目次
・「表現力採用」で、“商品の魅力を伝える力”を評価
・元社員やアルバイトとつながる「バーチャル社員制度」を導入
・女性が働きやすい環境づくりを強化して、採用・定着につなげる
多様な制度と長く働ける雰囲気づくりで、高い女性比率をキープ
人手不足に悩む飲食店が多い中、人材採用や定着率アップに成功している事例を「リファラル採用編」「女性採用編」「短期採用編」の3つ紹介。
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2回目となる女性採用編では、女性の採用・定着に成果を上げている株式会社スープストックトーキョーの取り組みを取り上げる。将来的に結婚や出産、育児などさまざまなライフステージの変化の中で、キャリアを積み重ねて女性が生き生きと働ける環境づくりや、元社員や元アルバイトスタッフとゆるくつながることで再雇用の可能性を高める「バーチャル社員制度」というユニークな取り組みも紹介する。
「表現力採用」の導入で、飲食業に必要な“商品の魅力を伝える力”を評価
首都圏を中心に北海道から九州まで全国64店舗を展開する、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」などを運営する、株式会社スープストックトーキョー。正社員は280人のほか、パートナーと呼ばれるアルバイトスタッフが約1,400人所属している。男女比は正社員が4:6、パートナーが1:9といずれも女性の割合が高い。採用活動は、ホームページ、店頭での告知、Webの求人媒体をメインに活用しており、近年ではInstagramやFacebook、Twitterでも求人情報を発信。2023年4月には新卒社員6人が入社予定だ。
人材採用・育成を強化し始めたのは2016年頃。「2016年2月、親会社である株式会社スマイルズから分社化したことを機に、“人”に特化した取り組みを打ち出しました。『スープストックトーキョー』は、それまで商品や店の雰囲気・デザイン性について評価されることが多かったのですが、そこで働く人の個性や魅力をお客様にあまり伝えられていませんでした。そこで、店で働く人に重きを置くとともに、メンバーが生き生きと働ける環境づくりに着手しました」と、人材開発部部長の江澤身和(みわ)氏は振り返る。
その一環として、2016年から正社員採用で実施しているのが「表現力採用」だ。これは、最終面接(約1時間)の最初の10~20分で“自分の好きなもの”をテーマに自由にプレゼンテーションを行ってもらうというもの。人材採用において表現力やコミュニケーション力を大切にしたいという狙いがある。
「商品の魅力をお客様にしっかり伝えられる人を採用したいという狙いから導入しました。テーマは、歌やダンス、好きなアイドル、野球チームなど、人によってさまざま。場所も応募者が決められます。とかく面接は堅い雰囲気になりがちで、実際に店で接客をする際の姿が見えにくいもの。しかし、自分の好きなものを語ってもらうと、自然とその人の人間性や人柄、飲食業への適性を見ることができるというメリットがあります」(江澤氏)。
一方で、アルバイト採用では「表現力採用」は行っていないが、志望動機や条件面よりも、会社の理念・行動指針にどれだけ共感できているかを重視して面接を行うことで定着率を高めることに成功している。
退職した社員やアルバイトスタッフとゆるくつながる「バーチャル社員制度」を導入
同様に、“人”にフォーカスした取り組みの一つとして導入された制度の一つが、2017年から開始した「バーチャル社員制度」だ。これは、退職する社員やアルバイトスタッフに、「バーチャル社員証」を発行(希望制)し、退職後もゆるく会社とつながり続けてもらうというもの。「バーチャル社員証」を持っていると、客として「スープストックトーキョー」を利用する際に会計が10%オフになる(同伴者も同じサービスが受けられる)ほか、物販の割引、社内イベントや試食会への招待などさまざまな特典が受けられる。一方で会社側としては再雇用の可能性を高めたり、マーケティング調査などに協力してもらう狙いがある。ヒントにしたのは、エストニア共和国にある「バーチャル国民制度(※)」だという。
※正式名称は「e-residency制度」。エストニア共和国に居住していない外国人でも、インターネット上でエストニアの国民として電子登録され、法人の設立などができるようになる。
「もともと当社では、社員が退職者と個々でつながっているケースが多かったのですが、そのネットワークをビジネスに生かしたい、というのが出発点でした」と江澤氏は背景を語る。
現在、バーチャル社員は約1,400人で、「特にアルバイトスタッフの方は、結婚や出産などで辞めることもありますが、育児などがひと段落して戻ってくるケースも少なくありません。退職した後もつながり続けることで再雇用の可能性を高められると考えています」と江澤氏。
女性が働きやすい環境づくりを強化して、採用・定着につなげる
そのほか、育児や介護、自己研鑽など個人の事情やライフスタイルに合わせて5段階の勤務時間を申請できる「セレクト勤務制度」、副業を可能とする「ピボットワーク制度」など多様な働き方の開拓を進めている。また、育児休暇から戻る社員には数カ月前に「ウェルカムバック研修」を実施して、復帰前の不安や疑問などを取り除いている。
飲食企業が「女性が働きやすい・働きたいと思える企業」になるための重要なポイントは、「雰囲気づくり」だと江澤氏。「女性は出産、育児などライフステージが変わることで『仕事で迷惑を掛けてしまうかも』と思いがちです。そのせいでキャリアに対しても前のめりになれず、一歩を踏み出せない感覚を持つ人も少なくありません。会社や上司が『出産や育児による休暇は迷惑ではない』『安心してキャリアを積んで、長く働ける』といったメッセージを伝え、そのための雰囲気や仕組みづくりをすることが大切だと思います」(江澤氏)。
今後はリファラル採用にも注力するべく、現在の社員の満足度ややりがいをさらに高める施策を実行していく予定だ。
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