2013/07/09 特集

ふだんの備えが食中毒予防につながる 今日からできる!衛生管理(3ページ目)

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定期的な健康診断/病気の従業員の厨房業務禁止/所定外での行動ルール

3.定期的な健康診断

1人ひとりの健康チェックが安全を守る健康保菌者の早期発見には検便も必要

「従業員の健康も、飲食業における衛生管理の大事なポイント。体調不良を我慢して働くのは、本人は頑張っているつもりでも、食の安全性を損ねる行為です。結果、店に深刻なダメージを与えてしまうケースもあります」(安藤氏)。

まずは、職場の一人ひとりが自己チェックの意識を持つこと。①黄疸(おうだん)、②下痢、③腹痛、④発熱、⑤発熱を伴う喉の痛み、⑥やけどや切り傷など感染が疑われる外傷、⑦目・鼻・耳からの分泌液、⑧嘔吐・吐き気。働いている人には、少なくとも以上の8項目に該当していないことを毎日確認してもらい、不調があった場合にはすぐに報告してもらわなければならない。

「注意すべきは、発症していない健康保菌者。本人に自覚症状がなくても体内に赤痢やチフス、サルモネラ、O-157などを保有している場合もありえます。これらを早期に発見するためにも、定期的な検便は必須。少なくとも2か月に1回、夏場など食中毒の危険性が高い季節は、月1回ペースで実施したいところです」(安藤氏)。

4.病気に罹かかった従業員の厨房業務禁止

陽性者への対処法をあらかじめルールに定めておくこと!

自己チェックや健康診断で、何らかの病気が判明した従業員は、すみやかに厨房業務から外さないといけない。本人に自覚症状がある場合はもちろん、検便の結果で何らかの陽性者と判明した場合も同様だ。

「前述したように、保菌者であっても実際は発症しないというケースも存在します。このような場合は、体調をしっかり確かめたうえで、厨房からホールにポジションを変えるなどの対応策が必要です。そのうえで医師に相談して処置を決め、陰性の判定が下るまで検査を続けます。専門家のOKが出るまで、決して現場復帰させないこと。ホールに出てもらう際にも当然、管理者がいつも以上に手洗いを徹底させるのが条件です」(安藤氏)。

また、家族が病気に罹った場合にも要注意。例えば、小さな子供が家庭で嘔吐や下痢など食中毒が疑われる症状を見せたら、すぐ店にも報告させるなど、ルールを決めておきたい。

5.所定外でのタバコ、無駄話し、食事などの禁止

店舗内のゾーニング(作業区域)を厳守!ルールを守ってこそ事故を未然に防げる

冒頭の概論で「衛生管理で大切なのはヒト・食材・モノの動線を守ること」と述べた。例えば、従業員はどこから店に入り、どのエリアで働き、どこで休憩を取って、どう再入場するのか。また、食材はどのルートで持ち込まれて、どう使われ、どのように保管されるのか――。来店客に提供する食品が、汚染されたものと交わらないようにするは、それぞれの動きを把握し、「清潔なエリア」と「そうでないエリア」との区分けをしっかり維持しなければならない。

「キッチンの見えるお店に入ると、ホールの担当者が平然と厨房に入り、手伝いをしている光景を目にすることがあります。しかし、店舗の作業区域を明確にするのが衛生管理の基本。禁止事項を守ってこそ食中毒も防げます。まして、所定の場所以外で喫煙やお喋りに興じたり、厨房に食べ物を持ち込むなどは問題外。食品に直接触れる手や器具で髪・鼻・口・耳などに触れない、防護されていない食品の上でくしゃみや咳をしないなどは、言うまでもありません」(安藤氏)。

基本があっての具体論。食中毒予防に近道なし

ここまで、食中毒予防に欠かせない5つの行動指標を見てきた。あとは全従業員がこれらを理解し、店舗全体で共有できるかがポイントになる。

「公衆衛生の根本は、清潔なものと汚染されたものを厳密に区分けし、その境界を曖昧にしないことに尽きます。食材の管理や掃除などの具体論は、これを前提にして初めて意味を成すもの。食中毒には無限のパターンが考えられ、すべてのケーススタディをリストアップするのは不可能です。それよりも、食品を取り扱う際の原則をしっかり身に付け、そのうえで効果的な洗浄・消毒の手法、細菌を増殖させない防御法、注意すべき食材の取り扱い方などを徹底する方がより効果的です。基本を疎かにして、食の安全は確保できないことを忘れないでください」(安藤氏)。

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