2022/09/13 特集

飲食店2022年後半の戦略~目指せ!年末の売上最大化~

2022年も後半に突入。年末に向け飲食店の状況はどうなるのか。また、秋から年末にかけどんな戦略を立て何に取り組んだらよいか、どのように予約を取って売上を最大化させればよいのかをコンサルタントにうかがった。

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2022年後半は「人材確保」「値上げ」「価値ある商品」の3本の柱で動く!

目次
2022年後半は「人材確保」「値上げ」「価値ある商品」の3本の柱で動く!
飲食店の2022年前半の状況
年末を見据え、何をすべきか
人材を確保し店舗力を高めるには?
予約を獲得するために何をやればよい?
9~12月にやるべきことは?

 2022年も後半に突入し、年末について戦略を練る時期となった。飲食店にとって、2022年夏は通常営業ができた一方で、コロナの感染状況によって客数・売上ともに影響を受けた店舗が多かっただろう。年末に向け、今後状況はどうなるのか。また、どんな戦略を立てて年末商戦を迎え、売上を上げていけばよいのか。飲食店の現場の状況に則したコンサルティングを行っている株式会社アップ・トレンド・クリエイツの白岩大樹氏に、秋から年末にかけて飲食店がどんなことに取り組んだらよいかを聞いた。白岩氏は「人材不足の解消」「商品(メニュー)の値上げ」「価値ある商品づくり」の3本の柱で店舗力を強化し、予約獲得に向けて取り組むことを提案する。

【今回お話を聞いたのは】株式会社アップ・トレンド・クリエイツ 代表取締役 白岩大樹氏
1976年熊本生まれ。中央大学卒業後、板前として「なだ万」に勤務。2000年より「牛角」のスーパーバイザーを務め、2004年より株式会社OGMコンサルティングにて集客コンサルタントとして活躍。2009年アップ・トレンド・クリエイツ設立。継続性のある「質の高い売上」の向上を目指すために、「汗を流すコンサルタント」としてオーナーや現場の店長・スタッフらと一緒に数々の収益アップを実現している。コロナ禍では、リモートも交えて現場に則したコンサルティングを行う。

飲食店の2022年前半の状況

売上は回復傾向だが、慢性的な人手不足と物価の高騰で、複雑な状況に

 コロナ禍の2年間、飲食業界は予期せぬ変化を余儀なくされた。「大手飲食チェーンは繁華街やオフィス街から撤退する一方、住宅地や郊外に出店して店舗数を維持しつつ、現場の人手不足を本部社員の投入で対応しています。中堅以下の飲食企業や個店もオーナーや幹部社員が現場に出て、マンパワーでなんとか凌いでいる状況」と白岩氏は概観する。

白岩氏は飲食店の売上は回復傾向にあるが、一方でコロナ禍でアルバイトやパートのかけ持ちが一般的になったためシフトが埋まりにくくなっており、それがスタッフの疲弊を招いていることを指摘する

 共通しているのは、人手不足がコロナ禍以降、さらに深刻かつ複雑になっていること。その一つとして、「アルバイトやパートを他店もしくは他業種と“かけ持ち”することがスタンダードになっている」と白岩氏は指摘する。かけ持ちスタッフの増加によって店舗ではシフトが埋まりにくく、慢性的な人手不足状態に陥っている。加えて、新規募集をしても応募が少なく、即戦力となりえるような人材が入らない。新規スタッフが入った場合でも、教育したくても現場が忙しく、既存スタッフへの負荷がさらに増大。現場は疲弊し、それが離職につながり、さらに人手が不足するという「人手不足ドミノ」が発生しているのだ。

 そんな中、3年ぶりに行動制限がない状態で迎えた2022年の夏は、飲食店の売上や客数は、数字の上では回復傾向が見られた。特に住宅地や郊外、地方では「コロナ以前(2019年)と比べ、売上は80〜95%、客数は90%前後といった傾向」と白岩氏は分析。予約も仕事などの公的な大人数の宴会から家族や少人数の飲み会といったプライベートな利用へと置き換わりながらも回復傾向にあり、感染対策がしっかりしている店、個室・半個室など感染リスクの軽減につながる店が選ばれている状況だ。

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 ただし、白岩氏は「売上が良かったからといっても安心は禁物。大事なのは『売上の質』」と指摘する。慢性的な人手不足の中で夏の繁忙期を迎えた結果、売上は取れても顧客満足と従業員満足を落としている可能性は高い。そのダメージに気付かないと、年末商戦を戦う前に崩れてしまいかねず、「9月以降、店舗運営の地盤をしっかり固めてほしい」と話す。

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年末を見据え、何をすべきか

人材を確保し、メニューの値上げと予約獲得に挑み、年末商戦を迎えよう!

 では、秋から年末にかけてどんな状況が予想され、どう対応したらよいのだろう。今後もコロナによる影響の不透明さは続きそうだが、2020、2021年のような行動制限や協力金などは考えにくい。客足が戻り切らない中で店舗力を上げて戦わなければならない。

 「そのための前提が、慢性的な人手不足を秋のうちに解決しておくこと」と白岩氏は言う。例年、繁忙期の後は離職が少なからず見られるが、現在の状況はより深刻。スタッフが集まらず営業できない店や閉店する店も出始めている。

 しかも、「アルバイトのかけ持ちが、スタッフの士気を下げている」(白岩氏)とも。週1回以下しかシフトに入らないスタッフがいると、その穴埋めに駆り出されたスタッフに不公平感が募るのだ。これを放置すると、一体感が醸成しにくくチーム力が育たない。「こうしたダメージをいち早く回復させることが、何よりも大事」と白岩氏は念を押す。

人不足によるスタッフのダメージを回復させるとともに、物価高騰に伴う利益低下をカバーすることが急務となっている

 加えて、2022年10月からは最低賃金が上昇。食材などの追加値上げも予想されており、このままでいくと飲食店は利益の低下は避けられない状況。メニューの値上げを避けて通れない状況だ。

 そこで白岩氏が提案するのが、「人の基盤を固めつつ、メニューの値上げや年末商品(メニュー)の開発に取り組むこと」。「9~10月でしっかり人材を確保し、利益確保のために11月にはメニューの値上げを実施して、年末商戦を迎えるとよいでしょう。もちろん、そこにはお客様への案内や予約につなげるための取り組みも欠かせません」と白岩氏。では、具体的にどのように取り組んでいくかを見ていこう。

人材を確保し店舗力を高めるには?

店長とスタッフのコミュニケーションを深めてつながりを強め、リファラル採用へ

 それでは、人材を確保して士気を高めるとともに、慢性的な人手不足を解決させるには、どうしたらよいのだろう。白岩氏は「カギは店長によるコミュニケーション。まず、2つのことを行います」と話す。

ステップ1 面のコミュニケーション
店長から全スタッフへの日々の発信を行う

ステップ2 点のコミュニケーション
店長がスタッフと個別面談を行う

「面のコミュニケーション」では「数字」「感謝」「評価」について店長から発信し、「点のコミュニケーション」ではスタッフと面談を行い、スタッフから要望や店の改善点をヒアリングする

 ステップ1の「面のコミュニケーション」では、「数字」「感謝」「評価」の3つの内容を店長から全スタッフに向け発信する。「数字」は売上額。売上は営業の目的であり給料の源泉なので、営業を担うスタッフ全員が共有することで、働く目標が明確になり、働き方が前向きになる。また、売上増が時給アップにつながるので、モチベーションにも直結する。

 その上でスタッフへ「感謝」を伝える。シフトに入ってくれたこと、ピークタイムを乗り切れたことなどを、率直に感謝しよう。これによってスタッフは、自分が貴重な戦力であることを自覚し、店への帰属意識を高めることができる。

 さらに「評価」も忘れずに伝える。来店客に喜ばれた接客シーンやクレームの有無と内容などを共有して、翌日からの営業課題として提示するとよい。こうしたコミュニケーションを続けることで、目的を共有するチームであることを浸透させることができる。

 だが、「面のコミュニケーション」は店長からの一方的な発信となるため、「点のコミュニケーション」としてスタッフ一人一人と面談を行う。例えばあらかじめ「もっと働きやすくするための提案を3つ考えて教えてほしい」などと内容を伝え、1人10分くらいずつ面談する。スタッフから上がった意見を実現可能なものから取り入れていくと、店長と店への信頼感を育むことができる。面談は年に3~4回、改善点が見えやすい繁忙期の後に行うとより効果的だ。

 この2つを行って信頼関係が築くことができたら、友人をスタッフとして紹介してもらえるよう声掛けする。「“かけ持ち前提”でかまいません。店に食事に来てもらい、サービスしつつ相性が良さそうなら、シフトに入れるかを聞いてみるという軽い感じでいいと思います」と白岩氏。このリファラル採用のやり方であれば、高い求人費をかけずに人材を獲得できる可能性が高くなる。

 「面と点のコミュニケーション」と「紹介」を繰り返すことで、徐々に店への不満や人手不足は解消され、店内組織は強化される。早くスタートして、秋のうちに人材に困らない店を目指したい。

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予約を獲得するために何をやればよい?

価値ある商品を開発し、小規模&プライベートの利用獲得へ動く

 コロナ以降、ユーザーの利用は「小規模」「プライベートの宴会」にシフトしている。2022年の年末もこの傾向は続き、「個人的な食事会、お疲れさま会、家族の集まり、1.5次会などの利用シーンを、一つ一つ丁寧にすくい取る視点が重要」と白岩氏は語る。予約の獲得について、「店舗から何か働きかけなければ、予約は減ってしまうので、積極的にアピールする必要があります」(白岩氏)。

 そこでまず行いたいのが、既存客に対して予約を促すアプローチ。来店時に年末プランのチラシを手渡したり、料理や時間帯の要望に応えることを伝えるのも有効だ。もちろん、住所やメール・LINEなどのデジタルアドレスを登録してもらい、DMやメール、SNSなどで情報を届けることも行いたい。また、予約なしで来店した人に対して、予約の利便性をアピールすることも有効。そもそも予約ができることや、個室・半個室などがあることを知らない人もいるので、効果が期待できる。予約特典を設けて促すのも一案だ。

 これらに加えて、白岩氏は「年末は、値上げをして迎えましょう」と提案。前述したとおり、人件費や物価の高騰で利益は圧迫される。利益を確保するためには客単価アップが必須だ。低価格で戦うのではなく、多少高い価格設定でも価値を感じてもらえるようなメニューやプランを作れば、集客や予約獲得にもつながるはず。さらに、「ベストマッチな商品を提供することも追求したい」(白岩氏)。来店客のニーズに合っているか、量と質は合っているか、利益が出る価格設定なのかなど、来店客の満足度と店の売上や利益が見合っているかをチェックしたい。

 そして、Webサイトには最新の情報を正確に掲載するほか、感染対策の具体的な内容について明記することも大切。「SNSを使用している人は増えていますが、HPや飲食店検索サイトなどの情報も見て店を決める人が多いです。情報をしっかり更新して発信してほしい」(白岩氏)。

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9~12月にやるべきことは?

人・値上げ・商品の3本柱で態勢を整え、年末から来年を展望しよう

 最後に、9〜12月の4カ月間にやるべきことを整理する。「課題の柱は人材・値上げ・商品(メニュー)の3つ」と白岩氏。秋のうちに人材の課題をクリアし、値上げの戦略を練って年末商戦に臨むイメージだ。下図のように、月ごとに比重を変えながら、ここに顧客情報の収集・整備や情報発信を組み込んでいくとよい。

「人材」「値上げ」「商品(メニュー)」に分けて「9~12月にやるべきこと」を整理。9~10月は人材の確保、11月に値上げの実施を行い、12月の繁忙期を迎えるとよいだろう

 9月の重点はもちろん「人材」。ここがクリアできないと、波に乗れないので踏ん張りどころだ。10月には新戦力を補強し、値上げ幅と価値づくりの方針を決定。11月には値上げを実施し、来店客の反応を見ながら商品を磨いて12月に備えるイメージだ。値上げを成功させるためには、接客力の向上も不可欠なので、新たな価値を提供できるチームづくりも意識したい。そして、勝負の12月。繁忙期こそスタッフとのコミュニケーションを密にして、チーム一丸となることが大切になる。また、来店客の声をアンケートなどで吸い上げておくと、2023年の戦略が立てやすくなる。

「9〜12月の戦い方が、間違いなく2023年にもつながっていきます」と白岩氏。さらに「2023年は働き方改革に伴う“生産性の向上”が待ったなしです。DX化の知識やスキルを今のうちに磨いて、備えることも忘れないでほしい」と白岩氏は呼びかける。同時に、「あらためて、2023年はますます現場の力で差がつく1年になります」(白岩氏)。少しでも早く現場力の強化に取り組み、自信を持って2022年後半を戦おう。

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