【2025年版インバウンド集客】外国人はこうして利用飲食店を決めている!

訪日外国人にとって「外食」は日本に来る目的の一つ。彼らはどのように入店する店を決めるのだろうか。訪日外国人トップ5の国について、それぞれどんな食習慣を持っているのか、また日本滞在中の飲食店の探し方などを専門家の村山慶輔氏に取材。その特徴や傾向から、飲食店ができる対策や今後の展望を含めて聞いた。

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記事初回公開日:2023.8.31

「外食」は日本に来る目的の一つ

いよいよ2024年11月、訪日外客数は1~11月累計で3,337万9,900人となり、過去最高だった2019年の3,188万人を超え、記録を更新した(2024/12/18 日本政府観光局発表)。

外国人にとって「外食」は、日本に来る目的の一つとなっている。今日本にはどんな国からどんな外国人が来ているのか。彼らはどうやって飲食店を探し、日本の飲食店に何を期待しているのだろうか。株式会社やまとごころ代表取締役を務めるインバウンド戦略アドバイザー・村山慶輔氏に話を伺い、インバウンドの現状や飲食店が今できる対策、今後の展望などについて話を聞いた。

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株式会社やまとごころ 代表取締役 インバウンド戦略アドバイザー 村山慶輔氏
兵庫県神戸市生まれ。米国ウィスコンシン大学マディソン校卒。2000年アクセンチュアに入社し、地域活性化プロジェクト、グローバルマーケティング戦略などのプロジェクトに従事。2006年同社を退社。2007年にインバウンド観光に特化したBtoBサイト「やまとごころ.jp」を立ち上げ、ホテル・小売・飲食・自治体向けに情報を発信し、教育・研修などのコンサルティングサービスを提供する。インバウンド関連諸団体の理事や、国・自治体の委員、アドバイザーを多数兼任する。

目次
【CHAPTER.1】インバウンドの“今”を知る
「初訪日」「気軽な訪日」「当日予約」「消費額」が増加
日本の食事の量に外国人は不満
韓国人にとって「お通し」は無料&お替り自由!?
【CHAPTER.2】飲食店のインバウンド集客戦略
「旅ナカ」の情報収集に食い込む
集客のカギ!「ネット戦略」「地域連携」「店頭アピール」

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【CHAPTER.1】インバウンドの“今”を知る

増えたのは「日本初心者」「気軽な旅行」「飲食店の当日予約」「一人当たりの消費額」

増加傾向なのは「初訪日」「カジュアルな個人旅行」「飲食店の当日予約」「一人当たりの消費額」

コロナ禍を経て、ようやく2024年11月に、訪日外国人の1~11月累計で過去最高を記録した(日本政府観光局「訪日外客統計」)。「順調な回復の背景には昨今の円安と、アフターコロナの旅行という要因があります」とインバウンド戦略アドバイザーの村山慶輔氏は語る。

円安で訪日のハードルが下がったことで、気軽な気持ちで日本に来る人が増えているとのこと。また、日本の料理やマンガ・アニメなどが好きではあるが、高額の旅費が足かせとなって日本に来たことが無かった人も続々と来日しているという。「中でも東京・大阪・京都などのゴールデンルート(王道の観光周遊ルート)に人気が集中していて、特に東京を訪れる外国人の比率が突出しています」と村山氏。コロナ禍前と変わらず、個人客の比率は約8割程度。主に若年層は個人で、シニア層は団体旅行で来る傾向にあるという。

気軽な旅行のニーズが高まったことで増えたのが、 観光ツアーや飲食店の“直前予約” だ。「例えば渋谷の街歩きツアーは、以前は遅くとも前日までには申し込みがありましたが、今では当日の開始直前に申し込みが入ることも珍しくありません」(村山氏)。気軽な訪日が増えた結果、さほど事前準備や予約をせずに来日し、場当たり的にイベントや店を探す層も一定数いるようだ。

「もう一つの特徴として、コロナ禍前と比べて外国人一人当たりの消費額が全体平均で約5万円上がっています。これは円安の影響ともいえますが、所得が高い方が来ている可能性も高そうです」(村山氏)。

訪日観光客数(累計)の多い国・上位5国
2023年1~6月累計
(6カ月間)
2023年1~12月累計
(12カ月間)
2024年1~11月累計
(11カ月間)
1位 韓国
約312万人
韓国
約695万人
韓国
約795万人
2位 台湾
約177万人
台湾
約420万人
中国
約637万人
3位 アメリカ
約97万人
中国
約242万人
台湾
約555万人
4位 香港
約90万人
香港
約211万人
アメリカ
約248万人
5位 中国
約59万人
アメリカ
約204万人
香港
約239万人

2023年の前半と年間、2024年11月現在の、3つの期間で訪日観光客数を比較してみると、上位は東アジア・東南アジアが占めている。中国は2023年前半に5位だったが、後半から顕著に増加し、2024年は2位へランクアップ。中国人の訪日数増加の背景には2023年8月10日、3年半ぶりに日本への団体旅行解禁がある。ちなみに、日本政府観光局「日本の観光統計データ」(都道府県別外国人延べ宿泊者数)では都道府県別に検索できるので、自分の都道府県にどんな国から外国人が来ているのかをチェックしてみよう。

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日本の食事の量に外国人の多くが内心不満

では、こうした訪日外国人は、日本食についてどんなニーズがあるのだろうか。まず、どの国の人にも共通する不満が「料理のボリューム」だと村山氏は指摘する。「他国に比べると、日本の飲食店は全体的に量が少ないため、定食やコース料理に訪日客は物足りなさを感じがち。団体旅行で最も多いクレームも、量に関する内容です」(村山氏)。アメリカでは日本人が驚くほどの大盛りサイズが通常で、中国や韓国では「あえて大量に出された料理を残すことがおもてなし」という文化もある。外国人向けに、料理やドリンクの大盛りサイズやセットメニューを用意するなどの対策が必要だ。こういった対策は単純に外国人のニーズに応えるという側面だけでなく、それによる単価アップにつなげられるメリットもある。

また、各国の食の多様性にも配慮したい。ヴィーガン(卵・乳製品などの動物性食品を完全に避ける人)を含むベジタリアンの割合は全世界の7%程度といわれ、特に台湾やアメリカで多い。また、グルテンフリー(小麦に含まれるグルテン抜きの食事)や、ハラール(豚肉・アルコールなどの原材料抜きのイスラム法上許される食事)へのニーズも高まっている。「訪日客の10人に1人程度は何らかの食の制限があるといわれています。普段からアレルギー対応に気を配る店舗は多いと思いますが、その延長線上でインバウンド向けにも対応し、「ヴィーガンなどに対応している」という情報をアピールすれば、確実に集客につながります」と村山氏はアドバイスする。

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韓国人にとって「お通し」は無料&お替り自由!?

では、それ以外に国ごとに飲食店が知っておきたい食習慣や傾向はあるのだろうか。訪日観光客数の多い上位5カ国の食習慣について村山氏に聞いてみた。

1)韓国
まず韓国については「お酒に強く、焼酎をストレートで飲む方が多いですね。日本同様、食事をしながらお酒を飲むことも大好きです。最近では本国で日本のハイボールがとても流行しているのでニーズは高いでしょう。また、健康志向の人も多いので、食材・メニューの効能やうんちくを説明すると喜ばれる傾向にあります」と村山氏。加えて、韓国には副菜のおかわりが無料になる文化が根付いているため、「日本のお通しには料金が発生する」「無料でおかわりできない」とったことも事前に説明しておくと、勘違いやクレームなどを回避できるはずだ。

2)中国
日本に慣れていない中国人は刺身や寿司などの生もの、生野菜はあまり好まず、温かい料理、炒めた野菜が喜ばれる傾向にあるという。同じくドリンクについても「冷たいものは健康によくない」という考え方の人が多く、ビールや水も常温が好まれる傾向にある。「出身地によって味の好みが異なり、日本食を淡白だと感じる人もいるので、卓上にしょうゆやトウガラシなどの調味料があると喜ばれます。また、中国ではテーブル会計の飲食店が多いので、そうでない場合は『お支払いはレジで』と明記しておくと親切だと思います」と村山氏は指摘する。

3)台湾
台湾について知っておきたい特徴の一つは、人口の約14%がベジタリアンということ。「仏教上の理由から五葷(ごくん)といわれる匂いの強い野菜(ネギ、玉ねぎ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ)がNGな人もいる点に注意したいです」(村山氏)。また、夏でも食べるほど鍋が好きだという。加えて、「台湾の飲食店ではボリュームと品数が重視されることから、テーブル一杯に料理を並んでいる状態を喜ぶ傾向にあります。そういう意味で日本の居酒屋は台湾人と相性がいいと思います」と村山氏は指摘する。一方で、あまり度数の高くない台湾ビールがポピュラーで、村山氏いわく「日本人よりもアルコールには強くない印象」だという。さらに、飲みながら食べるというより「食事をする店」と「お酒を飲む店」は分けて考える傾向にあるそうだ。

4)アメリカ
アメリカについて知っておきたいのが、和食=ヘルシーなイメージで人気が高いこと。ただ、「お頭付きのお造りやおどり食いなど、動物の原形を残した料理はグロテスクだと嫌がる人も少なくないです」と村山氏は注意を促す。「また、店員におすすめのメニューを聞いてコミュニケーションを楽しむ人が多く、カスタマイズを好む傾向もあります。私が以前アメリカの寿司店でアルバイトをしていたときは『巻きずしをコメ抜きで握ってほしい』とリクエストされたことがあるほど、自分なりの楽しみ方をしたいと考える傾向が強いです」(村山氏)。

5)香港
香港は、日本に何度も来ているハードリピーターが多く、「正直、彼らは何でも食べます(笑)」と村山氏が断言するほど、食の守備範囲が広く、えり好みしないという。多国籍国家なだけに、食に関する柔軟性が高く、美食家が多いのも特徴。「もともと香港にはあらゆる日本料理の店があるので、食べ慣れていて舌が肥えています。また、外食文化が根付いていることもあり、深夜まで営業していて、夜もゆっくり飲食できる店が好まれます」と村山氏は語る。

6)増加しているタイ・ベトナム
ほか、訪日数が増えているタイやベトナムについても聞いてみた。「彼らは日本食への関心が非常に高いです。特にカニなどのシーフードは、自国では食べられない味なのでとても人気があります」と村山氏。なお、タイの一部にはイスラム教徒がいるため、ハラールの対応を意識する必要がある。

【CHAPTER.2】2024年に向けた、飲食店のインバウンド集客戦略

Google対策や店頭販促で、「旅ナカ」の情報収集に食い込む

飲食店の探し方(検索ツール)

訪日客が日本の飲食店の情報を集める際には、「旅マエ」「旅ナカ」でプラットフォームを使い分けていることが多い。旅マエ・旅ナカでの一般的な飲食店探しには、世界最大級の口コミサイト「TripAdvisor(トリップアドバイザー)」がよく使われている。「一般的な日本の飲食店はトリップアドバイザーをそこまで重視してないと思いますが、訪日外国人は非常に多くの方が参考にしているサイトなので、自分の店の情報が掲載されているのか、されているならどんな口コミが書き込まれているのかなどチェックしていただきたいです」(村山氏)。

また、Googleマップ上などに店舗情報を表示できる「Googleビジネスプロフィール」は、旅ナカでの店探しに活用される傾向が高く、力を入れない手はない。特に最近では食の多様性が顕著になっていることから、ベジタリアンやヴィーガン、ハラール、グルテンフリーなどを意識した情報発信を行うことが差別化につながるという。「都内の飲食店であれば、例えば『東京 レストラン ベジタリアン』などでキーワード検索した時にGoogleで上位表示されることがとても大切。しかし、せっかくベジタリアンやハラールなどに対応していても、Googleビジネスプロフィールにその情報を掲載していなければ、Google上で表示されず選択肢にすら入りません」と、村山氏はアドバイスする。

そのほか、InstagramやYouTube、TikTokなどのSNSも、訪日客が日本の飲食店の情報収集に活用しているツールだ。SNS経由の分かりやすい発信や生の情報は集客につながりやすいので、ぜひ運用したい。外国人が日本の旅行や食を紹介するアカウント(チャンネル)も複数あり、訪日客が足を運ぶきっかけになっている。「例えば、クリス・ブロードというイギリス人インフルエンサーのYouTubeチャンネル『Abroad in Japan』には約300万人の登録者がいて、地方の小さな店を紹介する5年以上前の動画が未だに訪日客を呼び続けるなど、強力なコンテンツになっています」(村山氏)。飲食店が海外のインフルエンサーにPRを依頼することも可能だが、高い集客効果を得るには視聴者と店のターゲット層が合致するかどうかをよく検討することが大切だ。


「店頭販促」や「日本ならではのメニュー」

冒頭に触れたように、最近は事前予約や下調べをせずに訪日する外国人も増えていることから、「店頭販促」はフリー客の呼び込みにこれまで以上に重要になっている。村山氏も「Wi-Fiが使える、カード決済できる、外国語メニューを用意しているなどの情報を店頭に掲示するだけで安心材料になり、入店のハードルは大きく下がります」と推奨。店頭にトリップアドバイザーのマークを提示したり、写真付きのメニューブックを配置するなどの工夫も入店の後押しになる。

海外で人気の高いメニューを売りにすることも大切だ。「日本の和牛は非常に人気が高く、海外でも『WAGYU』として定着しているので、こういったワードを店頭に記載するだけでも外国人にとっては引きになります」と村山氏。ほかにもラーメンや寿司、天ぷら、ジャパニーズウイスキーなどは、海外での人気や認知度が高く、「本場・日本に来たからこそ」というブランド力や希少性に価値を感じてもらいやすいので、積極的にアピールしたい。

集客のカギ!「ネット戦略」「地域連携」「店頭アピール」

前述のように、2024年のインバウンドによる訪日客は年間3,000万人を超え、過去最高だったコロナ禍前の2019年の記録を更新した。政府は2030年には6,000万人に達することを目標に、国際線を増便するなど、さまざまな取り組みを行っている。「全国の各自治体も予算をかけてインバウンド誘客促進に注力しています。インバウンドと無関係だと思っていた地域や小さな飲食店にも、訪日客が来る可能性も高まるでしょう」と村山氏は推測する。特に2025年大阪万博の開催期間は6カ月と長く、さらなるインバウンドの起爆剤になると期待されている。

来たるべきインバウンドの本格化に向けて、飲食店ができる集客強化の対策として村上氏が挙げたのが、
①情報発信の足元を固める
②地域ネットワークの活用
③店頭アピールの強化

の3つだ。「①情報発信の足元を固めること」とは、具体的に、Googleビジネスプロフィールを活用して、Googleマップ上で自分の店が適切なキーワードで検索して表示されるようにしたり、トリップアドバイザーで高い評価を獲得できるように多言語メニューやダイバーシティ対応を充実させること。

「②地域ネットワークの活用」は、観光案内所やホテルと連携して、訪日客を紹介してもらえるような体制づくりのこと。「単独で頑張るだけでなく、地域のネットワークを最大限活用して集客につなげましょう」(村山氏)。

その上で、通りかかった外国人に選んでもらえるように「③店頭アピールの強化」をすることで、旅マエ、旅ナカの両面で選ばれる店になる確率を高めることができる。こうした地道な一つ一つの積み重ねが大事だ。

インターネット上の情報発信という空中戦、店頭販促での接近戦、そして地域ネットワークの構築により、インバウンド対策を万全にしてこれからの訪日客に備えよう。そして、前半で紹介した外国人が求めている事や食習慣を接客やサービスに生かすことが、「外国人が知人や友人に紹介したい日本の飲食店」になるための第1歩と言えるだろう。

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