2014/04/15 挑戦者たち

株式会社ピーノコーポレーション 代表取締役 松原 博紀氏

富山湾で獲れた新鮮な魚を売りに、すし居酒屋などを展開。松原氏は故郷にこだわり、富山を拠点に東京、海外進出を目指す。地に足をつけて店舗網を広げてきた松原氏の思いには、まったくブレがなかった。

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富山の新鮮でおいしい魚をキーワードに、食を通じて全国に富山を発信したい

富山湾で獲れた新鮮な魚を売りに、すし居酒屋などを展開する株式会社ピーノコーポレーション。代表取締役の松原博紀氏は故郷にこだわり、富山を拠点に東京、さらに海外進出を目指す。地に足をつけ、富山の魚を核にした業態で店舗網を広げてきた松原氏。彼の飲食に対する思いには、まったくブレがなかった。

――どのような経緯で、飲食業界に入られたのですか。

高校卒業後、都会に憧れて大阪でホストの仕事に就きました。20代のオーナーは複数店を持つ辣腕経営者で、その仕事ぶりを見たり、アドバイスを受けて経営の本などを読むうちに、私の中で何かが変わりました。この人のような経営者になる、という目標が生まれたのです。21歳で帰郷すると、地元の企業が新規オープンする回転寿司店の店長を募集しており、これはチャンスだと応募しました。特に飲食業に興味があったわけではなく、店長になれば、マネジメントを勉強できると考えたからです。経験もないのに無謀ですよね。でも、熱意とやる気を評価して採用してくれ、オープン前に店長の業務や調理の知識、魚のさばき方や寿司の握り方など、充実した研修を受けさせてくれました。これが飲食業への第一歩で、ここで得た技術と経験は、その後も大いに役立っています。

――その店で働くうちに、飲食業にひかれていったのでしょうか。

いえ、お客様と接する楽しさは感じつつも、マネジメントに目が向いており、飲食業で独立するという気持ちは、まだありませんでした。そのおもしろさに目覚めたのは、回転寿司店の後に、地元のイタリアンレストランで働いていた弟に誘われて、その店に入ってからです。それまで知らなかった様々な調理法があるイタリア料理にのめりこみ、気になる店を食べ歩いて勉強しました。やがて、その店でも店長を任され、経営にも関わるようになった頃には、飲食業での独立という方向性は決まっていましたね。

1977年、富山県入善町出身。21歳で地元企業が経営する回転寿司店の店長に。その後、イタリアンレストラン勤務を経て、28歳で独立。漁師の友人と組んで、2009年から富山の魚にこだわった居酒屋を展開。FC展開のやきとん店も含め、4月には全12店舗となる。

――そして28歳の時、富山県黒部市に1号店をオープンされました。

その2年くらい前から独立を意識しており、よく遊びに出かけていて、人脈も多い黒部の飲食店街で見つけた物件が、背中を押してくれました。しかし、業態が決まっていたわけではありません。イタリアンが頭にあったものの、回転寿司店で身につけた寿司や魚をさばく技術も活かしたいし、周辺にはないタイプの店にしたい。悩んだ末に頭に浮かんだのが、当時、都会で流行っていたダイニングカフェでした。そして、女性をターゲットにした、創作料理を楽しめるおしゃれな店というコンセプトを決めました。

経営者になると決めてから、コツコツ貯金はしていましたが、それだけでは足りません。親族を集めて事業計画、返済計画などのプレゼンテーションを行い、協力をお願いしました。銀行から融資を受ける際の保証人を引き受けてくれたり、祖母2人も融資してくれるなど、親族の応援が力になりましたね。こうして出店したのが、「居酒屋カフェダイニング 花朝月夕」(※その後、移転して「居酒屋ダイニング 花朝月夕」にリニューアル)です。

――最初から繁盛したと聞いています。その要因をどうお考えですか。

黒部市には大企業の事業所などがあり、飲食店も多いのですが、20~30代の女性が行きたい店はなかったように思います。そこを狙ったことが成功の最大の要因でしょう。また、働く女性のライフスタイルを考え、ランチタイム、アフターファイブ、休日と、様々な時間のニーズを囲い込む戦略をとりました。デザートやノンアルコールカクテルなどをそろえたのもそのひとつです。狙い通り、常に地元のOLさんをはじめ女性客で席が埋まり、客単価も4500円と、周辺の店より高くなりました。3年後に広い物件に移転した後も、満席が続いています。

――その後、富山市に漁師直送の魚を売りにした店を出されたんですね。

友人の漁師から、水揚げしたばかりの新鮮な魚を提供する飲食店を開きたいが、ノウハウがないと相談を受けたことがきっかけでした。私自身、一度故郷を離れたことで、地元への思い入れが強くなり、一緒に富山の魚を売りにした店をやろうという話になったのです。当時、富山駅周辺は、ちょうど新しい飲食店が増えていた時期で、進出には絶妙のタイミングでした。それで出店場所を富山駅前に決めたのですが、人が多い都市部への初めての進出にワクワクしましたね。最初に出店した「地産食彩 越中舞華」は、新鮮な刺身と寿司をメインに、雰囲気も料理も「居酒屋以上、割烹未満」、客単価は5000円を目指しました。「花朝月夕」の成功で、満足してもらえれば、お客様はお金を使ってくださることがわかっていたからです。

この戦略が受けて、連日満席となり、物件を持っている方や不動産屋さんから、出店してほしいというお話が来るようになりました。「富山すし居酒屋花より魚」も、こうしてオープンした店です。頭の中には常に業態のアイデアがあるので、この時は前々からやりたかった、「すし居酒屋」にすぐ決まりました。ただし、キーワードの「漁師直送の富山の魚」という点は、ブレないようにしています。

――漁師直送の魚を売りにした店の、メリットを教えてください。

魚種を指定するのではなく、箱買いなので、雑魚も含めて様々な魚種が入っていて、珍しい魚も多い。漁師との共存が前提なので、適正価格で仕入れますが、仲卸を通すよりもかなり安く購入できます。また、新鮮なだけでなく、安心・安全であることも大きなメリットですね。富山市内の店舗では1店舗にまとめて納品してもらい、その日の予約や提供したいメニューを踏まえて各店舗に振り分けるので、無駄もありません。そのため、お客様は新鮮な魚や寿司を、リーズナブルな価格で堪能できる、という仕組みです。

――魚にこだわる御社が、「本物のやきとん 筑前屋」を展開する理由は?

いずれ、富山の魚にこだわった居酒屋をFC展開したいと考えています。そこで、FCシステムの仕組みやノウハウを勉強するため、FCチェーンに加盟しました。次に目指す東京進出の足がかりを得ることも目的の一つでした。今は、北陸3県のエリアフランチャイザーでもあり、本部としてのノウハウも蓄積しているところです。

地元の漁師から直送される新鮮な魚が、同社の最大の売り。刺身や寿司をリーズナブルに提供し、ビジネス層をがっちりつかんでいる

――今後のビジョンと、松原さんが考える飲食業の意義を教えてください。

今後に関しては、2014年は様々な勉強をして資金を蓄える充電期間と考えています。そして2015年には、すし居酒屋をパッケージ化して東京に3店舗程度を出店し、関東エリアに足場を築く年にしたいと思っています。さらに2016年には、海外進出も計画しています。

私は、飲食店はお客様と生産者の中継ぎ地点だと考えています。そうした想いも含め、富山と、そこで獲れる新鮮でおいしい魚介を、飲食を通して全国に発信していきたいですね。

地産食彩 越中舞華(富山・富山駅前)
http://r.gnavi.co.jp/r314500/
落ち着いたダイニング感覚の店内で、地元の漁師から直送される新鮮な刺身と寿司を提供。掘りごたつ席や富山駅前の夜景が楽しめる個室もある。
富山すし居酒屋 花より魚(富山・富山駅前)
http://r.gnavi.co.jp/r497402/
漁師直送の新鮮な魚を使用した刺身と、職人が握る寿司を1貫100円からオーダーできる人気店。日替わりのおすすめメニューも好評。

Company Data

会社名
株式会社ピーノコーポレーション

所在地
富山県黒部市三日市2523-1

Company History

2005年 「居酒屋カフェダイニング花朝月夕」オープン
2008年 株式会社ピーノコーポレーション設立
2009年 「地産食彩 越中舞華」オープン
2010年 「旬彩魚酒 とやま物語」オープン
2012年 「富山すし居酒屋 花より魚」オープン
2013年 「本物のやきとん 筑前屋」 糀谷店、富山駅前店、金沢片町店オープン
2014年 「旬菜あかり家」富山駅前本店、魚津サンプラザ店オープン
     「金沢すし居酒屋 花より魚」4/26オープン予定

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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