試食でうま味を実感する体験型サミットが好評
「一般社団法人 全日本・食学会」が主催し、様々な分野の料理人が共通のテーマで講演を行う「第1回全日本・食サミット」が、6月15日(日)に京都調理師専門学校(京都市)にて開催。全11講演に、のべ560名以上が来場した。
全日本・食学会は、2012年5月に発足。第一線で活躍する料理人がジャンル・地域・世代を超えて集結し、食の技術開発や地産地消などについて情報交換しながら、日本の食の発展と振興に努めている。その活動の一環として「全日本・食サミット」を企画した。株式会社ぐるなびも協賛企業として、同サミットをサポート。第1回のテーマは「だし」に設定され、会場には飲食店関係者や一般の参加者らが数多く訪れ、朝から熱気に包まれた。
開会式では、全日本・食学会理事長の門上武司氏が挨拶。「2013年は和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことから、『だし』をテーマに様々な分野の料理人が研究と交流を重ねてきました。今日はその集大成として、日本の料理の次のステージを考える契機にしたい」と期待を述べ、同学会で料理人団長を務める、料亭「菊乃井」の村田吉弘氏は「全日本・食学会は日本の食全体のスキルの向上と、社会貢献のために設立されました。積極的に情報交換をして、世の中が求める食を追求していきたい」と、決意を語った。
開会式後、各会場では様々なジャンルの料理人が講演。山根大助氏(「ポンテベッキオ」)は、「料理を美味しくする液体~イタリア料理的うまみの抽出~」と題し、「だしの段階では味を決めすぎず、他の食材とからめる調理過程で完成度を高める方法」を実演。来場者は、エンドウ豆のサヤと昆布水で煮だす「豆だし」を使った「うすいえんどうのストラーティ」の調理過程を見学し、試食も通して理解を深めた。
午後には「だし自慢」と題したシンポジウムに、フレンチの三國清三氏(「オテル・ドゥ・ミクニ」)、和食の村田氏、中国料理の脇屋友詞氏(「Wakiya 一笑美茶樓」)、農学博士の川崎寛也氏(味の素株式会社 イノベーション研究所)が登壇し、会場は立ち見も出る大盛況となった。
まず、三國氏が「野菜だし・手羽先・しめじ」を使っただしでフレンチの極意を語れば、脇屋氏は、老鶏や金華ハムで作るだしに玉露茶を加えるという発想から生まれた「玉露金華上湯」を実演。村田氏は鰹節の代わりにドライトマトや鶏節を用いた新だしで「大根の炊いたん(煮物)」などを披露した。さらに川崎氏が、科学的見地から各国のだしの特徴とうま味成分を分析。トークセッションに続いては質疑応答も行われ、会場は大いに沸いた。
そのほか、だしの歴史や起源、パンやうどん、ラーメンとだしの関係、カカオだしの可能性など、興味深いテーマで、各界の料理人が講演とデモンストレーションを実施(下記リスト参照)。全11講演を行った「全日本・食サミット」は、参加者に日本の食文化の可能性を感じさせるとともに、次回の開催にも期待を抱かせて幕を閉じた。
第1回全日本・食サミット講演一覧
●料理を美味しくする液体
~イタリア料理的うまみの抽出~
講師『ポンテベッキオ』山根大助氏●フランス料理から見るだしの話
講師『辻調理師専門学校』木下幸治氏●歴史を変える新だし
講師『一之船入』魏 禧之氏●だし自慢
講師『オテル・ドゥ・ミクニ』三國清三氏『菊乃井』村田吉弘氏『Wakiya一笑美茶樓』脇屋友詞氏『味の素株式会社 イノベーション研究所・農学博士』川崎寛也氏●うどんとだしの相性
講師『道頓堀 今井』今井 徹氏『釡たけうどん』木田武史氏●野菜とだしの関係
講師『弧柳』松尾慎太郎氏●おだしパン
講師『サマーシュ』西川功晃氏●だしのセパージュ
講師『木乃婦』髙橋拓児氏●400年の「だし文化」と大阪お好み焼き
講師『日本コナモン協会』熊谷真菜氏『やきやき三輪』柏原克己氏●世界のラーメン、日本のラーメンの今
講師『龍旗信』松原龍司氏●カカオだしの可能性
講師『パティシエ エス コヤマ』小山進氏『味の素株式会社 イノベーション研究所・農学博士』川崎寛也氏※開催順