衛生管理の最適化&見える化で食中毒をより効果的に予防!
製造工程のリスクを分析し、管理することで安全性アップ
2020年6月に施行された改正食品衛生法により、原則として食品を扱うすべての事業者は「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理に取り組むことが義務化された。HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字をとった略称で、国際的に認められた衛生管理の手法だ。食品事業者自らが、製造工程に潜む「危害要因(ハザード)」を予測した上で、その防止につながる重要なポイントを管理することで、製品の安全性を確保する。
食品安全のコンサルティングを手がける柏原吉晴氏は「HACCPの目的を一言で表すと、食中毒をはじめとする事故を出さないことに尽きます」と説明する。「従来の衛生管理では、最終的に完成したものを検査し、安全性を確認していました。それに対しHACCPは、どこに危険が潜んでいるかを事前に分析し、それを排除・軽減していく点が大きな違いです。また、計画と記録を作成し、衛生管理を“見える化”することで、より効果的に食中毒を防ぐことができます(下図)」(柏原氏)。
もともとHACCPは、アメリカ航空宇宙局が宇宙食の安全性を高めるために考案したもの。その有効性が評価され、1990年代以降は先進国を中心に食品工場などで導入が進められてきた。前述の通り、日本でもすべての食品事業者に導入が義務化されたが、知っておきたいのは、業種や規模によって内容が異なっている点(下図)。大規模な食品工場などにはHACCPに基づく厳格な取り組みが求められるのに対し、飲食店の場合は、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」、つまり簡略化された方法でより簡単に取り組めるようになっている。
飲食店での食中毒事故の多さを見ても(下図)、HACCPに取り組むことは急務だと柏原氏は指摘する。「国内で起きる食中毒の半数以上が飲食店で発生しており、年間500件を超えています。2011年に焼肉店の集団食中毒で5人が亡くなった事件も記憶に新しいでしょう。食中毒は人命に関わり、決して他人事ではないことを、食に携わる人は肝に銘じる必要があります」(柏原氏)。食中毒予防の徹底は、自店の経営を守ることにもつながり、意義は大きい。次ページからは、取り組む上でのポイントを見ていこう。