サバ缶への注目で、魚食文化のよさを再認識するきっかけに
優れた栄養価も選定理由。準大賞は「しびれ料理」に
2018年12月6日、第5回「今年の一皿」の記者発表会が都内で開催された(主催 株式会社ぐるなび総研)。「今年の一皿」とは、その年の世相を反映し、象徴する食材や料理などを、優れた日本の食文化として保護・継承することを目的に、2014年から毎年12月に発表しているもの。
選考はまず、ぐるなびが持つビッグデータから検索数などの一定条件を満たしたワードを抽出し、ぐるなび会員へのアンケートやメディア関係者による審査を経て、ノミネートワード(今回は4つ)を選定。そのなかから「①その年に流行、または話題になったこと」「②その年の社会の動きと関係が深く、世相を反映していること」「③食文化の記録として後世に受け継ぐ価値があること」という条件を満たすことを確認し、「今年の一皿」実行委員会が承認・決定する。
開催に際して登壇した、株式会社ぐるなび総研 代表取締役社長の滝久雄は、「過去4回で選ばれた『今年の一皿』が、食品や食材、生産地などの活性化につながっていると聞き、大変うれしい。今後も地方創生の一助になることを期待している」と述べた。
そして、4つのノミネートワードのなかから、2018年「今年の一皿」が「鯖(さば)」に決定したことが発表された。選定理由は、相次ぐ災害で非常食を備蓄することの重要性が注目を集め、魚の下処理が不要なため利便性が高いうえに、EPAやDHAといった必須脂肪酸を多く含み健康効果も期待できることから、サバ缶の価値が広く認知されたこと。また、日本各地に約20種類のブランドサバがあり、各地でサバを活用した町おこしが盛んになるなど、魚食のすばらしさを見直すきっかけをつくったことが評価された。そして準大賞には、中国原産の花椒(ホアジャオ)を使った麻婆豆腐や担々麺などの「しびれ料理」が選出された。
「鯖」関連の代表者として登壇した一般社団法人 大日本水産会会長の白須敏朗氏は、「サバは、日本で古くから食されてきた魚。漁獲量も伸びており、サステナブル(持続可能)な漁業の優等生ともいわれています。おいしくて、健康や美容にもよい、三拍子そろったサバは、日本の水産業復活の鍵になる存在です」と、喜びを語った。
続くトークセッションでは、国立研究開発法人 水産研究・教育機構 中央水産研究所 資源管理研究センター主任研究員の由上龍嗣氏、全日本さば連合会会長の小林崇亮氏、同会の広報・池田陽子氏、サバを食べて頭脳を鍛えた東大生として、TVなどでも活躍する河野玄斗氏が登壇。サバの優れた栄養価や持続可能な水産資源としての可能性などとともに、「今年の一皿」選出をきっかけにした魚食文化振興への期待も語られた。
白須 敏朗 氏
「いまやサバ缶の生産量は、ツナ缶を抜いてトップ。資源管理で漁獲量も安定しており、日本の魚食文化を見直すきっかけを作った救世主です。一皿といわず、何皿でも食べていただきたい」と語った
中山 正道 氏
「中国留学で四川料理の虜になり、麻辣連盟を発足し、情報を発信しています。受賞を励みに、今後も普及に努めたい」と意欲を語った
“日常のちょっとした贅沢”を求める人たちの間で人気に。連日長蛇の列ができる専門店も
レモンサワーブームを追い風に、皮ごと食べられるものもあり、注目が集まった
-
今回より「今年の一皿」のロゴが新設。漢字の「皿」をもとに、左右対称の形状で信頼性や公平性を表現。全体のフォルムは、トロフィーや演壇をイメージしている -
来賓の農林水産省の食料産業局長・新井ゆたか氏。「『今年の一皿』に選ばれた食材や料理は、今後、世界からも注目を集めるはず」と期待を語った