2018/04/27 繁盛の黄金律

不動の大黒柱メニューの周辺を、絶えず変化させる

変化し続ける。しかし、メニュー総数は増やさない -外食業は、コロコロと変わらなければなりません。「絶えざる変化」が必要です。こう言うと、「ちょっと待って」という声が聞こえてきそうです。

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Vol.80

変化し続ける。しかし、メニュー総数は増やさない

外食業は、コロコロと変わらなければなりません。「絶えざる変化」が必要です。こう言うと、「ちょっと待ってくれよ」という読者の皆さんの声が聞こえてきそうです。「メニューをコロコロと変えるな」「大黒柱である看板商品を磨き上げ、その質の向上に専心せよ」「やたらに新しいメニューを増やすな」と、私はこの連載で主張し続けてきました。「言っていることがまったく逆ではないか」とお叱りを受けそうです。

私は、矛盾していることを言っているつもりはありません。私の主張は次の一点です。「変えるな。しかし、絶えず変わり続けろ」。これに尽きます。ドーンと構えて揺るがない、変わることのない基本が不可欠で、その基本中の基本が、看板メニューです。味は変えない、しかし質は絶えず向上させる。それに専心し続けなければなりません。質の持続的向上を変化として考えれば、これも絶えざる変化をしている、という言い方ができますよね。

大黒柱のメニューは、質を持続的に向上させ、絶えず変えていかなければなりません。ハンバーグにしても、スパゲティにしても、パンケーキにしても、ピザにしても、ステーキにしても、常にブラッシュアップをし続けない限り、看板メニューの地位が保たれないのです。

一方、看板メニューの周辺で、季節メニューやトレンドメニュー、実験メニューなども、カテゴリー内で出したり、入れたりして、お客の来店意欲を刺激し続けなければなりません。これは、サブベーシックメニューについても同じです。サラダメニュー、サイドメニュー、デザートメニュー、ドリンクメニュー、それぞれの領域で、通年で提供される核となるメニューがあります。その周辺で、新メニューを常に投入していかなければなりません。そうしないとお客は、「商品」にではなく、「店」に飽きてしまうのです。この店への飽きが、客数をジワジワと減らし続けることになります。

ただし、ここで注意しておかなければならないことは、ひとつ入れたらひとつ引っ込めることです。新メニューを入れ続けてばかりいれば、おのずとメニューはどんどん増え続けます。メニューの総数は変えない。いや、もっと減らすことはできないものか、いつもそのことを心に刻むべきです。いつ行っても新しいメニューがある。そして、いつ行ってもメニューの総数が変わらない(時には減っている)ことが大事なのです。

絶えざる刷新と変化で顧客を刺激し続ける

「絶えざる変化」が必要なのは、メニューに限ったことではありません。

  • 新たな販促が打たれている。
  • 看板が新しくなった。
  • 入口部分が刷新された。
  • 部分改装が絶えず行われている。
  • トイレの設備が新しくなった。
  • 客席の居住性が高まった。
  • 食器が変わった。
  • 制服が変わった。
  • メニュー(表)が一新された。
  • サービスの質が上がって、店全体に張りが出た。

つまり、店のあらゆるところで、変化と刷新感が打ち出されていて、「店の鮮度」を保ち続けていなければなりません。

それは、どんな小さなことでもいいのです。

  • テーブルマットが変わった。
  • 箸袋が変わった。

必要なことは、何度も言いますが、「絶えざる変化」です。常連が「おやっ」と思うことです。そして、この絶えざる変化の実践が、新規のお客を呼び込む契機になります。

ここで注意すべきは、客数増の大半は常連の来店頻度アップであるということです。ですから、絶えざる変化の主な目的は、常連の来店意欲を刺激して、来店を途絶えさせないことです。常連のお客たちが、自分がお店のファンであることを、様々な機会を通じて周囲にアピールしてくれることによって、新しいお客が付帯的に来店するのです。常連の来店頻度アップと満足なくして、新しいお客が増えることは絶対にありません。

集客のターゲットは基本的に常連です。この常連に、あらゆる新要素をぶつけて、リピートしてもらわないと、店は衰退の一途をたどることになります。「絶えざる変化」で刺激し続けなければいけないのですから、やっぱり外食産業は大変に難しい商売ですね。それをやり続け、しっかり利益を出さなければならないのです。

繰り返しになりますが、そのための基本は、看板商品の磨き込みです。これを怠って、看板商品が競争力を失ってしまったら、どんな新規メニューも販促も改装も、店の地すべり的な人気下落を止めることはできません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。