2018/03/22 挑戦者たち

株式会社 Dress Circle 代表取締役 雨宮 春仁 氏

20代で描いた「7店舗を出す」という夢を実現し、現在、東京の府中、調布、吉祥寺に店舗展開する株式会社Dress Circleの雨宮春仁氏。工夫と努力を積み重ねてきたこれまでの歩みや経営哲学、目標を聞いた。

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「文化」を売るという気概を胸に、目指すは日本一楽しい飲食企業

20代で描いた「7店舗を出す」という夢を実現し、現在、東京の府中、調布、吉祥寺に計8店舗を展開する株式会社Dress Circleの雨宮春仁氏。成功の裏側には、「できる・できない」ではなく「どうすればできるか」という発想を起点に、工夫と努力を積み重ねてきた道のりがあった。これまでの歩みや経営哲学、次なる目標を聞いた。

――ご実家が中華料理店だとか。そこから飲食業に関心を?

仕事の大変さを幼いころから間近に見ていたので、むしろ「飲食業だけはやりたくない」と思っていました。出身地の山梨・甲府を離れて東京の大学に進んだのは、教員免許を取って教師になりたかったからです。実際に教員免許は取得できたのですが、その頃にはもう、教師になる夢よりも料理への関心が強くなっていました。在学中にイタリアンレストランでキッチン補助のアルバイトをして、一から料理を作るおもしろさを知ったからです。

周りの友だちが就職活動をしていた時期、修業先を探す目的で複数の飲食店を食べ歩き、料理や雰囲気のよさに惹かれたのが株式会社ラムラの店でした。ちょうどラムラが府中に和食ブランドを出店すると知り、大学4年からその店でアルバイトを始めました。その時の採用面接で「30歳で独立して、将来的に7店舗を出したい」と目標を話したことを覚えています。そして、卒業と同時に社員に登用されました。

――ラムラでの経験や学びで今につながっていることは?

オープンキッチンに初めて立った日の緊張感は、今でも忘れられません。それまで厨房で数えきれないほど焼いてきた出汁巻き玉子が、お客様の前では緊張して思うように作れない。そのうえ、お客様が次々話しかけてくるので、余計に焦る。最初の数日はそんな状態でした。やがて経験を積むなかで、3手先まで考えてスタッフに指示を出し、料理をする手も一瞬たりとも止めず、なおかつ、お客様との会話も同時にこなせるように。観察眼や対応力、調理のスピードなど、すべてが鍛えられました。経営者になった今も、自分の基盤になっていると思います。

その後、洋食も学ぼうと約1年間ホテルのフレンチで勤めた後、先輩の誘いで再びラムラに戻りました。そして、目標通り30歳で独立を果たし、「とくとうせき府中店(現・府中 日本酒バル Tokutouseki)」を府中駅から徒歩5分の場所にオープンしました。

1975年、山梨県出身。大学時代に飲食業のおもしろさに触れ、卒業後、株式会社ラムラで研鑽を積む。2005年、30歳で東京都府中市に「とくとうせき府中店」をオープン。現在、府中を中心に「日本酒バル Tokutouseki」「ワインバル BiBBER」「餃子バル あわ屋」など、8店舗を展開。

――駅前からやや離れた立地だったようですが、勝算はあったのでしょうか。

当時、何の実績もない自分がようやく借りられたのが、ビル2階の物件だったのですが、今なら絶対に選びません。でもその時は、「うまい料理を出せば、お客様は来てくれる」という自信がありました。実際には、それは若さゆえの思い込みでしかなく、最初の数カ月は苦戦しました。広告を活用したことで徐々に客足は伸びましたが、一定のラインを超えると売上は頭打ちの状態に。2年後に出した2店目の「とくとうせき聖蹟桜ヶ丘店」も芳しくなく、根本的にやり方を見直す必要性を感じていたとき、ある経営者の助言が転機になりました。「この店の料理はおいしいけど、ここで食べる必要性を感じない」と指摘されたのです。

確かに、「とくとうせき」は、自分が勉強してきたものをすべて盛り込んだ業態で、「何でもある」メニュー構成にした結果、何が売りかわからない店になっていました。そこで、自分で産地を巡ることから始め、生産者と直接契約するなどして特色ある食材を前面に打ち出したメニューに変えたところ、府中店の売上は飛躍的に上がりました。残念ながら聖蹟桜ヶ丘店は黒字に至らず閉店しましたが、その後、府中を中心に、調布、吉祥寺と、京王線沿線で店舗を増やしていきました。

――ワインバルや餃子バルなど、業態開発について教えてください。

「府中にまだない店」を意識して、業態開発をしてきました。その方が自分も楽しめるというのが理由ですが、「パイオニアになる」という狙いもあります。いくら2番手以降がよいものを作って後追いしても、第一人者の強さにはかなわないからです。

今年1月にオープンした「府中ビアスタンド GRILL屋」は、府中にクラフトビールの文化を広げたいという思いから、1杯680円とリーズナブルに設定しています。そのため、ビールの量はやや少なめにする必要がありますが、お客様には「少ない」と感じさせないようにしたい。そこで、各ビールに合わせたグラスを使い、あえて縁まで注がず、余白に立ち上る香りとともに楽しんでもらうことにしました。結果、「この店のビールは味が違う!」と、好評をいただいています。

クラフトビールにしても、餃子にしても、単に潮流に乗るのではなく、その文化をさらに成長させようという目的意識が重要だと考えています。「餃子バル あわ屋」も、餃子の種類を当初の13から、今年3月には23まで増やしました。「自分たちは文化を売っている」という気概を持って、常に新しいものを生み出し、お客様を楽しませ続ける努力が不可欠だと思っています。

――順調に出店を重ねていますが、困難や試練はありましたか。

数年前、新規出店に注力している間に1号店の売上が急激に落ち込み、一時は店を閉めることも真剣に考えました。その時、お客様を呼び込む起爆剤として、刺身12点盛りを100円で売り出そうと考えました。スタッフからは反対の声も多く挙がりましたが、「そもそもお客様に来ていただかないことには何も始まらない」と押し切りました。結果的にはこの戦略が当たり、売上はV字回復。新規客も獲得できました。現在は、刺身7点盛りを380円のお通しとして提供しています。

最近も、食材の原価が高騰するなか、「メニューを値上げすることなく利益を出すためには?」と、常に知恵をしぼっています。例えば、仕入れの量を10倍に増やす代わりに安く卸してもらい、売り切るためにキャンペーンを展開する。あるいは逆に、仕入れの単位を小さくして、ロスを減らす。10円単位の地道な交渉もありますが、熱意と覚悟を持って臨めば業者さんも力を貸してくれますし、双方にとってよい結果になることも多く、工夫のしがいがありますね。

スタッフで、契約農家の米の収穫を手伝うことも。食材へのこだわりが、店の好調な売上につながっている

――目標の7店舗を超えた今、次に目指すものは?

10店舗が見えてきた今、組織を強化する必要性を痛感しています。特に店長教育は重要。その強化に向けたコンサルティングを導入する一方、新たにマネジャー3名を任命して、私の業務の委譲も進めています。また、昇給や昇格のシステムを明確にし、「何をどう頑張れば評価されるのか」という、評価の“見える化”に力を入れています。

2020年までに20店舗まで増やすという新たな目標や、ハワイに出店するという昔からの夢もありますが、最近、特に強く思うのは、「この会社を日本一楽しい飲食企業にしたい」ということ。それにはスタッフがやりがいを持って楽しく働けることが重要であり、そのための環境や仕組み作りに引き続き力を入れていくつもりです。私もそうでしたが、将来的に独立を目指す人が、「ほかでも経験を積んでみたい」と考えるのは自然なこと。だったら、その上を行くような「まだまだここで学びたいことがある」と思わせる、魅力ある会社を作っていきたいですね。

吉祥寺 餃子バル あわ屋(東京・吉祥寺)
https://r.gnavi.co.jp/7e399pv00000/
スパークリングワインなど“あわ”と餃子のマリアージュがコンセプト。「ネギ汁たっぷり餃子」をはじめ、餃子は全23種を用意。
府中ビアスタンド GRILL屋(東京・府中)
https://r.gnavi.co.jp/1kn8fdg80000/
クラフトビールのディスペンサー「タップ・マルシェ」を3台導入。各ビールの個性ある味わいや香りを専用グラスで堪能できる。

Company Data

会社名
株式会社 Dress Circle

所在地
東京都府中市宮西町2-9-8 草舎Ⅱ 3F

Company History

2005年 「とくとうせき府中店」オープン
2007年 株式会社Dress Circle設立。「とくとうせき聖蹟桜ヶ丘店」オープン(※2013年閉店)
2013年 「府中ワインバル BiBBER」、「調布ワインバル BiBBER」オープン
2016年 「府中 餃子バル あわ屋」オープン
2017年 「吉祥寺 餃子バル あわ屋」、「府中日本酒スタンド BACHIYA」オープン
2018年 「府中ビアスタンド GRILL屋」オープン