カナダ発 「豆腐」アレンジメニュー 前編

アジアはもとより、欧米でもヘルシーなタンパク源として注目を集めるようになった豆腐。カナダの首都・オタワで、様々な飲食店が提供している豆腐を使ったアレンジメニューを紹介する。

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Vol.143

日本をはじめ、アジア各国で古来より食されている「豆腐」は、欧米でもヘルシーなタンパク源として徐々に注目を集めるようになった。カナダでもここ数年、癖がなくアレンジのしやすい点や独特の風味が人気となり、様々なジャンルの料理で活用されるようになっている。
それらの中には、豆腐と長く親しんできて、ある意味では「先入観」のある日本人には思いも寄らないような、斬新な味付けやほかの食材との組み合わせも多く見られる。

前編では、様々な国の料理に豆腐が絶妙に融合しているメニューや、「これに豆腐を!?」と驚いてしまう意外な一品をリポートする。

厚揚げ豆腐とブロッコリーの炒め物。ひと口サイズに切った厚揚げと野菜を組み合わせた炒め物は、カナダでも定番の料理
茹でたアスパラガスを、豆腐とディル(セリ科のハーブ)で作ったソースにディップ。ソースの材料にも使えるなど、汎用性の高さも豆腐の特徴
豆腐をピューレ状にして生地に入れたマフィン。甘いマフィンだけではなく、トマトやハーブなどを使ったマフィンも登場している

ラザニアやチーズケーキで、豆腐がチーズと絶妙に融合

カナダの首都・オタワ市のオールドオタワイーストは、文教地区で住宅街も広がるエリア。ここに、1988年11月オープンしたベジタリアンレストランが、「ザ・グリーン・ドア・レストラン(The Green Door Restaurant)」だ。来店客がセルフで好きな料理を好きな量だけオーダーする量り売り形式で、料理はすべて100グラム当たり2,2ドル(約185円)で販売している(一部を除く)。

「豆腐とほうれん草のラザニア」。一見豆腐料理とは思えないが、パスタ生地の代わりに豆腐が使用されている

豆腐を使ったメニューは、創業当時から提供していたが、数年前からニーズの高まりを感じて種類を増やしてきた。「日によって多少変動はありますが、27種類の料理のうち、7~8品に豆腐を用いています」と、オーナーのジェニー・オング氏。

なかでも人気メニューの1つが、10年ほど前から提供している「豆腐とほうれん草のラザニア」。一般的にパスタを使うところを豆腐で代用。これにマッシュルームを加えて、トマトソースとチェダーチーズで仕上げる。パスタを使ったラザニアよりもあっさりした味わいが評判だ。

ほか、「厚揚げとブロッコリーの炒め物」は、ニンジンやパプリカなども入っており、野菜がたっぷり採れると好評。このほかにも、キャベツなど野菜との炒めものにはひと口サイズの厚揚げを用いることが多い。いわゆる「肉野菜炒め」で、肉の代わりに厚揚げを使い、味の主張が強くない厚揚げだからこそ、野菜そのものの味が引き立っている。

「ほうれん草と豆腐のスパナコピタ」(2ドル=約169円)もファンが多い。スパナコピタとはギリシャ料理で、いわゆるほうれん草とチーズのパイ包みだが、ここではフェタチーズの代わりに豆腐を加え、ほうれん草、ディル、パセリとともに包んでオーブンで焼く。サクサクとした食感と、豆腐ならではの柔らかい口あたりが絶妙。カウンターには手作りのマヨネーズや数種類のサラダ用ドレッシングも用意されていて、好きなものをつけて食べる人が多い。

さらに、デザートでも豆腐を使用。「チョコレートミントチーズケーキ」(4.5ドル=約380円)には、チーズの代わりに絹ごし豆腐が使われている。チョコレートも、チーズとではなく豆腐と合わせることであっさりとした味わいになるのが意外な発見だ。

客層は、子どもからシニアまで幅広く、3割はテイクアウトを利用。食事どきは広い店内が満席になる盛況ぶりだ。週に4~5回も通う常連客がいるため、いくつかの大人気メニューを除いて毎日日替わりで提供するようにしており、豆腐料理は定番中の定番として必ず数品はラインナップされている。イタリア料理やギリシャ料理、中華料理風のメニューとも相性がよい豆腐は、インターナショナルな食材になりつつあるのかもしれない。

「ほうれん草と豆腐のスパナコピタ」。豆腐をハーブなどと合わせて小麦粉で作った生地で包み、オーブンでサクッとした食感に焼き上げる
豆腐の「チョコレートミントチーズケーキ」。ピューレ状にした豆腐を生地に混ぜ込み、ミントを効かせ、しっとりと爽やかに仕上げた一品
The Green Door Restaurant(ザ・グリーン・ドア・レストラン)
198 Main St, Ottawa, ON K1S 1C6
http://www.thegreendoor.ca/

朝食やデザートにも。続々広がる豆腐メニュー

オタワ市内の最新トレンド発信地として賑わうウエストボロに、「ピュア・キッチン」がオープンしたのは2015年2月。ホットヨガスタジオの経営者が共同オーナーに名を連ね、ヨガや食、さらにはトータルライフスタイルまで提案する店だ。

朝食メニューの「スタンダード」。卵の代わりに豆腐を使用しスクランブルに。テンペのベーコンやポテトと合わせたボリューム満点の朝食プレート

健康的なライフスタイルを実現するうえで、一日の始まりに食べる食事は特に重要と考え、朝食メニューも提供している。その人気メニューの一つが、「スタンダード(Standard)」(12ドル=約1,013円)。卵の代わりに豆腐を使い、玉ねぎ、ニンニク、パプリカを混ぜ、ハーブとターメリックで味と色を付けた、スクランブルエッグならぬ「スクランブル豆腐」のほか、インドネシアの伝統食である大豆を発酵させた食品・テンペで作ったベーコン、ケールのフレッシュサラダ、ローズマリーとともに炒めたポテトに自家製ケチャップを添えている。「スクランブル豆腐」は、卵よりもあっさりしており、軽い口当たりで食べやすい。

また、このスクランブル豆腐と、キヌア、トマト、ベーコン風に仕上げたココナッツチップを、ベビーレタス、チコリなどと一緒に手に持って食べやすいようラップ(薄いパン生地)で巻いた「朝食ラップ(Breakfast Wrap)」(8ドル=約707円)も人気。自家製マヨネーズとピリ辛ソースが付き、あっさりとした豆腐スクランブルに絶妙なアクセントを加えている。

さらに、ほかのメニューにも豆腐は数多く使われている。例えば、レモングラスでマリネした豆腐とシイタケ、ワケギを包んで焼いた餃子「豆腐とマッシュルームのダンプリング」(11ドル=約928円)もその一つ。軽い食感が特徴で、チリパウダーの入ったたまり醤油につけて食べる。

そのほか、日替わりで作られるマフィン(各2.5ドル=約211円)でも、ピューレ状にした豆腐を生地に使用。マフィンは、「ラズベリー、バナナ、チョコレートチップ」などだけでなく、「トマト&ハーブ」など、より食事として食べられるメニューも用意している。

流行に敏感な若者や、カップル、ファミリーからシニアまで、客層は幅広い。卵や肉の代わりに使える豆腐。その可能性に世界が注目し始めている。

豆腐とシイタケ、ワケギなどを具にした餃子「豆腐とマッシュルームのダンプリング」。豚のひき肉で作った餃子よりもふわっと軽い舌触りで、いくらでも食べられそう。前菜やおつまみに人気の一品
オーナーのカイル・クルックシャンク氏。奥様のオリビア氏とともに、豆腐、テンペや旬の食材を使い、季節に合ったメニューを考案している
ピュア・キッチン(Pure Kitchen)
357 Richmond Rd, Ottawa, ON K2A 0E7
http://www.purekitchenottawa.com/

取材・文/バレンタ愛(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1カナダドル=84.4円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。