2019/12/18 挑戦者たち

株式会社 カオカオカオ 代表取締役 新井 勇佑 氏

「タイ屋台」で東京を中心に店舗展開する株式会社カオカオカオ。新宿店は10 坪で月商1,200 万円、今年は商業施設や大阪にも進出した。ロジカルな思考で店づくりを進める代表・新井勇佑氏に、理念とビジョンを聞いた。

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「新しいタイを作る」ことが使命。そのために店舗を増やしていく

――飲食業界に入る前は、臨床心理学を研究をされていたそうですね。

 子どもの頃から算数やパズルが得意で、とにかく問題を解決して答えを導き出すのが好きでした。あと、もう一つ好きだったのがテレビの〝戦隊モノ.。悪をやっつけて、同じく問題を解決するヒーローに憧れ、「将来はヒーローになる」というのが、ずっと自分の中での目標になっていました。

 大学は医学部を志望していましたが、実力的に無理と判断し、諦めました。そこで、目指していた「ヒーローになる」ことをあらためて思い出し、そのためにどうすればいいか考えた結果、「入った大学で1番になろう」と決意。あえて、自分の偏差値よりもだいぶ低い大学を受け、トップで合格しました。

 入学後は、当時まだ研究が進んでいなかったこともあり、「この分野ならヒーローになれるかも」と考え、臨床心理学を専攻。卒業後も大学に残り、研究を続けていましたが、結局、「この分野でも1番にはなれない」と判断。違う道に進もうと考えたときに、得意な研究・分析とは真逆の“職人”の世界であれば、かえって自分の存在意義を見出せるのではないかと思い立ち、飲食業界に進みました。飲食業界は料理人などに“職人気質”が残りつつ、経営や店づくりなどで“研究・分析気質”が活かせる。子どもの頃、親によく外食に連れて行ってもらい、もともと食べるのは好きでしたが、正直、仕事にするなんて思いもしませんでした。

――なぜ、タイ料理というジャンルを選ばれたのですか?

 たまたま好きで通っていた地元の東京・町田の店がタイ料理店だったんです。その店で働かせてもらいながら、独立・開業を目指して飲食業界を研究するなかで気がついたことがありました。1つは、日本におけるタイ料理は、リゾートの雰囲気の店で食べる宮廷料理が主流で、華僑の人たちの影響を受けて生まれた、現地の人たちが日常的に食べている「タイ屋台料理」がほとんど存在しないこと。もう1つは、流行っている飲食店には、「業種×業態」の〝クロスソリューション.があること。つまり、「いきなり!ステーキ」なら「ステーキ×立ち食い」、「串カツ田中」であれば「串カツ×ファミレス」など、2つをかけ合わせることで、さらに集客力が上がる。同様に、「タイ料理×居酒屋」には必ずニーズがあると思いました。

 同店で2年ほど勤務した後、約1年を東京の飲食店の視察・調査に費やしました。乗降者数が多い駅を基点に、1日中その街を徹底的にリサーチしながら、様々なエリアのデータを集めました。その結果、飲食店が潰れる原因には主に2つあると分析。1つは「餅は餅屋」になっていないこと。飲食店で働くなかで料理や接客のことなどは学びますが、いざ経営者になったときにやらなければいけないのは、それ以外のことだらけ。財務や物件、人材、店舗開発など、専門性の高いことを経験や知識がない状態でやってもうまくいくはずがない。2つ目は、多くの経営者が経験やカンといった主観に拠った経営をしていること。そこで、客観的、かつロジカルに店舗運営することが重要と考えたのです。

Yusuke Arai 1984年、東京都町田市出身。臨床心理学の研究員を経て、地元・町田のタイ料理店に勤務。2014年、「タイ屋台999 中野店」をオープンし、独立・開業。その後、新宿、新橋、二子玉川などにも出店。今年は大阪にも進出。今後は、中食への参入やタイ料理食材の流通整備も視野に入れる。

――東京中をリサーチした結果、1店舗目に中野を選んだ理由は?

 「タイ料理×居酒屋」がコンセプトの「タイ屋台999(カオカオカオ)」1店舗目は、メディアに取り上げられやすい場所に出したかったのですが、最初から都心のオフィス街などは、家賃的にも難しい。であれば、街として特色のある、地域性が高い場所でファンを増やそうと思いました。それまでのリサーチで、東京・中野は飲食激戦区でありながら、どの店もけっこう人が入っているというデータもありましたし、感度の高い人が多いという意味では、タイ料理との相性もよかった。また、タイ料理は目的型の来店が圧倒的に多いので、かなり路地裏の立地でも比較的リスクが少なく、かえって「隠れ家」としての価値を高められます。その狙い通りに話題になって、徐々にメディアへの露出も増え、2店舗目は新宿にオープンしました。

 新宿店のテーマは、企業として認められること。出店資金をクラウドファンディングで集め、「999で一生ごはんが食べられる」というインパクトの強いサービスを25万円で打ち出したところ、完売。メディアに取り上げてもらうことがさらに増え、「999」の知名度を高めることに成功しました。

 さらに、3店舗目の新橋店を出店した2018年には「餅は餅屋」の考えに基づき、財務、物件、人材の確保などを外部に委託するように。それは、あくまでも料理、接客、サービスなど飲食の現場に特化した組織でいるためです。

――様々な業務を外部に委託しながら、どうコストを抑えているのですか?

 実は、外部に委託してもそれほどコストはかかっていないんですよ。例えば物件の紹介は、同じ企業のサービスを使い続けたり、販促は成果報酬型にしたりして、コストを抑える工夫をしています。仕入れも同様です。生産者と直に取引できるルートを開拓し、大量発注することで仕入れ価格を下げてもらう努力をしています。そのためには、オーダーをコントロールすることが大事。どうすればこちらが頼んでほしいメニューに注文が集まるのか、仮説と検証を繰り返して、メニューブックやPOPも製作しています。

 名物もメニューブックを使って作ることが可能です。現在、東京にある4店舗では「カオマンガイ」を目につく中央に配置し、一押しとしてアピールしています。一方、大阪初進出店舗として、2019年9月にオープンした梅田店では、焼肉と鍋が同時に楽しめる、本場タイで人気の「ムーガタ」という料理を名物に据えています。東京の店はすべて席数が少なく、回転数で勝負していますが、梅田店は約60と席数が多いため、メニュー構成を根本から考え直し、「ムーガタ」などを新たに加えて客単価を上げようという狙いがあります。また、そのためにイスやテーブルもこれまでとは違うものにして居心地のいい空間をつくり、滞在時間を長くしようと考えました。

新宿店オープン時にスタッフと。アルバイトも含めたスタッフ全員で明るい「タイ屋台」の雰囲気を作り出す

――会社として今力を入れていること、今後のビジョンを教えてください。

 一番のミッションは「新しいタイ、次のタイを作る」こと。先述のように日本ではまだまだ現地で食べられているタイ料理が広まっておらず、その状況を変えるには業者や流通から変える必要がある。そのためにも、日本全国にもっと店舗を増やしていく必要があると思っています。また、合わせて海外への出店も進めていきたいです。

 店舗が増えるなかで力を入れているのが店長の育成。店長の存在は、店を大きく左右するので特に重視しています。店づくりに関しての考えなどを統一するため、現在は月1回、社内塾を開催し、次世代の店長を育てています。会社として掲げているのは「論理的、計画的、物語的」であること。ロジカルを大切にしながら、「主観を排除するのではなく、経験とカンで客観を補いなさい」と伝えています。

Company Data

会社名
株式会社 カオカオカオ

所在地
東京都中野区南台2-9-1 405

Company History

2014年 1店舗目となる「タイ屋台999中野店」オープン
2015年 株式会社カオカオカオ設立
2017年 「タイ風屋台ビアガーデン 999新宿店」オープン
2018年 「貸切&ビアテラス 999 新橋店」オープン
2019年 「タイ屋台 999 二子玉川ライズ店」、「タイ屋台 999 梅田店」オープン。

タイ屋台 999 二子玉川ライズ店(東京・二子玉川)
https://r.gnavi.co.jp/jcfjm0b30000/
東急二子玉川駅前に立地。同ブランド初の商業施設店舗で客層のメインは地域のアッパー層。ママ会や女子会での利用も多い。
タイ屋台 999 梅田店(大阪・梅田)
https://r.gnavi.co.jp/m7vmyj7r0000/
関西初上陸店舗でテラス席も備える。薬膳鍋と焼肉が同時に楽しめる「ムーガオ」や「釡飯カオマンガイ」「バケツ生ビール」などが話題。