2014/02/18 挑戦者たち

株式会社fun function 代表取締役 合掌 智宏氏

東京の日本橋・八重洲を中心に11店舗を展開する株式会社fun function。様々な食材が眠る地方の町に着目し、その地域名を店名にする"アンテナショップ居酒屋"で注目を集めている。成功の秘密に迫った。

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町名を看板に掲げた「ご当地酒場」で、地域の認知度アップに貢献したい

東京の日本橋・八重洲エリアを中心に、飲食店11店舗を展開する株式会社fun function。同社を率いる合掌智宏氏は、ある地域に特化した"アンテナショップ居酒屋"という独自の業態で、注目を集めている。様々な食材が眠る地方の町に着目し、そこの名を店名に冠するというコンセプトは大胆かつユニーク。その成功の秘密に迫った。

――飲食業界の門戸を叩いたのは、どのような経緯からですか?

25歳で飲食業界に入ったのですが、その前は、父が経営する電気の内装工事の会社で営業をしていました。その際、飲食店の工事を請け負うことが多く、単純に楽しそうだなと興味を持ち、ご縁のあった方が経営する福井の外食企業に入社しました。いずれ自分で商売を起こそうと思っていたので、「(参入障壁が低い)飲食業界は、独立がしやすそうだな」と思ったのもきっかけのひとつですね。

入社して1カ月で店長を任されましたが、飲食業のノウハウがまったくなかったために苦労しました。ただ、そのなかで店舗の立ち上げに携わり、東京に進出する際も店長を任され、「こんなに早いスピードでお店が出せるのか」と、おもしろみを感じました。

――2年半働き、6店舗の立ち上げに携わった後、独立されたと聞きました。

最初は具体的なビジョンがあったわけではなく、物件に合わせて業態も柔軟に考えるつもりでした。自己資金は200万円しかなかったのですが、そんな折、飲食業の出店サポートをする「店舗流通ネット」を知り、こちらを利用して出店することしました。

東京・八重洲に物件が決まり、商圏をリサーチして「これならいける!」と思い至ったのが「焼きとん」。ちょうど、大衆酒場が流行っていた頃だったので、その雰囲気や価格で競合店の上をいくサービスを提供しようと考えました。ただ、肉の仕入れのツテがなかったので、最初は大変でしたね。ただ、「食材でこんなに味が変わるものなのか。調理という技術ではどうにもならない部分があるんだな」という気づきと経験が、後の食材へのこだわりにつながっていったのかもしれません。結果としては初月から黒字となり、うまく軌道に乗せることができました。

1977年、福井県福井市出身。25歳の時に飲食店を経営する福井県の会社に入社。居酒屋の店長などを経て、東京に進出。多くの店の立ち上げを任される。27歳で独立・出店し、株式会社fun functionを設立。現在、東京都内に11店舗(2014年3月現在)を展開中。

――このときの経験が、その後の「ご当地酒場」出店につながったのですね

振り返ってみると、「ご当地酒場」という、まったくゼロの状態から生み出したオリジナル業態という意味でも、自分の中では転機でした。そもそも、北海道八雲町に転勤になった幼なじみが「店で使ってみれば?」と、地元の魚介類をたくさん送ってくれたのがはじまり。その質の高さに「なんだ、これは!」と本当に驚きました。しかも、こんなすばらしい食材が、まったく聞いたこともない八雲町という町で獲れるということが衝撃でしたね。そこで、「この地名を看板に掲げた店を出したら、おもしろいんじゃないか」と考えました。その後、物件を決めたうえで、八雲町の役場に電話をし、「アンテナショップ型の飲食店をやらせてもらいたい」と説明。実際に町に行ってプレゼンをさせてもらったのです。

――そのときの、八雲町役場の方たちの反応はいかがでしたか?

正直、「北海道八雲町という名前でお客さんは集まるの?」と、半信半疑でしたね。ですから、まずは「公認」というかたちにはこだわらず(※後に公認)、北海道八雲町の名前を使わせてもらうこと、そして、食材について協力をお願いしたいことに絞ってお話をしたところ、「町のPRになるのなら」と了承をいただきました。そこからはトントン拍子。様々な食材の生産者さんを紹介してもらうなど、いろいろな面でサポートしていただき、2009年に「北海道八雲町 三越前店」をオープンすることができました。

――町の名前を店名に冠することの利点を、どのように捉えていますか?

聞き慣れない地名を掲げることで、お客様に興味を持ってもらえることですね。実際、お客様が入店してまず聞くことは、「八雲町ってどこ?」。函館や小樽、根室などは誰もが知っている有名な土地だけに、期待値も上がる。でも、八雲町はほとんどの人が知らない。その状況で良質な食材を提供すると、「こんなにおいしい物がある町なのか!」と驚きや感動を与えることができます。そして、もうひとつは食材への安心感。食品偽装などが問題になっている昨今、食材に対する信頼は、最大のメリットではないでしょうか。

その一方で、店で何か問題が起きてしまった場合、町にも迷惑をかけてしまいます。「店が町や地域の生産者のプラスにこそなれ、マイナスになることはあってはならない」と、そこは肝に銘じて店舗運営をしています。

――ご当地酒場はその後、佐賀県三瀬村など次々と展開されていますね。

佐賀県三瀬村については、焼鳥店をやりたいと思い、日本中から30~40種の鶏を取り寄せて、試食を重ねているときに出会いました。ジューシーで適度な柔らかさがあり、まさに求めていた味だったのが、佐賀県三瀬村で生まれた「ふもと赤鶏」だったのです。そこで、北海道八雲町の経験を踏まえて「この鶏を使って町も食材もPRできる店を作ろう」と考えました。これが2012年に出した「佐賀県三瀬村ふもと赤鶏 田町本店」です。

同じく2012年に出店した「カキ酒場 北海道厚岸 日本橋本店」は、「北海道八雲町」のお客様から「うまい生ガキが食べたい」という声をたくさんいただき、探していたところ、厚岸の名が上がりました。仕入れてみると、本当においしい! そこで、このカキと地名を掲げた店をオープンしました。

「ご当地酒場」の大きな特徴は、お客様や仕入れ業者さんに喜んでいただけるだけでなく、町や生産者の方にも応援してもらい、喜んでいただけること。これは、私にとってもスタッフにとっても大きなやりがいになっています。

日本の食材は本当にすばらしいし、まだまだ可能性があるはず。今後も、知られざる産地と、そこの生産者さんたちに喜んでもらえる「ご当地酒場」を、展開していきたいですね。

100年続く店を目標に掲げ、そのために何をすべきかという考え方をスタッフに説くという合掌氏。成長する企業の勢いを感じる

――会社としての今後は、どのような展望をお持ちですか?

2010年オープンの「肴や 魚勝」、2012年に開いた「ご当地酒場青森県むつ下北半島 神田小川町店」は、いずれも社内の独立支援制度によって誕生した店舗です。私自身、独立に際しては苦労があったので、頑張っている社員の独立を何らかのかたちでサポートできればと思い、支援制度を立ち上げました。この制度ができたことで、「自分も独立を目指そう!」という意欲のあるスタッフが増えていると感じています。独立を目標にすると、そのためにはどうすればいいかを考えるようになり、さらに、経営者的視点で自分が働いている店を見ることができるようになります。そうすると、おのずと店の売上や成果も上がり、周囲のスタッフもそのやる気に引っ張られて、プラスの相乗効果が生まれるのです。今後は1年に1店舗、独立支援のかたちで店を増やしていきたいですね。そして、そんなスタッフたちと、100年続く店を作り続けていきたいです。

カキ酒場 北海道厚岸 日本橋本店(東京・日本橋)
http://r.gnavi.co.jp/b634007/
北海道厚岸町産のブランドカキを、一年中味わえる店として幅広い層を集客。「えもんカキ食べ比べセット」(1,039円)などでリピーターを獲得。
佐賀県三瀬村ふもと赤鶏 八重洲店(東京・東京駅)
http://r.gnavi.co.jp/1tp8jjj90000/
2013年11月オープン。佐賀県三瀬村で生まれたふもと赤鶏の焼鳥と新鮮な佐賀野菜を売りに、近隣に勤めるサラリーマンを中心に人気を博す。

Company Data

会社名
株式会社fun function

所在地
東京都中央区日本橋兜町11-12-601

Company History

2007年 「水道橋大衆酒場 合掌」オープン
2009年 「ご当地酒場 北海道八雲町 三越前店」など2店舗オープン
2010年 「肴也 魚勝」など2店舗オープン
2011年 「ご当地酒場 北海道八雲町 日本橋別館」オープン
2012年 「カキ酒場 北海道厚岸 日本橋本店」など3店舗オープン
2013年 「佐賀県三瀬村ふもと赤鶏 八重洲店」オープン
2014年 「カキ酒場 北海道厚岸 コレド室町店」など2店舗オープン予定