インバウンド獲得対策の今─ vol.22
外国人客が望む「日本人と同じ」をカギに、集客数・注文品数・客単価のアップに成功
年々増加傾向にある訪日外国人観光客(インバウンド)。ビジネス等で長期在日する外国人も対象に、言葉の違い、文化の違いを乗り越え、様々な工夫で集客を図る飲食店の取り組みをレポート。
外国語メニューブックはわかりやすさに配慮
九州の玄関口、JR博多駅の駅ビルに2011年3月、九州新幹線の開業とともにオープンした「笑楽 博多駅店」は、国産和牛の新鮮なホルモンを使う「博多もつ鍋」をはじめ、馬刺しや辛子明太子など九州各地の名物料理が売り。近年は外国人観光客が多く、来店客の3割強が韓国を中心に、中国、台湾、香港などのアジア系外国人だという。その理由として、ホールマネージャーの長野秀継氏はまず、「博多の地の利」をあげる。「韓国と福岡空港は飛行機で約35分、高速船でも3時間弱の距離。特にLCCが就航してからは、韓国から気軽に日帰り旅行する方が増え、3月と8月は学生も多いのが特徴ですね」(長野氏)。
外国語のメニューは2013年頃から、英語と中国語のものを用意していたが、当時は外国人好みのメニューを店側で考え、グランドメニューから絞り込んで作成したメニューのため、品数も少なかった。ところが、外国人客を観察すると「日本人と同じもの」を求める傾向が強いことに気づいた。そこで2014年には、写真をふんだんに使った日本人用メニューをそのまま翻訳。英語・韓国語・中国語(簡体字・繁体字)の外国語メニューブックを作成したところ、集客数が上昇していったという。「たくさんのメニューから好きなものが選べますし、もつ鍋の食べ方の説明のほか、牛・馬・豚のアイコンも付けて、宗教上の理由で食べられないものがある方にもわかりやすくしました。結果、料理のオーダー数が増え、客単価が驚くほどアップしました」(長野氏)。
さらに、「現在、外国人のお客様はSNSの口コミやぐるなび外国語版などで、来日前からチェックして店を選ばれる方が多いようです」と長野氏。焼酎・日本酒・博多限定ビールなど、福岡および博多のブランドを熟知し、事前にオーダーを決めて来店する人も珍しくない。利用スタイルも食事のみならず、居酒屋使いや高単価のコースを利用するなど、多種多様なニーズが生まれている。
そういった状況を踏まえ、中国・韓国・フランス人の留学生など、外国人スタッフを積極的に採用し、英語についてはスタッフ全員で対応。料理の説明はもちろん、日本酒は枡で提供するなど、〝日本式.の飲み方も説明し、さらに観光や道案内に至るまで対応するのが、今の接客方針だ。「店側が外国人のお客様に合わせるよりも、『日本人と同じ料理と細やかなサービス』を徹底することが大事。国籍を問わず、“笑楽ブランド”の本質を伝えたいですね」(長野氏)。今後は福岡の蔵元の酒を集め、「日本酒フェア」なども開催の予定。飽きさせない店づくりに加え、外国人客には「来日してよかった」という喜びも提供したいと考えている。
福岡県福岡市博多区博多駅 中央街1-1 JR博多シティアミュプラザ10F
http://r.gnavi.co.jp/fa84621/
インバウンドとは?
「海外から日本へやってくる外国人旅客」のこと。国土交通省を中心に展開される「ビジット・ジャパン」事業(2003年~)などにより、2013年には1964年の統計以来、初めて1,000万人を突破。そして2014年には1,341万人に達した。政府が掲げる2020年の2,000万人実現に向け、今後も増加が予想されるインバウンドの集客は、飲食店にとって重要な課題のひとつだ。
Report from KAWASAKI川崎市とぐるなびが「地域活性化連携協定」を締結「インバウンド対策セミナー」に川崎市内の飲食店が集結
川崎市とぐるなびは、双方の資源を有効に活用し、川崎市の地域活性化を目的に5月19日(火)、「川崎市・ぐるなび地域活性化連携協定」を締結。協定内容の1つである「飲食店における外国人受け入れ環境づくり」のため、「インバウンド対策セミナー」が6月29日(月)に川崎市産業振興会館で行われた。セミナーの冒頭では、川崎市経済労働局 商業観光課の松元直樹氏が「川崎市・ぐるなび地域活性化連携協定」締結への経緯と期待を述べたほか、近年人口増が続く川崎市の特長と概要を説明。多様な産業が集積する市の強みを活かし、工場夜景観賞などの「産業観光」を推進している現状、飲食店や観光スポットなどの観光資源を軸に外国人観光客の誘致を強化する施策について報告した。
セミナーではぐるなび大学のインストラクターが、訪日外国人観光客数の推移や各国の休暇の時期などのデータ、世界的な旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」やぐるなびでの最多検索ワードの紹介を通じ、昨今の外国人観光客の動向を解説。「ぐるなび外国語版」の活用法やトラブル時に対処する英会話の参考フレーズ、料理の食べ方の動画や体験型イベントの実施で売上増につなげた店舗の実例などを挙げ、着実に来店率アップにつながる「訪日外国人客の受け入れ環境づくり」へのヒントを伝えた。
Report from TOKYO“外国人集客”のコツを繁盛店が自ら伝授する特別セミナーを開催
去る6月16日(火)に東京・日比谷で、飲食店のインバウンド対策に関する特別セミナーが開催された。講師には「日本料理いらか 銀座店」などを経営する株式会社いらか代表取締役社長の梨澤雅弘氏。外国人留学生を対象に実施した、出汁をとってもらう“食体験プログラム”を通じての新たな発見など、外国人集客のアイデアが語られ、熱心にメモをとる姿も多く見られた。
Information
受講無料 ぐるなび大学「インバウンド対策セミナー & 外国語版メニュー登録・更新会」
ぐるなび大学では、外国人観光客の受け入れ準備のための講座として、「インバウンド対策セミナー&外国語版メニュー登録・更新会」を全国各地で開催。ぜひこのセミナーを活用し、今後のインバウンド受け入れ準備につなげていただきたい。
※参加無料。対象はぐるなび加盟の飲食店様となります。
- 問い合わせ先:ぐるなび大学事務局
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0120-41-9672
受付/平日10:00 ~18:00 - URL:http://daigaku.gnavi.co.jp
ぐるなびによる訪日促進サイトJapan Trend Ranking
「行ってみたい日本、もう一度行きたい日本へ」をコンセプトに、ぐるなびが2013年4月25日に開設した、日本の今の魅力を伝えるWebサイト。全国50万件の飲食店情報と、全市区町村の生産者とのネットワーク、約2万人のシェフのコミュニティを有するぐるなび独自の情報を駆使し、海外や外国人に対して正しい日本食や食文化を発信。海外における"日本のファン"作りを狙い、訪日外国人観光客のさらなる拡大を目指している。
サイトでは、日本の伝統料理やご当地グルメのほか、名所旧跡、温泉、文化・芸能や、ショッピング、四季のイベントなど、日本全国の最新トレンドをランキング形式で紹介。また、会員(登録無料)になることで様々なキャンペーンへの参加が可能となる。サイトの随所に「ぐるなび外国語版」への誘導口を設け、店舗ページの閲覧も促進している。