東京オリンピック・パラリンピックを控え、飲食店のバリアフリーを考える
川崎市×ぐるなび 地域活性化連携協定セミナー「バリアフリーをビジネスチャンスに変える」を開催
まずはソフト面から対応を。サービスの底上げにも寄与
2015年5月19日、川崎市とぐるなびは「川崎市・株式会社ぐるなび地域活性化連携協定」を締結。以降、川崎市の地域活性を促進するべく、幅広い取り組みを実施してきた。
現在、川崎市では2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機に、障害者や高齢者など様々な人が生き生きと暮らすうえで、障壁となっている意識や社会環境のバリアを取り除く運動「かわさきパラムーブメント」を推進している。その一環として8月31日、飲食店経営者らに向けてバリアフリーに関する情報提供を行うべく、川崎市とぐるなびの共同セミナー「バリアフリーをビジネスチャンスに変える」が開催された。
最初に川崎市副市長の伊藤弘氏が挨拶。「多様性がごく自然に受け入れられるまちづくりを行い、オリンピック・パラリンピック以降のレガシー(遺産)として残せるように、施設などのハード、仕組みや意識のソフト、両方を充実させていきたい」と語った。
次に、バリアフリー研究所代表・木島英登氏が「心配りができる店づくりへ」をテーマに講演。「観光業界では、バリアフリーへの整備が新たなマーケット獲得につながるという意識が世界的に広がっている。例えば車椅子ユーザーであれば、外食や旅行は複数名で行くことが多く、飲食業界においても新たな常連の獲得、3世代利用の促進などにつながるだろう」と、バリアフリーに取り組むメリットを語った。また、自身の経験からバリアフリーのとらえ方について「人や状況によって求めるものは違う。日本では特別視や優遇がバリアフリーだと思っている人が多いが、本人が自由に使えたり選べたりすることが本来のバリアフリー。前向きな選択ができるように、店舗には店内の通路幅やテーブル席の有無をWebサイトに掲載するなど、店舗選択の判断材料を提供してほしい」と述べた。
その後、「対話からはじめるバリアフリー」をテーマにパネルディスカッションが行われた。木島氏のほか、NPO法人アクセシブル・ラボ代表理事の大塚訓平氏、株式会社すずや代表取締役の蟹江脩礼氏、川崎市市民文化局オリンピック・パラリンピック推進室室長の原隆氏が登壇。大塚氏が運営するNPO法人アクセシブル・ラボは、「みんなが笑顔で楽しく外出できる社会の実現」を目指して、障害者が実際に利用する立場に立った情報を発信。今回、「かわさきパラムーブメント」の一環で、アクセシブル・ラボがぐるなびの加盟店20店舗において、店内の段差の有無、通路幅、多目的トイレの有無などを取材。パネルディスカッションでは、その結果の一部が報告された。「ハード面をすぐ改善するのは難しいが、情報開示やスタッフの声かけなど“心のバリアフリー”で、店舗ができることは多い」と大塚氏。川崎市内などで居酒屋を展開する蟹江氏は、「声がけならスタッフ育成を通じてすぐに行える。店に帰ったらスタッフに伝え、行動に移したい」と述べた。木島氏は「困っている人に対して優しい店舗が、障害者にも優しい店舗といえるのでは」と言及。原氏は「まずは一歩踏み出して、声をかけるところからバリアフリーが進むのではないか」と締めくくった。
川崎市とぐるなびは今後も「パラムーブメント」の推進に努めていく。