更新日:2024.9.17
台湾でも韓国料理がブーム。タロイモドリンクが日本でも流行る?
インバウンド需要が回復し、今後も多くの外国人が日本を訪れることが予想される。同じように、外食業界でも海外からトレンドが入ってくることが多いが、台湾は日本への影響力が強い国の一つだ。そこで、台湾在住のライター・河浦美絵子氏に「現地で流行している料理やドリンク、食材、飲食店」のほか、「日本で流行しそうなもの」「訪日外国人のニーズ」なども聞いた。
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目次
・レッドキヌアなどスーパーフードが流行
・日本同様、映える韓国料理の店が人気に
・日本食ではラーメン、カレーが人気
・よもぎ餅入理のドリンクがブームに
・隠れ家バーやWithペットの店も盛況
・タロイモドリンクが日本でもブームに!?
・日本に来る台湾人は「日本人が行く店」がお好き!?
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――台湾でここ数年、流行している食材はありますか?
コロナ禍を背景に台湾でも健康志向が強まり、その傾向は現在も続いています。韓国のキムチが体に良い発酵食品ということで人気を集め、キャベツなどの野菜を甘酢に漬けた台湾式の泡菜(パオツァイ)も再評価されるように。また、酸菜(スァンツァイ)という乳酸発酵した漬物と白身魚を煮込んだ四川料理、酸菜魚(スァンツァイユィ)の専門店が流行中。健康面だけでなくスタイリッシュな内装も受け、特に若者からの支持が高く、行列ができています。
栄養価の高いスーパーフードも近年のトレンド。特に台湾東部の原住民の方々が栽培しているレッドキヌアは見た目が鮮やかで、通常のキヌアよりも栄養価が高いと言われており、ここ数年でレッドキヌアを使った商品を多く見かけるようになりました。白米と一緒に炊いたり、クッキーに混ぜたりして食されています。
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また、ウコンや黒ニンニクも健康増進を目的に摂取する人が増加しています。ウコンは台湾で生産されていて、粉末状のものをそのままスプーンで口に入れてお湯で飲んだり、野菜炒めに隠し味のように入れたり。黒ニンニクは、以前は日本からの輸入品が目立っていましたが、最近は台湾産が増えています。
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――では、どういったジャンルのメニューが流行しているのでしょうか?
台湾でもK-POPや韓国ドラマの人気が非常に高く、その影響で韓国料理がここ数年流行しています。韓国風フライドチキンや家庭料理、鍋料理、焼肉などジャンルはさまざまで、若者だけでなく中高年まで客層が広がっています。特に人気を集めているのは、台北の繁華街・西門にある韓国料理店「初瓦(チョア)」のように、ハングルのネオン看板をあしらったポップなインテリアの店。韓国に来たかのような雰囲気と、現地の流行を取り入れた斬新なメニューが受けています。
一方で、健身餐(ジエンシェンツァン)と呼ばれる“フィットネス食”も流行。鶏肉や野菜を使った低カロリー&低脂肪で栄養バランスが取れた食事を指しますが、栄養士やフィットネストレーナーが監修したメニューを提供する専門店が増えています。主な客層は体型管理や健康を意識している女性。台湾は三食とも外食という人が多く、デリバリーやテイクアウトがしやすいという点も広まった理由です。
――日本食ではどんなものが人気でしょうか?
台湾の日本食は、本格的な日本料理と台湾式にアレンジされた料理の大きく2種類に分かれます。本格的な日本料理はミシュラン掲載店に人気が集まり、予約が取れないほど。天ぷらの「牡丹」やお寿司の「吉兆割烹壽司 Kitcho」などがその例です。
ラーメンやカレーといった庶民派グルメも人気が高く、日本人が経営する店も多く存在。横浜家系ラーメンの「特濃屋」や、東京のライブハウスの支店である「台北月見ル君想フ」のカレーなど、現地そのままの味が台湾の人たちに支持されています。
一方、台北・西門町近くにある現地の人が集まる「三味食堂(サンウェイシータン)」は、台湾人が経営する和食店。握りこぶし大の巨大サーモン寿司を筆頭に、ボリューム重視なのが特徴ですね。
――ドリンクも日本ではあまり見かけないものがはやっているそうですね。
台湾は高温多湿の気候からドリンクの消費が盛んで、ドリンクスタンドが街のいたるところにあります。そのため生き残るには他店との差別化が必須で、近年は、「顏太煮奶茶(イェン タイ ジュ ナイ チャー)」などの茶葉に特化したミルクティーのドリンクスタンドが人気です。もともと紅茶の粉を利用する店も多かったのですが、国内外の良質な茶葉を使い、店頭の看板や茶葉のディスプレイでアピールしています。
全国展開するドリンクスタンド「一沐日(イームーリー)」が2023年に販売を開始した、小さなよもぎ餅が入ったミルクティー「逮丸奶茶(ダイワンナイチャー)」も流行。「草仔粿(ツァオツァイクー)」という台湾の伝統的な草餅をタピオカ状にしています。モチモチした食感と爽やかな風味、伝統をアレンジして継承するという物語性、レトロなパッケージデザインがヒットにつながりました。
また、健康志向はドリンクにも。台湾では中医(ヂョンイー)と言われる漢方医学が根付いていますが、白キクラゲやクコの実などの漢方食材を取り入れたドリンクが人気を博しています。コンビニやスーパーに白キクラゲ入りのドリンクが並ぶほか、漢方ドリンクを提供するおしゃれなカフェもオープンしています。
――では、人気を集めている飲食店にはどんな傾向がありますか?
「臺虎精釀(タイフ・ジンニャン)」や「金色三麥(チンスーサンマイ)」といったクラフトビール企業が運営する飲食店が人気を集めています。台湾は長らく国営企業が酒類の製造・販売を独占しており、ビールの銘柄が限られていました。それが2002年に民間企業に開放され、若い世代が事業を立ち上げたことにより、クラフトビール=おしゃれというイメージが定着。臺虎精釀が台北・大安区で運営する「啜飲室 大安(ツオインス・ダアン)」も洗練された雰囲気のタップルームで、20~40代や在台外国人の心をつかんでいます。
同様に、隠れ家のような斬新な造りのバーも流行中。台北・大安区の「墨子 Mozi bar(モーズバー)」は入口が理髪店になっており、一見するとバーとは思えませんが、奥にある本棚の隠し扉を開けるとバーカウンターが広がっています。台湾の若者はあまり飲酒を好まないと言われており、お酒自体が目的というよりも雰囲気や特別感を楽しむために訪れているようです。
また、ペットも重要なキーワード。ペットを飼う人が年々増加し、2022年にはペットの登録数がその年の新生児の数を上回ったと報道されています。「毛がある子ども」という意味で「毛小孩(マオシャオハイ)」と呼ばれ、人間の子ども同様に家族の一員というふうに意識が変化しています。そのためペットを連れて行けるレストランの需要が高まり、犬・猫用のメニューやフォトスポットを用意する店も目立ち始めています。
これらのトレンドはSNSを通じて広まっていますが、台湾では飲食店を探す際はInstagramやTikTok、Googleマップに加えて、年代を問わずにFacebookが利用されています。飲食店もFacebookで積極的に情報発信をし、重要な宣伝ツールになっています。そのほか、グルメYouTuberやブロガー、テレビのグルメ番組といったメディアの影響も大きいです。
――今後、日本で流行しそうな料理やドリンクはありますか?
料理は「肉夾饃(ロウジャーモー)」。陝西省の名物で、サクサクしたパイのような生地のバンズに肉などの具を挟んだものなのですが、台湾でも全国的に流行し始めています。塊肉やひき肉など具材や味はさまざまで、1個300円弱。外はパリッ、中はふんわりとしたほのかに甘い生地がとてもおいしく、夜市や街中の屋台で気軽に買い食いできるのも魅力です。
ドリンクでは、タロイモを使ったものに注目しています。タロイモはサトイモ科の植物で、薄い紫色とねっとりとした食感、ほのかな甘みが特徴。台湾ではかき氷や豆花(豆乳プリン)のトッピングなどに使われるメジャーな食材で、ペーストとミルクを合わせてドリンクにしたり、小さなタロイモ団子をドリンクに入れたりして親しまれています。栗やサツマイモのような風味と食感は、日本でも受け入れられやすいのではないでしょうか。
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――最後に、日本を訪れる台湾人のニーズについて教えてください。
台湾でも日本のブランド牛が知られていて、日本は牛肉がおいしいというイメージが強く、「日本で焼肉を食べたい」という方がとても多いです。それからやはり、「観光客向けではない、現地の人が行く居酒屋や焼き鳥屋さんに行ってみたい」という声も大きいのですが、そのような場所はメニューなどがインバウンド対応されておらず、注文するにもハードルが高いと二の足を踏んでしまっているようです。また、台湾ではドリンクスタンドなどほかの場所で購入した飲みものを持ち込むことが普通なのですが、日本でも持ち込んでしまい怒られた、なんていう失敗談を聞くことも。そういった文化の違いもありますね。日本の飲食店には、英語や中国語での説明などをしていただくと、食文化の違いによるトラブルも防げるかもしれません。
取材協力/海外書き人クラブ
https://www.kaigaikakibito.com/
写真提供/河浦美絵子
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