汚れもホコリもない空間をキープ!ミシュラン一つ星に輝くカニの名店、掃除の基本は徹底して「拭く」こと
Case1 【北海道・札幌】活カニの花咲(はなさき)
ベースの「お客様への愛」を先輩から後輩へ引き継ぐ
「日本一、カニをおいしく食べさせる店」をつくるため、オーナーの大地兼右氏が心血を注ぐ「活カニの花咲」。最高級の活タラバガニを仕入れ、必ず大地氏自身が来店客の前でさばく。その迫力満点のパフォーマンスと、刺身からボイル、グリルまで、カニ一匹のフルコースが高い評価を受けている。平均予算は1人3万円。1日最大5~6組の完全予約制で営業する。
Check! 厨房
臭いの元はすぐシャットダウン! 毎日天井から床まで、念入りに拭き掃除!
店には清潔感と気品があり、生簀のビジュアル以外はにおいも含め、カニを感じさせないことに驚かされる。「カニが臭うのは死んでからです。当店が臭わないのは、新鮮な活カニ専門である証拠」と、大地氏。だが、さばけば血が出て、殻はほどなく臭ってくるはず。にもかかわらず、「海鮮のにおい」や「海のにおい」は皆無と言っていい。こうした「花咲」の臭いもホコリもない空間の背景には、創業以来の「掃除の基本」がある。
それは「とにかく拭くこと」と大地氏。天井、床、棚、壁など、店内のどこに目をやっても、抜かりなく清掃されている。「バケツと雑巾を持ち、天井から壁やインテリアまで店内のすべてを隈なく拭くことが、基本中の基本です」と大地氏は話す。この方針はアルバイトの採用時から貫かれており、面接時には合否に関係なく、雑巾を正しく絞ることができるかどうかもチェックする。「脇を締めて、手首を内側に回して絞ると、水が一筋になって流れます。これが正しい絞り方」と大地氏。この話だけでも、拭き掃除への大地氏のこだわりが伝わってくる。したがってスタッフは、開店前はもちろん、開店後も予約客が来店する直前まで拭き掃除に取り組む。床の掃除機かけやトイレ掃除などは、清掃専門のスタッフが午前中に済ませているが、さらに拭き掃除で磨きをかけることが「花咲流」なのである。
Check! 生簀
売りの活カニは「見せる」こともアピール。ガラスの水滴や塩の結晶も細めに拭く
営業終了後は、厨房と客席のその日の汚れをしっかりと取り除く。客席で活カニをさばくスタイルのため、厨房の設備は最小限。油はほとんど使わないが、炭焼きの煤すすがダクト付近に付くので、天井から壁、排気口は念入りに拭き取っている。客席はカニをさばいたテーブルの掃除を重視。屋久杉や薩摩杉を使った木製のテーブルは、カニの血液などを放置すると臭いや傷みの原因となるからだ。そのためビニールシートでまな板を置く周辺を保護するとともに、1回にタオル6本を使ってまな板や机の汚れをぬぐう。また、タオルは洗浄と漂白を徹底。消臭剤や芳香剤は新たな“香害”になることもあるので使用せず、「臭いの元を断ち切ることが肝心」と大地氏。もちろん、殻などは臭う前に廃棄することを徹底する。
Check! エントランス
磨かれたグラスやカップがズラリ。間接照明の隙間(写真下)は雑巾で
「掃除の原点は、お客様への愛」と大地氏。「お客様に快適な時間を過ごしてもらうために、店ができることは限られています。その1つが全力で取り組む掃除であると思っています」と語る。マニュアルはない。だが、そのマインドは、歴代のスタッフがしっかりと受け継いで後輩に伝え、今日の「花咲」を支えている。
Check! 客席
カニの血液などでテーブルが傷まないように、テーブル表面の一角をシートで保護。
北海道札幌市中央区南5条西2-1-1 美松村岡ビル5F
https://r.gnavi.co.jp/h091100/