「千葉・南房総で楽しむオーベルジュディナー」開催

日本におけるオーベルジュの魅力を発信するとともにその発展を目指して、6月5日、日本を代表するシェフによるディナーイベントが、千葉県館山のオーベルジュ「オーパヴィラージュ」で開催された。

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一流シェフによる食の響宴で、日本のオーベルジュの未来を拓く

日本オーベルジュ協会主催「勝又シェフ&三輪シェフが創る語る。千葉・南房総で楽しむ オーベルジュディナー」開催

木造りの温かさが漂う、瀟洒な佇まいの個室。参加者は複数の個室に分かれてゆっくりとディナーを楽しんだ

南房総の自然と食を満喫し、
オーベルジュの魅力を堪能

日本におけるオーベルジュ(地方や郊外にある、宿泊施設を備えたレストラン)の魅力を発信するとともに、その発展を目指して、6月5日、日本を代表するシェフによるディナーイベントが、千葉県館山市のオーベルジュ「オーパヴィラージュ」で開催された。

主催は、設立7年目を迎えた日本オーベルジュ協会。参加費はディナーのみ15000円、宿泊と朝食込み25000円。料理の腕をふるったのは、同協会の理事長で、箱根(神奈川県)のオーベルジュ「オー・ミラドー」の勝又 登オーナーシェフ、同副理事長で伊豆高原(静岡県)のオーベルジュ「ル・タン」の三輪良平シェフ、そして今回の会場である「オーパヴィラージュ」の島田孝之シェフの3人だ。当日は、各オーベルジュのファンや常連客、ぐるなびからの告知メールなどで開催を知った人々、そして協会に加盟している各地のオーベルジュのオーナーやシェフら計40人余りが参加し、南房総の豊かな自然と、「オーパヴィラージュ」が醸し出すリゾートの空気、そして地元の食材と名シェフのコラボレーションが生み出したフレンチのコースを堪能した。

オーベルジュの発祥はフランスで、日本における始まりは、勝又シェフが1986年にオープンした「オー・ミラドー」といわれる。現在は北海道から沖縄まで、全国に約300軒があり、それぞれのロケーションの自然とともに、地域の食材や郷土料理を提供して、日本の食文化の一翼を担っている。

また、日本オーベルジュ協会は、オーベルジュというカテゴリーを日本で啓蒙と普及、発展することを目指し、協力・協同する団体として2007年に発足。現在、国内の約40のオーベルジュが加盟し、情報の共有と交流、広報活動などを通じて、オーベルジュの認知の拡大と観光客の誘致、サービス向上などに努めている。今回の「オーベルジュディナー」は、2012年秋に開催された第1回「秋のワイン試飲会」に続く、2回目のイベント。日本におけるオーベルジュの存在と価値を知ってもらい、その魅力をアピールして、利用者の拡大を図ることを目的に企画されたものだ。

日が暮れ始めた17時過ぎに始まったディナーは、伊勢海老、南房総産の岩ガキ、地元漁港で水揚げされたメバル、富浦産の枇杷、各種地場野菜など、房総半島の食材をふんだんに取り入れた豪華な内容。食前酒でも、千葉県唯一のワイナリーの希少なワインが振る舞われた。また、デザートタイムでは、全員がそれまでの個室から潮風そよぐテラス席に移動し、ビュッフェ形式のプティフールとともになごやかに歓談。

「オーパヴィラージュ」のオーナー・梅津隆英氏の司会で始まった交流会では、3人のシェフが挨拶に立つとともに、各地から参加したオーベルジュのオーナーらも紹介され、オーベルジュの発展に向けた抱負を語り合った。

21時前に散会した後も会場のあちこちで交流の輪ができ、房総の自然のなかで繰り広げられた食の響宴の余韻が漂うなか、日本のオーベルジュの未来を展望したひとときとなった。

日本オーベルジュ協会

お問い合わせ(事務局)
TEL:03-3500-9774(平日 9:30~18:00)
メール:info@japan-auberge.org

会場となった「オーパヴィラージュ」のエントランス。房総半島のほぼ南端に建ち、ビーチまで約500メートル

当日のディナーメニュー(一部)

「生でも美味!トウモロコシ(味来)の旬の味を楽しむアペリティフ」(オーパヴィラージュ)
「地元漁港で水揚げされたメバルのポワレ夏野菜添え 爽やか緑のソースで」(三輪シェフ)
「鴨肉のゆっくりロースト 柑橘のソース カリフラワーのクスクス仕立てを添えて」(勝又シェフ)
「デセール ビュッフェスタイル」(オーパヴィラージュ)
勝又登シェフ。神奈川・箱根のオーベルジュ「オー・ミラドー」のオーナーシェフで、日本のオーベルジュのパイオニア
三輪良平シェフ。静岡・伊豆高原のオーベルジュ「ル・タン」のオーナーシェフで、自家農園での野菜栽培も手がける
島田孝之シェフ。千葉・館山のオーベルジュ「オーパヴィラージュ」のシェフ。地元にしか出回らない野菜も使い、ゲストをもてなす
参加者のリクエストに応じ、自身のプロフィールが載るメニューカードにサインをする、勝又シェフと三輪シェフ
ロビーには、この日のディナーで使われた食材をディスプレイ。糖度が高く、生で食べられることでも有名な、貴重なとうもろこし「味来(みらい)」をはじめ、野菜はすべて千葉産

Special Interview

「心を癒す自然と風土の魅力、食材と食文化を生み出す大地の力、オーベルジュにはそのすべてがあります」

日本におけるオーベルジュの現状、そして、オーベルジュの発展と将来性は?日本オーベルジュ協会の理事長でもある勝又シェフにイベント当日、これまでの歩みを含めて話を聞いた。

日本オーベルジュ協会
理事長 勝又 登 氏

オーベルジュ発祥の地・フランスでは、名店といわれるレストランは、パリの中心部より、郊外や地方に広がっているといわれています。私がフランスで師事したシェフのなかには、数百年も前に建てられた地方の館やシャトーをオーベルジュに改装して、その土地の食材で作る郷土料理を現代風にアレンジして提供し、高い評価を得ている例が少なくありません。アルザス(北東部)にはアルザスの、ブルゴーニュ(東部)にはブルゴーニュの自然があり、食材があり、料理やワインがあります。そうした地方に足を運び、豊かな自然の中で、帰りの時間を気にせずに、その土地の食とワインを楽しむ習慣が、フランスには根づいているのですね。そんな光景を目の当たりにし、私は「いつか日本でもオーベルジュをやりたい!」、そう強く思って帰国したのです。

念願がかなったのは1986年。私のオーベルジュ「オー・ミラドー」を神奈川の箱根にオープンしました。以来、各界の第一線で活躍する方々がたくさん訪れてくださり、都会の喧噪をしばし忘れてスポーツやレジャーに興じるとともに、私が作るこの土地ならではのフレンチを堪能され、心身ともにリフレッシュされています。

それから20数年。今、私は、オーベルジュが現代の日本人にますます魅力ある存在になってきていることを実感しています。都市が成熟すればするほど、人々は地方の自然や風土に癒しを求めます。都会での忙しい生活に慣らされるほど、田舎でのゆっくりとした時間を必要とするのです。多くの日本人にはオーベルジュで過ごす時間が必要であり、それを欲してもいるのだと思います。

さらに旅の在り方として、名所旧跡を巡るだけでなく、地方の何気ない景色を眺め、その土地の食を楽しむスタイルが定着してきていることも、オーベルジュの価値を高めているといえるでしょう。とりわけ「食を楽しむ旅」にとって、オーベルジュは最適です。例えば、少量しか採れないような地元の食材は、大手のホテルなどでは扱いづらいため、小規模なオーベルジュにしか出回らないことが多いからです。その土地に行かなければ食べられない食材や料理がオーベルジュにはあります。また、だからこそ、オーベルジュの発展は地域の活性化に貢献できるはずなのです。

日本には今、300軒ものオーベルジュがあるといわれています。そのなかには、フレンチだけでなく、イタリアンや中華、和食を提供するところもあります。考えてみれば、昔からある温泉旅館などは、それこそ「和のオーベルジュ」といえるでしょう。高級感のある施設から、カジュアルなタイプまで、オーベルジュの幅も広がっています。

心を癒す自然と風土、食材と食文化を育む大地の力、すべてがオーベルジュにはあります。オーナーやシェフがその力を引き出し、お客様をもてなすこと、また、若いシェフの方々がオーベルジュの存在を知り、進出することで、利用者の裾野はさらに広がっていくはずです。

そんな魅力あるオーベルジュを、もっと多くの人に知ってもらいたい。そのために、これからも力を尽くしたいと思っています。