2019/07/18 挑戦者たち

株式会社 ニコカンパニー 代表取締役 平野 良輔 氏

アルバイトをきっかけに理系の道から飲食の道に入り、神奈川で5店舗を展開する株式会社ニコカンパニーの平野良輔氏。ロジカルな思考に基づき、緻密な戦略で成長する。現在に至る歩みや、店づくりの考え方を聞いた。

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従業員とお客様を笑顔にできる“カッコいい店”を作りたい

――飲食業との出合いは、学生時代だったそうですね。

 静岡で生まれ育ち、大学進学で上京後、家庭教師やコンビニ店員など様々なアルバイトをしましたが、いちばん楽しかったのが居酒屋の仕事でした。繁盛店ではなく、スタッフも少なかったため、調理、洗い物、接客と、なんでもこなすうちに周りから頼りにされるようになり、仕事にのめり込んでいきました。そして、飲食の道に進むと決め、電気電子工学を専攻していた大学を中退。バイト先の店を運営する外食企業に入社しました。当時、「30歳で社長になって年収1000万円稼ぐ」と人生設計を立てたのを覚えています。実家が明治時代から続く呉服店で、現在、私を含む三兄弟全員が経営者になっているので、やはり商売人のDNAが流れているのかもしれません。

 入社後は、ステーキとカレーのチェーン店に配属され、都内の繁盛店で店舗運営を学び、最年少でスーパーバイザーに就いた後、九州の不採算店舗の再生や新店舗の立ち上げに携わりました。ここで武器となったのは、理数系で数字に強かったこと。営業利益のシミュレーションや粗利の計算方法を、誰に教わるでもなく自然と身につけました。その後、将来の独立に向けてもっと財務会計を学びたいと考え、飲食系のコンサルティング会社に転職。最初の5年は本部で財務などに携わり、続く2年は会社が買い取った居酒屋の運営を担い、ここでも不採算店舗の立て直しに尽力しました。毎日現場に立ちながら、店舗運営に必要な体力や精神力が戻ってきたことを実感し、32歳で株式会社ニコカンパニーを立ち上げて独立。神奈川の新百合ヶ丘に日本酒バル「Tokyo Rice Wine」をオープンしました。

――それまで経験のなかった日本酒バルを業態に選んだ理由は?

 まず考えたのは、30~40代の女性をターゲットに、お客様に感謝していただけて自分たちスタッフの気分も上がるような、“カッコいい酒場”を作りたいということ。何か専門性も打ち出したいと考えるなかで、幼い頃から呉服という日本文化に触れてきたことは自分の特性の1つなのではと思い、日本酒を軸に据えようと決めました。ワイングラスで提供するスタイルは、前職で東北の酒蔵を訪ねた際、杜氏がお酒の出来を確かめるのにワイングラスを使っていたことにヒントを得ました。日本酒の繊細な香りが引き立ち、見た目もカッコいい。女性1人でも気軽にワイングラスで日本酒を楽しめる店、というコンセプトが固まり、それを表す店名として、「Tokyo Rice Wine」と名付けました。

 場所については、土地勘のある神奈川のたまプラーザで出店を考えていましたが、希望に合う物件がなく、同じくアッパーな住宅街で、ターゲット層の集客が見込める新百合ヶ丘を選びました。すると、コンセプトが街のニーズにはまり、初月から売上は好調。翌年には、念願のたまプラーザに2号店をオープンしました。

Ryosuke Hirano 1981年、静岡県生まれ。学生時代のアルバイトを機に飲食の道を志し、大学を中退して外食企業に就職。その後、経営コンサルティング会社を経て、2014年に32歳で独立し、「Tokyo Rice Wine 新百合ヶ丘店」をオープン。現在、神奈川県内で4業態5店舗を展開している。

――創業6年目で4業態5店舗に拡大。出店戦略について教えてください。

 私自身やスタッフの行き来のしやすさを考えて、基本的に神奈川県内の小田急沿線、東急田園都市沿線にドミナント展開を進めています。4業態あるのは、異なる業態をやりたかったわけではなく、毎回、その立地に合う業態を熟考し、開発してきた結果です。

 もともと、石橋を何度も叩いて渡る慎重な性格ですが、過去に1度、十分な準備ができないまま出した店があります。「Tokyo Rice Wine」の3店目として、神奈川・海老名の商業施設内に1年間の催事契約でオープンした店で、既存のメニューにランチだけを新たに加えてスタートしましたが、まったく想定した売上に届きませんでした。その反省から以降、出店に際しては立地と業態がマッチするかをより慎重に検討するようになり、次に出した「CRAFT&FARMERS」をヒットさせられたことは、今につながるターニングポイントになりました。クラフトビールという売りの打ち出しだけでなく、料理の完成度をできる限り高め、常連客をしっかりつかむことの重要性も学びました。

 現在も出店前には周辺の競合店をリサーチし、最悪の状況も想定した綿密な売上シミュレーションをします。もちろん、どれだけ計算してもそこに答えはなく、実際は計算通りにいかないことも多々ありますが、周到なリサーチを行い、数値化して考えるそのプロセス自体が好きですね。

――店づくりや人材育成の面で、大切にしていることは何ですか。

 店舗経営で大事なのは、商品戦略、地域戦略、客層、財務、顧客維持の5つだと考えています。この中で現在、特に強化が必要だと感じているのが、商品戦略と顧客維持です。ここでいう商品とは業態のことで、現在展開している業態にさらに磨き込みをかけ、大手企業とも互角に戦えるような自社のナンバーワン業態を確立していくことが現状の最優先課題です。

 顧客維持については、再来店につながる要素として料理のクオリティやコストフォーマンスはもちろん大事ですが、要となるのはサービスだと考えています。ニコカンパニーという社名の由来である「笑顔」が特に重要で、従業員の笑顔がお客様の笑顔につながるという考え方から、有休消化の徹底をはじめ、従業員がやりがいを持って働ける環境の整備に力を入れています。スタッフにはそれぞれ、会社が目指す将来とは別に、個人の目標や夢があるはず。その両方のベクトルを合わせながら、みんなの目標の実現を後押しできるのが理想ですね。一人ひとりがどんな夢を描き、何にやりがいを感じて働いているのかを知るためにも、面談の際は社長と部下ではなく、人と人として腹を割って話したいと伝えています。ともに働いてきた仲間が独立し、成功していく姿が本当にうれしく、そうして“チーム平野”が増えていくことに、飲食業を選んでよかったと心から幸せを感じます。

社員旅行で大阪のサントリー山崎蒸溜所を訪れた際のひとコマ。従業員とはフラットに語り合う関係性を大切にしている

――近く新店を出す予定もあるそうですが、この先の展望は?

 今後も出店は続けていく考えですが、急ぐつもりはなく、事業計画に目標店舗数は定めていません。原点として変わらずあるのは、「カッコいい店を作りたい」という想いで、それは、“カッコつける”店とは別物です。本質を追求した店づくりができているか、常に自分の中でフィルターを通しながら、手堅く経営をしていきたいと思っています。業態開発においては、感性や創造性を十分働かせながらも、自分の持ち味である理数系の思考やマーケティング力を活かすことが、結果的に会社としての差別化にもつながるはずと信じています。

 経営理念として「従業員とお客様の笑顔の創造」を掲げていますが、今後も柔軟な姿勢で理念や行動指針を追求していきます。組織としてはまだまだ発展途上。先人の経営者の知恵や経験、失敗に学びながら、工夫を重ねて成長していきたいと思っています。

Company Data

会社名
株式会社 ニコカンパニー

所在地
神奈川県川崎市宮前区犬蔵3-6-2 グリーンコーポ605

Company History

2014年 株式会社ニコカンパニー設立。「Tokyo Rice Wine 新百合ヶ丘店」オープン
2015年 「Tokyo Rice Wine たまプラーザ店」オープン
2017年 「Tokyo Rice Wine 海老名店」オープン(1年後に契約満了で閉店)。クラフトビールの「CRAFT&FARMERS 新百合ヶ丘」、「炭焼きとワイン PEQUE 新百合ヶ丘」オープン
2018年 初の和食業態「菜々や」オープン

Tokyo Rice Wine たまプラーザ店(神奈川・横浜市青葉区)
https://r.gnavi.co.jp/9xzdna3e0000/
常時30種以上の日本酒をそろえ、香りが引き立つようワイングラスで提供。各国料理に和のテイストを加えた料理も女性に好評だ。
CRAFT&FARMERS 新百合ヶ丘(神奈川・川崎市麻生区)
https://r.gnavi.co.jp/10x5ekvy0000/
こだわりの野菜や肉、旬の魚を使った料理と国産クラフトビールが楽しめる。おしゃれなテラス席での「BBQコース」も大人気。