニュー構成を含めて楽しみました。ベルギーの日(5月6日)には、ベルギービールを購入して待っていてくれた方もいたり、お客様も思い思いに楽しんでいただけたと感じています」と柘植氏は振り返る。料理は店のストウブ鍋や食器ごと提供したり、真空パックなども駆使。4日間(4食分)で1人15,200円(税抜き)の“ツアー”は予定通り15人分が「満席」となって大成功のうちに終了した。
そのほか、事前予約制でオードブル(1人前4,000~7,000円)を受け付けたり、「晩ご飯に出てきたら絶対盛り上がるシリーズ」として、「北海道産黒毛和牛サーロイン(スパイスと自家菜園のローズマリーでマリネ)の藁焼き」(4,800円/税抜き)や「高知県産カツオの藁焼き パストラミ仕立て」(2,500円/税抜き)を数量限定で提供するなど、趣向をこらして幅広くデリバリーを行っている。
「『フードボックス』は5月31日で終了しますが、コロナ収束後も月に何度かは、土・日曜日などに限定してデリバリーを実施したいと考えています。また、『ラルドワーズツアー』は実店舗でぜひ第2弾をやりたいですね」と、柘植氏は今から様々な企画をあたためている。
兵庫県神戸市中央区磯上通4-3-2 1F
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