2020/08/11 特集

仕事を見直し、効率を高めればロスは減らせる!

コロナの影響が続き、見直したいのが店舗の「ロス」。時間や人件費、食材などのロスを最小限にできれば、効率良く店舗運営ができ、経営の改善につながる。飲食コンサルタントにロスの削減方法などについて聞いた。

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更新日:2022.8.3

目次
今こそロスの削減を意識し、効率の良い店舗運営を目指す
【時間ロス】時間に対するルーズさを改善し、効率的なオペレーションを追求
【人件費ロス】作業効率を上げて、シフトを調整。顧客満足を下げずに人件費を抑える
【食材ロス】売上予測と在庫管理の徹底がカギ。ポーションオーバーにも注意
チャンスロスをしないために――飲食店のあるべき姿を追求する!

 コロナの影響が続き、客数や売上がコロナ禍以前に戻っている飲食店は多くないだろう。そこで見直したいのが、店舗の「ロス」。日々のさまざまなロスを最小限にできれば、効率良く店舗運営ができ、経営の改善につながる。飲食コンサルタントである中西敏弘氏は「食材ロス、人件費ロス、時間ロスの削減が重要」と語る。時間ロスでは業務にかかる時間の目標数値を明確にしてそれを目指すこと、人件費ロスでは開店・閉店作業の効率化を図り、この時間帯の人員を最少人数にすること、食材ロスでは売上予測と在庫管理の徹底することがポイントとしてあがった。

中西フードビジネス研究所 代表 中西敏弘氏
大学時代のラーメン店でのアルバイトをきっかけに、飲食業界に興味を持つ。卒業後、半導体専門販社に就職するが、飲食業への想いが強く、外食コンサルタント企業へ転職。居酒屋の現場を経験後、コンサルタントとして接客研修や店長教育などを行い、大手焼肉チェーンに転職し、チェーンの経営を学ぶ。その後独立し、2003年中西フードビジネス研究所を設立。「10年後も存在できる飲食企業」を掲げ、多数の飲食店をサポートしている。

今こそロスの削減を意識し、効率の良い店舗運営を目指す

 新型コロナの影響で、多くの飲食店が客数と売上の減少で苦しんでいる中で、中西氏は「赤字の“出血”を止めることが大事」と指摘する。固定費を圧縮するとともに、「様々なロスを見直してほしい」と話す。「飲食店で発生しがちなロスには、食材ロス、人件費ロス、時間ロスなどがあります。これらのロスを削減し、出血を最小限にして効率良く店舗を運営することは、大事な視点です」(中西氏)。

 しかし、「ロスを必要以上に削減してしまうと、経営が守りの姿勢になり、伸びる売上も伸びなくなってしまう危険がある」と中西氏は言う。例えば、食材ロス。コロナの影響で集客が思うようにできないため、売上予測が立てにくく、どうしても食材ロスが起こりがち。とはいえ、仕入れの量を絞りすぎると品切れとなり、チャンスロスとなってしまい、売上が上がらない。また、外食の機会が減っているため、来店した人たちは外食への期待は高い。「品切れを起こすことは、再来店や好印象の口コミの芽を摘んでしまうことになりかねません」と中西氏は指摘する。そのため「重要なのは売上予測をしっかり行って、ロスの最小化を目指す姿勢が大事」と呼びかける。

 加えてFL比率を下げることに気をとられすぎると、サービスの低下から顧客満足度を落とし、売上減につながる場合もあることを念頭に置きたい。「来店客を喜ばせるという飲食店の使命を忘れずに、ロスの圧縮に取り組んでほしい」と中西氏は話す。

 では、ある程度の食材ロスが発生することを承知でフードコストをかけた分は、どう調整すればよいだろうか。中西氏は「FLをトータルで考え、食材ロスの分を人件費の圧縮でカバーすること」を提案。例えば、5人のホールスタッフを4人にするなどだ。「ただし、大幅なサービス悪化につながるような人件費の圧縮はやはり避けるべき」と釘を指す。

 そこで、ぜひ取り組んでほしいのが「時間ロス」削減へのチャレンジだ。「最小限の人員で、いかに早く的確に作業ができるかという視点でこれまでの方法を見直し、作業効率を最大化することが大事です」と中西氏。例えば、オープン準備で本来であれば10分でできる作業に20分かかっているような、なんとなく仕事をして非効率になっているものや、作業工程を見直して「生ビール2杯、サワー3杯を3分で作る」といった、具体的に効率を追求するものなど、さまざまな時間ロスを見直したい。「今まで最善と思い込んでいるやり方を、ほかの方法でできないかなどを考えてみてください」(中西氏)。「時間ロス」を削減できれば、「人件費ロス」を防ぐことにもつながり、コストの削減に大きく貢献できるだろう。

 では、次から「時間ロス」「人件費ロス」の削減方法と、品切れを起こさずに「食材ロス」に取り組むにはどのような施策が有効か見ていこう。

【時間ロス】時間に対するルーズさを改善し、効率的なオペレーションを追求

「やることリスト」で時間ロスを削減!

 飲食業界、特に中小の企業や個店で目立つのが「時間ロス」と中西氏は言う。「そもそも時間に対する感覚が、ほかの業界より甘いように思います」(中西氏)。例えば遅刻が多い、ミーティングの途中の休憩時間が守られず戻ってこない、書類の提出期限に遅れるなどが日常的に発生。注意せずに見逃すケースも多く、「これらが損失につながる“時間ロス”であるという認識が、スタッフだけでなく店長や責任者にも乏しい」と中西氏は語る。

 遅刻の常態化や休憩時間のなし崩し的延長は、職場の士気を削ぐ。また、定期的に行うスタッフとの面談が1カ月遅れれば、それだけ評価や昇給の機会が遅れ、スタッフのモチベーションダウンにつながってしまう。さらに、季節メニューの開発が1週間遅れれば、宣伝・販促活動が短くなってチャンスロスを引き起こし、売上にも影響する。1つ1つは些細な時間ロスだが、積み重なれば大きな損失につながることは明らかだ。

 また、来店客が少なくて、スタッフが手持ち無沙汰になったとき、仕事を割り振らずにだらだらさせてしまうことも、よく見かける時間ロスの1つ。さらに、5分でできる作業に10分以上かけているような非効率的な作業を放置することも、時間ロスの典型的な例と言っていい。

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 時間ロスの削減のためには、まずは自店の時間ロスを洗い出すところから始めてほしい。把握できたら、それぞれを減らすために手を打っていく。時間のルーズさを直すには、「緻密なタイムスケジュールを作成し、その管理を徹底することに尽きる」(中西氏)。タイムスケジュールは、文書にして「見える化」し、スタッフに共有。行動が改善できたかを定期的にチェックし、フィードバックすることが大切だ。また、スタッフの手が空いたときのために、「“やることリスト”を作成しておくこと」を中西氏は提案する。清掃やメニュー拭き、面談、ロールプレイングなどをリストアップしておけば、時間ロスがなくせるとともに、スタッフのスキルアップや生産性の向上も期待できる。

 だが、人員が余ったときは、アルバイト・パートスタッフを早上がりさせることが時間ロスの削減に有効であることも事実。「人件費の節約の観点から見れば、早上がりは妥当な方法。ただ、早上がりが続くと、働く意欲を削ぎ、バイトの掛け持ちや離職につながりやすくなるため、あまり多くならないように注意してほしい」(中西氏)。

 一方、オペレーションの改善について、中西氏は「今までのやり方の全てを、一から見直すことが肝要」と解説。その際、「1つ1つの作業にかける時間を明示する」ことを推奨する。数値目標を明確にすることで時間感覚が鍛えられ、時間ロスの削減につながっていく。「ベテランスタッフが効率的なやり方を教えるということも有効です。制限時間を設けて、ゲーム感覚で効率を高めていくのもよいでしょう」(中西氏)。自店の時間ロスを把握し、着実に改善してほしい。

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 飲食店で発生しがちな「人件費ロス」とは、作業量に対して人員が多すぎ、人件費が無駄になっている状態だ。作業量は客数に大きく左右されるため、コロナのために客数の予測が立てにくい現在は、人件費ロスが発生しやすくなっていると言えるだろう。「通常、飲食店では、人件費率(売上に対する人件費の割合)が上がらないように注意します。売上が上がれば人件費率は自然に下がるので、好調な店ほど人件費ロスは発生しにくいですが、今は売上の見込みが立てづらい」と中西氏は解説する。

 人件費ロスに対処するには、人員削減が最大の近道。だが、接客の質の低下やチャンスロスの引き金になるような人員削減は、マイナスに働く危険もある。中西氏は「よく陥りがちなのは、スタッフの数が多いピークタイムの人員を減らすこと」と指摘。これは、顧客満足を犠牲にすることになるので、得策とはいえない。

 そこで、中西氏が提案するのが「開店・閉店作業の効率化を図り、この時間帯の人員を最少人数にして人件費ロスを減らすこと」。下図のように、ディナータイムで5人働く場合、ピークタイム(18~21時までの3時間)には全員そろえるが、その前後の時間帯の人数を調整する。これなら、雇用人数を減らさずに人件費の総額を減らすことができる。

 もちろん、今まで複数人で行っていた開店・閉店作業を1人で行うには、業務を見直し、効率の良いやり方に変えなければならない。中西氏は「時間ロス対策と同様に、すべての業務をリスト化して、それにかかる時間の基準を決めること、同時に作業水準の個人差を最小化するために、完了時の“あるべき姿”を共有することが重要」と話す。例えば、開店前の掃除は、何をどこまで行い、店内をどんな状態(あるべき姿)にするのかを具体的に示し、それぞれを何分で行うか決める。目標がはっきりすることで、作業効率だけでなく、質の向上にもつながるので、ぜひ実践してほしい。

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 冒頭で「今は、品切れを起こさない姿勢が大事」と述べたが、では品切れさせずに「食材ロス」の削減に取り組むにはどうしたらよいだろうか。「食材ロスの原因は、主に発注ミス、ポーションオーバー、営業中のミスの3つ。そのうち、ほぼ8割を占めるのが発注ミス」と中西氏は語る。

 発注ミスとは、使用する食材の量と大幅にずれた量の仕入れをすること。仕入れ量が多すぎれば廃棄処分が生まれ、ロスにつながる。少なすぎれば品切れを起こして、売上を逃す。どちらにしても経営的には大きな損失となるので、適正量の発注は重大事項だ。中西氏は「発注ミスを防ぐためには、売上予測の精度を上げることが重要」と指摘。季節や曜日、天候などを踏まえ、これまでの実績から次の日の売上を予測する。飲食店の売上はさまざまな要因に左右されるため、予測は容易ではなく、コロナ禍の現在はさらに予測しにくい。だが、売上予測の放棄は厳禁。中西氏は「しっかりとデータを取り、週単位・月単位で売上の推移を俯瞰し、予測の精度を上げる努力をしてほしい」と呼びかける。例えば、先週の売上データから来店客の動向を探り、発注内容を調整するなどが必要だ。

 また、発注ミスを防ぐには、在庫管理も重要。中西氏は「規定の在庫量を決めて管理する」ことを推奨する。売上に応じて食材の在庫量をあらかじめ決めておき、その日の売上予測に基づいて発注・在庫管理をするというものだ。「売上見込みが20万円の日と10万円の日では、使用する食材量、すなわち規定の在庫量は異なるので、売上規模別に食材ごとの規定の在庫量を数値化しておくと便利です」(中西氏)。例えば、翌日の売上を20万円と予測した場合、20万円時の規定の在庫量から現在の在庫量を引けば、発注すべき仕入れ量がほぼ正確に算出できる。「曜日ごと、または週末と平日ごとに規定の在庫量を決めておいてもよいでしょう」(中西氏)。

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 さらに、食材の使いすぎである「ポーションオーバー」も食材ロスにつながる。本来、レシピで食材や調味料の使用量や切り方、1皿に盛り付ける量などは、決められていることが多く、計量が必要。だが、慣れてきたり、忙しくなると目分量で作業するため、ポーションオーバーを起こしがちになる。食材の原価率はレシピの分量で算出するので、ポーションオーバーが常態化すると、実際の原価率が上昇し、FL比率を上げ、利益率を下げてしまう。ところが、「ポーションオーバーが食材ロスにつながっており、利益に影響していることに気づいていないこともある」と中西氏。分量が違えば味もブレるため、適正使用量を守る重要性をスタッフに共有することが大切だ。

 そのほか、営業中のミスが食材ロスにつながるのは、注文された料理を間違えて厨房に伝えるオーダーミス、サーブする相手を間違える配膳ミスなどがある。「発生回数は多くはありませんが、作り直しになることもあり、食材ロスや時間ロスに直結します。ですが、再発防止にきちんと取り組まない傾向も顕著」と中西氏は言う。再発防止策としては、まず、オーダー時に必ず復唱することを徹底する。全てのオーダーを聞いてから復唱するより、一品ごとに復唱する“おうむ返し”のほうが、来店客にストレスを与えず、間違いが少なくなるのでおすすめだ。また、サーブ先を間違えないためには、提供皿にテーブルナンバーをメモで貼り付けておくなど、「記憶に頼らない工夫」をすることも有効だ。食材ロスの削減は、利益にもつながることなので、しっかりと対策を行ってほしい。

チャンスロスをしないために――飲食店のあるべき姿を追求する!

 来店客のニーズに応えられないのが「チャンスロス」。食材が足りず料理が提供できなかったり、接客や片付けが間に合わず入店できなかったり、提供スピードが遅れて注文がキャンセルになるなどが挙げられる。中西氏は「チャンスロスは売上を失うだけでなく、再来店の意欲を削ぐ重大な損失」と指摘する。

 一方で、席数の減少などでチャンスロスが生じやすいが、「料理のおいしさ、心地よい接客、提供スピードなど飲食店のあるべき姿を追求すれば、チャンスロスは最小限にできます。どんな状況でも、どうしたらお客様に喜んでもらえるかを考えてほしい」と中西氏。顧客満足度を高めることがチャンスロスの防止につながり、店の評価にも結び付くと肝に銘じたい。

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