2024/09/04 コラボ企画

なぜ飲食店の物件選びは“オペレーション”を最優先すべきなのか

飲食店を出店する際に、店の命運を握るのが物件選び。「物件選びはオペレーションを最優先すべき」と語る飲食店オーナーの小松 優 氏に、これまで物件選びで経験した失敗や学びとともに、新規出店時に留意しておきたいポイントを聞いた。

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※スマイラー102号(2024年7月)より転載

失敗を重ねた飲食店オーナーが語る「物件選びのポイント」

大学在学中に開業し、卒業までに3店舗を展開。現在は4店舗を経営する株式会社GENROKUの代表取締役 小松 優 氏に、物件選びのこと、新規出店時に留意しておきたいことについて話を聞いた。

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飲食店の物件に強い不動産業者とのつながりが大事。プロに任せることでうまくいく

株式会社GENROKUの代表取締役・小松 優 氏

小松氏が初めてのお店を出店したのは2011年。なんと大学2回生のときのことだ。当時人気のスマートフォン機種の訪問販売でまとまった額を稼ぎ、開業資金にした。大学の専攻が経営学だったこともあり飲食店の家賃比率等を勉強。最初は低く見積もって売上100万円、家賃は売上の10%の10万円以内の条件で物件を探していった。ネットで条件検索し、気になる物件があれば不動産業者に連絡して内見に行くという、スタンダードな方法だ。

不動産業者というと、物件のことなら何でも知っているプロフェッショナルだと思いがちだが、実はそうとも限らないから注意が必要だと小松氏は指摘する。「不動産業者も、飲食店に関しては素人という人は少なくありません。大家さんに確認してもらうことも多くなり、そのやりとりだけで時間を取られてしまいます」。

確かに飲食店は吸排気や厨房の防水区画、電気、ガスなど、工事の可否や使える容量などについて、設備面で確認しなければならないことが多い。現状の設備で賄えなければ追加工事が必要になるが、それが分からないまま話が進んでしまうと後から想定外の時間と費用がかかってしまうことになりかねない。「私は施工をお願いする大工さんを決めていて、その人に不動産業者とのやりとりを任せています。もちろん事前にこちらのやりたいことをしっかり打ち合わせておき、それができる物件かどうか、プロに判断してもらっています」。

大工さんの仕事は増えるが、必ず仕事を依頼するという信頼関係があるので、喜んで対応してくれるという。不動産業者についてはどうか。

「飲食店の物件に強い不動産業者とつながることがめちゃくちゃ大事です。仮に不動産業者の知り合いがいたとしても、素人に頼んだら絶対にだめです。『プロに任せろ!』と言いたいですね」。

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重視するのはオペレーションのしやすさ。出店エリアの人口は少なくてもいい

物件探しをしていると、居抜きとスケルトンの物件が出てくる。それぞれメリットがあるが、小松氏は「自分は絶対にスケルトンを選ぶ」と言い切る。居抜き物件でことごとく失敗した自身の経験による話、と前置きした上で、「現状のレイアウトが自分にとってのベストとは限らないというのが自分の考えです。以前自分が居抜きで契約した物件の話ですが、キッチンと入り口側のボックス席2つを除いて、靴を脱いで上がるレイアウトでした。ところがトイレが奥にしかなく、入り口側に座ったお客様からは大変不評でした。契約したときは気にしなかったのですが、キッチンのオペレーションも悪く料理の提供が遅れてしまうなど、レイアウトが原因でサービスの低下につながってしまい、結局閉店してしまいました」。

スケルトンから作り込むと初期投資は大きくなるが、居抜きの場合でもいずれは設備投資が必要になる。それなら最初からオペレーションしやすい設計で作り込もう、という考えだ。

2024年7月でちょうど7周年を迎えた「串家七(くしやなな)」(愛知県碧南市)。木のぬくもりを感じる外装が特徴的

今営業している店舗はすべて、スケルトンから自分でレイアウトを考えたという。オペレーションしやすいかどうかが最重要ポイントだ。自分でレイアウトを描く自信がない人も多いのではないか、と尋ねると強いトーンで答えが返ってきた。「失敗してでも自分で考えてやってみるべき。これをやらないで業者に丸投げすると、店を作ってもらうことはできても自分の理想的なオペレーションにはなりません。何も考えないでお店を始めたらどうせ失敗するので、それはやめた方がいいですよ」。

出店エリアについては、人口は関係ないという。「人口が多いところは競合店も多い。人口が少なくても、郊外でも繁盛させることはできます」。

実際、最初のお店を出した愛知県の高浜市の人口は5万人にも満たないが、そのお店は10年以上経った今でも多くのお客様に愛される人気店だ。何が人気を支えているのだろうか。

「自分が一番お金をかけているのは、外食です」。

小松氏は外食に「投資」していると表現する。新規出店を考えるとき、ベンチマークしたお店には何度も足を運び、季節ごとにどのように変化させているのかを勉強する。そのお店の競合店や、似たような業態なのに繁盛していないお店にも行って“材料”をたくさん集め、資金と時間と人を天秤にかけてやるかやらないかを判断する。こうした行動は、既存店の進化にも反映されることだろう。

小松氏が2018年10月にオープンした「鶏肉専門焼肉7/8(ななはち)」(愛知県高浜市)

取材を通じて感じたことは、小松氏の「主体的に考える力」だ。自分で考えて実行してきたからこそ、失敗も糧にできる。新規出店に不安を抱えている読者の方には、ぜひ参考にしてほしい。

取材協力:株式会社GENROKU 代表取締役 小松 優 氏
愛知県高浜市沢渡町4-6-5
https://genroku.co.jp/

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