日本の味と現地のニーズを合わせ柔軟な対応で常連客を獲得!

シンガポールで本格的な日本の焼肉で人気を集めている「焼肉どんどんシンガポール」。クオリティの高い和牛を仕入れるルートを確保し、「ねぎタン」や「和牛ユッケ雲丹いくら乗せ」などが人気となっている。

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日本の味と現地のニーズを合わせ柔軟な対応で常連客を獲得!

【シンガポール・タンジョンパガー】
焼肉どんどんシンガポール

90 Tanjong Pagar Road, Singapore 088511
http://www.genki-factory.com/shoplist/don/
飲食店などが並ぶタンジョンパガーロードに2017年にオープンした焼肉店。臨場感あふれる調理の様子を望めるカウンター席が好評で、現地のビジネス層などを集客している。

カウンター席での会話も店の印象付けに貢献!

 シンガポールの中心部、チャイナタウンと中央商業地区を結ぶタンジョンパガーロード沿い。伝統的な建造物を利用した飲食店や住居が軒を連ねるなかで、本格的な日本の焼肉で人気を集めているのが「焼肉どんどんシンガポール」だ。カウンター12席、テーブル24席のほか、テラス席も備えており、2017年9月のオープン以降、地元のビジネス層を中心に集客している。

店の外には、開放的な雰囲気のテラス席を用意。歩道から店内の賑わいが伝わりやすく、入店を促す効果も

 経営しているのは、日本国内で焼肉店「焼肉どんどん」「ホルモン肉五郎」など、直営・FCを合わせて30店舗以上を展開する株式会社元気ファクトリー。「焼肉どんどんシンガポール」は、直営店として初の海外店舗で、「シンガポールは東南アジアの中心地。ここでの成功が実績と信頼につながり、将来的に周辺の国でのFC展開もしやすくなると考えました」と、東南アジアでの事業を統括するリージョナルマネジャーの鈴木豊英氏は語る。

 鈴木氏は出店7カ月前にシンガポールに1カ月間滞在し、飲食店を回りながら客単価や客層などをチェック。その結果、「焼肉どんどん」と同程度の客単価(5000~8000円)の焼肉店がシンガポールには少なく、狙いめだと確信。繁華街のタンジョンパガーであれば、平日・週末ともに集客が見込めるうえに、韓国の焼肉店が多い場所なのでニーズも高く、「日本流の焼肉」で差別化できると考えた。

 一方で、法規制が厳しいシンガポールでは、就労ビザの取得や会社設立、不動産契約などが容易ではなかった。そこで、同社の会長の知人で、シンガポールの事情に詳しい経営や資産運用の専門家に助言を仰ぐことで、手続きなどをスムーズに進めることに成功。「食材も、会長がシンガポールで知り合った日系輸入業者に依頼して、クオリティーの高い和牛を仕入れるルートを確保しました」と鈴木氏。

 人気のメニューは「ねぎタン」(19.5ドル=約1520円)と「最高のヘレ」(100g/35ドル=約2730円~)。「シンガポール人はネギが苦手だと聞いていたのですが、『ネギとタンの組み合わせ』が意外に好評で驚きました。日本を旅行して和食を食べ、ネギへの抵抗感が減ったからかも」と、鈴木氏は分析する。また、地元のニーズもメニューに反映。例えば、ウニやイクラは高級感から人気の高い食材であるため、シンガポール店オリジナルで「和牛ユッケ雲丹いくら乗せ」(35ドル=約2730円)を提供。これがヒットし、高い注文率を誇っている。

自社で輸入したオーストラリア産牛のタンに、刻みネギをのせて焼く「ねぎタン」。店で1、2を争う人気

 ドリンクは日本酒にこだわり、約55種類を用意。日本酒に詳しくない現地の人には好みの味を聞いて、オーダー前に3種程度を無料で試飲してもらう。こうしたきめ細かい気遣いも、ファンを獲得する要因になっている。

 さらに、2018年には輸入ライセンスを取得し、一部の牛肉は自社で直接仕入れるようにした。「牛タンの人気が予想以上に高かったのが理由です。オーストラリアから直接輸入することで、より質の高いタンを安く提供できるようになりました。また、アルコール類の輸入ライセンスも取り、選りすぐりの日本酒を仕入れて、他店と差別化を図っています」(鈴木氏)。これらの取り組みが功を奏し、順調に売上も伸び、平日でも19時過ぎには満席になる人気店へと成長した。2018年12月には、近くの裏通りに個室を備えた2号店をオープン。東南アジアでの店舗展開に向けた地ならしを進めている。

「焼肉どんどんシンガポール」の成功のポイント

1 パートナー

現地の事情に詳しい経営や資産運用の専門家(プライベートバンカー)の助言を受け、出店の手続きがスムーズに行えた。

2 メニュー

食材から焼肉用のタレ、メニューのラインナップまで日本の店とほぼ同じ内容。「最高のヘレ」「ねぎタン」などが人気。

質の高いヘレステーキや手頃な牛タンが人気に!
余分な脂身のないオーストラリア産和牛を使った「最高のヘレ」は、100gと150g(写真上)の2サイズ。一口大にカットして焼き、わさび醤油やガーリックバターソースで食す。柔らかく肉の旨みが味わえると好評を得ている

3 人材

「ノリのよさや明るさ」を基準に採用。日本酒の銘柄などに関する知識を高めるための努力も行っている。

元気、笑顔、挨拶を重視し、日本酒の理解を深める努力も
元気に笑顔で対応することや、挨拶を重視。日本酒は試飲を薦めることが多いため、全員が銘柄ごとの特徴を説明できることを目指している

4 販促・演出

カウンターでの接客や活気ある雰囲気が口コミで広がり、集客アップやリピーター獲得につながっている。

カウンター席での会話で店の印象付けに成功!

  • シンガポールの焼肉店では珍しいカウンター席が話題に。店の印象付けにつながっている
  • 2号店では、「最高のヘレ」にドライアイスを添える演出も。写真を撮影する人が多い

「焼肉どんどんシンガポール」の主なメニュー

  • ねぎタン(19.5ドル=約1,520円)
  • 最高のヘレ100g(35ドル=約2,730円)/150g(50ドル=約3,900円)
  • 厚切りタン(30ドル=約2,340円)
  • 和牛ユッケ雲丹いくら乗せ(35ドル=約2,730円)
  • 特上肉盛り500g(158ドル=約12,320円)
  • 和牛サイコロステーキ(35ドル=約2,730円)
  • 味噌ネギカルビ(18.50ドル=約1,440円)
  • 和牛ロース(28ドル=約2,180円)
  • にんにくハラミ(17.5ドル=約1,370円)
  • トントロ(12ドル=約940円)
  • 丸腸(17ドル=約1,330円)
  • レバー(15ドル=約1,170円)
  • キムチ盛り(13.5ドル=約1,050円)
  • 山盛りどんどんサラダ(13.5ドル=約1,050円)
  • ユッケジャンスープ(14ドル=約1,090円)
  • 牛スジ豆腐煮込み(12ドル=約940円)
  • 肉ポテトサラダ(9ドル=約700円)
  • どんどん特製冷麺(16.8ドル=約1,310円)
店舗データ
業態 焼肉店
オープン 2017年9月
36席
客単価 約85ドル(約6,630円)
客層 ビジネス層やファミリーを中心に、女子会やカップルの利用も増えている。
日本人は3割。
※ 1シンガポールドル(文中では「ドル」で表記)=約78円(2019年10月)価格は税・サービス料別
リージョナルマネジャー 鈴木 豊英 氏
株式会社元気ファクトリーに入社して16年目。「焼肉どんどん」新宿歌舞伎町店で店長を務め、シンガポール店の立ち上げに携わる。現在、東南アジアでの店舗展開の責任者として奮闘。
シンガポールの基本情報
面積 719.2平方km2(東京23区と同程度)
人口 約564万人(2019年1月)
言語 マレー語、英語、中国語、タミル語
通貨 シンガポールドル(文中では「ドル」で表記)
飲食店数 約26,600店
(日本料理店/1,400店)(2016年)
世帯平均月収 約73万8,600円(2017年)

店舗周辺エリアの特徴

シンガポール中心部のチャイナタウンや中央商業地区を走るタンジョンパガーロード。飲食店やブライダル関連の店などのショップハウス(旧植民地時代の建築物を使った住居や店舗)が並び、地元住民や観光客で賑わう。

出典:日本貿易振興機構、シンガポール統計局