日本伝統藁焼炭焼 天晴(あっぱれ)
台北市中山區林森北路107巷48號1樓
https://www.facebook.com/taipei.appare/
日本各地の郷土料理をアピールする企画も実施!
台湾随一の日本人街として知られる台北(タイペイ)の「林森北路(りんしんほくろ)」。昔はスナックやクラブが多かったが、近年は女性や家族連れが気軽に利用できる飲食店やバーも増えている。その一角に店を構えるのが「日本伝統藁焼炭焼 天晴」。宮崎県の郷土料理を売りにした居酒屋などを展開する、株式会社コンフォートダイナーの海外進出1号店だ。
海外出店に踏み切ったのは、2013年ごろに同社の代表・竹井俊光氏が夫婦で旅行で台湾を訪れたのがきっかけ。「台湾では料理に砂糖を多く使う傾向があり、味付けが甘めの宮崎料理に似ています。当時の台北には、宮崎など九州の料理を売りにする店が少なかったこともあり、チキン南蛮など宮崎の名物を売りにすれば人気が出ると考えました」と、竹井氏は振り返る。
その後、現地の日系コンサルティング会社と契約を交わし、出店に必要な手続きを委託するなどして、2014年9月にオープンを果たした。しかし、最初の数年はなかなか軌道に乗らず、苦戦が続く。てこ入れを考えるなか、竹井氏が相談したのが店の常連である三島公紀氏だった。当時、台湾に8年住み、飲食店で働いていた三島氏に、1人の客として、また同業者として意見を求めたのだ。すると三島氏は、料理長とホール長の2人が日本人で中国語を話せないことに触れ、「台湾人スタッフとの情報共有が不十分なために、料理の特徴がお客様にしっかり伝わっていないのでは」と指摘した。この言葉を受け、料理の情報を中国語で正確に伝えることの重要性を再認識した竹井氏は、宮崎県出身で郷土料理に詳しく、中国語も話せる三島氏に力を貸してほしいと依頼。2018年に総経理(ジェネラルマネージャー)として三島氏を迎い入れた。
店の立て直しにあたり、三島氏が一番注力したのは、サービス力の向上。以前は、ホールスタッフがただ料理を運ぶだけだったが、宮崎の料理や焼酎の特徴を来店客に伝えられるよう根気強く教えていった。「例えば、看板メニューの地鶏の炭火焼は、何も説明せずに出していたため、『黒焦げの失敗作だ』とクレームになることもありました。しかし、『焦げた部分に旨みが凝縮されています。見た目と味のアクセントとして、宮崎から取り寄せた赤い柚子胡椒もかけています』などと、中国語で説明することで、特徴を理解してもらえるようになりました」と、三島氏。料理や焼酎などについて、しっかりと伝える努力を続けた結果、徐々にリピーターが増加。三島氏が加入してから1年で、平日もほぼ毎日予約で埋まる人気店へと成長を遂げた。
客層は、日本人と台湾人が6対4。ほとんどの日本人が酒を注文するのに対して、台湾人は食事中にあまり酒を飲まないため、客単価にはおよそ200ドル(約720円)の差がある。「売上の面でも、日本人が少し多い今の集客バランスがベスト。今後も偏りなく集客できるようにしたい」と、三島氏は語る。
また、現在力を入れているのが、隔月で都道府県ごとの人気料理を提供する「ご当地グルメバトル」というイベントだ。「何度も日本を旅行する台湾人が増え、『日本各地の名物料理を食べたい』というニーズが高まっていると感じて始めました」と三島氏。こうした郷土料理についても、スタッフに特徴を共有。“伝える力”を磨くことで、ファンを着実に増やしている。
「日本伝統藁焼炭焼 天晴」の成功のポイント
1 パートナー
出店準備のため、半年間、日系コンサルティング会社と契約。工事の交渉や法律上の手続きなどをスムーズに進められた。
2 メニュー
台湾では珍しい宮崎の郷土料理や厳選した焼酎の品ぞろえで差別化。食材はできるだけ台湾産のものを使用している。
地鶏の炭火焼きやチキン南蛮など、宮崎の料理を台湾の食材で提供
「花蓮(カレン)産地鶏炭火焼」(308ドル=約1,109円)。宮崎地鶏に近い弾力と柔らかさを持つ花蓮産の赤羽地鶏を使用。部分的にススが付いて黒くなるため、調理に失敗したと思われて当初は人気がなかった。しかし、徐々に炭焼きのおいしさが浸透して看板料理に
3 人材
飲食店での経験の有無より、まじめに率先して働く主体性や、笑顔、コミュニケーション力などを重視して採用。
経験より性格や意欲を重視。資格取得のための援助も
飲食店勤務の経験よりも、規律を守るまじめさや前向きに取り組む性格を重視して採用。焼酎ナビゲーターの資格を取得するための費用を負担するなど、成長を促している
4 販促・演出
来店回数に応じて特典が付くポイントカードを配布して、リピートを促進。藁焼きなどの調理風景で店を印象付ける。
調理風景を見せて印象付け。ポイントカードも配布
「日本伝統藁焼炭焼 天晴」の主なメニュー
●アラカルト
- 宮崎名物 本場のちきん南蛮 275ドル(約990円)
- 日南漁師 かつおめし 308ドル(約1,109円)
- 花蓮産 地鶏炭火焼 308ドル(約1,109円)
- 基隆産 かつおの藁焼き塩たたき 275ドル(約990円)
- ささみの明太子天ぷら 242ドル(約871円)
- 刺身鉢盛り(2人前) 462ドル(約1,663円)
- 雲林産 はまぐりガーリックバター 242ドル(約871円)
- 台湾採れ野菜の天ぷら(アスパラ、大根、しいたけなど) 各198ドル(約713円)
- さつまいもの丸ごとスイートポテト バニラアイスのせ 165ドル(約594円)
●コース
- 880ドルコース(全9品) 880ドル(約3,168円)
- 1,100ドルコース(全11品) 1,100ドル(約3,960円)
- 1,320ドルコース(全11品) 1,320ドル(約4,750円)
●ドリンク
- 前割り焼酎 198ドル(約713円)
- 超炭酸ジンビームハイボール 143ドル(約567円)
- 宮崎ひでじビール 宮崎日向夏ラガー 208ドル(約1,109円)
- 宮崎焼酎 日向木挽BLUE 198ドル(約648円)
業態 | 居酒屋 |
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オープン | 2014年9月 |
席 | 46席 |
客単価 | 800~1,200ドル(約2,880~4,320円) |
客層 | 平日はビジネス層、週末はファミリーが多い。 男女比は6:4で、日本人が6割を占める。 |
面積 | 36.191km2(九州は42km2) |
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人口 | 2,350万人 |
言語 | 中国語、台湾語、客家語、その他原住民の言語 |
通貨 | 台湾ドル(文中では「ドル」で表記) |
飲食店数 | 約18万9,000(2010年) (日本料理店約6,457店舗)(2015年) |
平均年収 | 約217万円(2016年) |
店舗周辺エリアの特徴
出典:日本貿易振興機構