「日本酒セミナー」と「日本酒条例サミットin京都」が開催

京都市と株式会社ぐるなびには2014年8月に「京都市・ぐるなび地域活性化包括連携協定」を締結し、その活動の1つとして「日本酒セミナー」と「日本酒条例サミットin京都」を開催した。

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事前申し込みをした飲食店関係者14名が参加。「日本酒乾杯条例」や京都の酒の特徴、PR法に至る知識を深めた

セミナーでは条例の内容や京都清酒の特徴などを紹介

国際文化観光都市である京都市と株式会社ぐるなびにより、食文化・伝統産業・観光産業振興などの分野での協力を目的に、2014年8月に締結された「京都市・ぐるなび地域活性化包括連携協定」。その締結後、初の取り組みとして、11月17日、「日本酒で『乾杯』~京都のお店で京都のお酒を~日本酒セミナー」(於京都市・ぐるなび大学京都会場)が開催された。

同セミナーは、2014年11月29日開催の「日本酒条例サミットin京都」に先立ち、記念イベントとして実施されたもので、14名の飲食店関係者が集まった。

冒頭では、京都市伝統産業課の東浦玲子氏が、2013年1月に京都市で施行された「日本酒乾杯条例」について解説。同条例は、正式には「京都市清酒の普及促進に関する条例」という名称で、清酒(日本酒)で乾杯する習慣を広めることを通じて、京都の伝統産業や日本文化への理解を深めることを目的に制定された。東浦氏は、11月現在同様の条例が全国約90の自治体で施行され、市民や観光客を対象にした関連イベントが地域活性化につながっていることを紹介。今後も京都市から全国に日本酒文化を発信したいと語った。

次に、同条例を提唱した伏見酒造組合を代表して、招德酒造株式会社 代表取締役の木村紫晃氏が「京都のお店で京都の酒を」をテーマに講演。京料理とともに育まれてきた伏見の日本酒の特徴を「淡麗でありながら、旨みがあり柔らかく洗練された女酒」と解説。「祝」「京の輝き」など京都産の酒用原料米の説明や生産農家との連携、若手社員が活躍する自社の取り組みなどを紹介して、参加者の関心を集めた。

講演中、参加者は招德酒造の「花洛シリーズ」から純米大吟醸、特別純米、純米酒、新作酒などを試飲。木村氏から各酒の酵母・米種、それに合う料理などの説明を聞き、伏見の酒の独特な香りや味わいを確かめた。

また、ぐるなび大学の講師も登壇し、ぐるなびが蓄積したデータに基づき、「一般消費者は飲食店でお店の人からどんな話が聞ければ、日本酒を注文したいと思うのか」をテーマにセミナーを実施。「観光都市である京都市内には1万1000軒以上もの飲食店があり、消費者は何よりも飲食店で日本酒の認知度を高め、興味を持つ機会が多い」と飲食店の担う役割の重要性に触れた後、日本酒で乾杯したくなる仕かけや具体的なアピールの方法を紹介。参加者が同条例の意義から京都の酒の特徴、飲み方の提案までを理解する有意義なイベントとなった。

参加者は招德酒造の「花洛シリーズ」を試飲。酵母や米種、合う料理の説明を聞き、酒の特徴をメモする姿も見られた
試飲で使われた招德酒造の日本酒。純米大吟醸、特別純米、新作酒などが提供された
招德酒造株式会社 代表取締役の木村紫晃氏。「京都の米で京都の酒を」を主題に自社の取り組みなどを紹介
京都市伝統産業課の東浦玲子氏。「ぐるなびとの締結で条例への認知を全国に広めたい」と今後の期待を語った
ぐるなび大学の講義では、「日本酒は飲食店側から飲む機会を創出すべき」と、具体的なおすすめ方法などが紹介された

「京都市清酒の普及の促進に関する条例」とは

2013年1月に京都市で施行。全国有数の清酒(日本酒)の産地である京都市が、全国の先頭を切って“清酒による乾杯”の習慣を広めることで、清酒の普及を通して日本人の和の暮らしを支えてきた様々な伝統産業のすばらしさを見つめ直し、日本文化の理解の促進に寄与することを目的にしている。

「日本酒条例サミット」に全国の蔵元や自治体が集結

参加者は入場料(2,800円)のみで全国の蔵元や酒造組合の約50のブースで試飲が可能。会場は大勢の人で賑わった

「日本酒セミナー」から約2週間後の2014年11月29日。全国から日本酒条例を制定した自治体や酒造組合が集まる「日本酒条例サミットin京都」が、京都市勧業館みやこめっせで開催。

当日は、午前の部と午後の部に合わせて4500人もの参加者が来場。会場には全国の蔵元や酒造組合によって約50のブースが設置され、参加者は入場時に配られるお猪口を手にして、各ブースで全国の日本酒を試飲。希少銘柄のブースには長蛇の列ができた。また、京都の伝統産業製品や京焼・清水焼の1点物のお猪口の販売のほか、京都の飲食店が酒に合う料理を販売するブースも人気を集めた。

一方、会場中央の特設ステージでは、午前中の第1部に「日本酒条例」を定めた自治体が取り組みを報告する「条例サミット」、午後の第2部には料理人や酒造関係者が日本酒と和食文化について語る「トークセッション」を実施。

第1部の幕開けとなる開会式典では、門川大作京都市長が挨拶。「京都市清酒の普及の促進に関する条例」に基づいて実施された、この2年間の様々なイベントや啓蒙活動とその成果について紹介し、「日本酒をはじめ、京都の伝統文化が次世代に伝わるよう、努力を重ねたい」と決意を述べた。

続いて行われた「条例サミット」では、主催の京都市のほか、佐賀県鹿島市の酒蔵ツーリズム、広島県東広島市の大規模な酒祭りなど、参加自治体が取り組みや条例の普及策、成果を発表した。その後、日本の伝統と文化を守り、地元産業を振興させる主旨の「共同宣言」を採択。さらに鏡開きを行い、登壇者と来場者が日本酒で乾杯し、会場は華やかな雰囲気に包まれた。

第2部の「トークセッション」では、門川市長をはじめ、村田吉弘氏(菊乃井 代表取締役)、谷口良孝氏(KYO-MONOIS COOLプロジェクト実行委員会会長)、佐々木晃氏(佐々木酒造株式会社代表取締役)、小川佐智江氏(2015 MISS SAKE)、増田 德兵衛氏(伏見酒造組合 理事長)らが登壇。「日本酒と和食文化」について語り合った。

増田氏は「外国では『日本酒は度数が高い』と誤解されがちだが、実際にすすめると香りや味わいが喜ばれる。あえて日本酒がまったく知られていない国を訪問するなど販売戦略を考え、シェアを伸ばしていきたい」と発言。それに対し村田氏が、「国ごとに味覚や嗅覚は違うので、初めて日本酒を試す外国人には、相手の国の文化や味覚に合った説明が必要。各国のソムリエに試飲してもらい、現地の感覚で助言をもらうのも手では」と提案。活発な意見交換に、来場者からは拍手が起こった。

会場は最後まで多くの人で賑わい、来場者のなかには外国人の姿も見られた。京都から世界へと発信される日本酒の可能性に期待を抱かせつつ、イベントは盛況のうちに幕を閉じた。

乾杯の音頭をとる門川大作京都市市長(右)。日本酒や伝統産業製品を軸にした地域振興への期待を語った
第2部のトークセッションでは、村田吉弘氏(菊乃井・右から2番目)らが「日本酒と和食文化」をテーマに意見交換
京都の飲食店が約20のブースを出店。京料理や京漬け物、オードブルや煮物・揚げ物など、日本酒に合う料理を販売して好評を得た
来場者は北海道から佐賀県まで全国の蔵元の酒をお猪口で試飲。製法や味わいについて質問をする姿も
「京焼・清水焼のお猪口で日本酒を楽しもう」というテーマで、「MYお猪口」の販売ブースを設置。様々な種類が飾られ、来場者の関心を集めた