更新日:2024.1.25
コロナ禍の逆風の中、好調を維持している焼肉業態。その成功のポイントとして、飲食店コンサルタントの二杉明宏氏(株式会社船井総合研究所)は、「消費者ニーズとのマッチ」「感染予防◎のイメージ」「“ツイてる”立地での出店」「客層・シーンの変化への対応」「省人化&DX化」「メニューのコストパフォーマンス」をあげる。また、DX化を進めつつ1人焼肉ニーズを獲得している「お肉屋さんのひとり焼肉 若江岩田駅前店」のほか、特急レーンでの料理の提供とリーズナブルな価格設定で人気の「380円レーン焼肉 火の国 袋井店」、鶏焼肉とレモンサワーの組み合わせで集客に成功している「とり焼肉酒場 鶏ん家」の事例を紹介。焼肉業界が好調な理由に迫る。
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<目次>
■飲食店コンサルタントが語る焼肉業界、好調の理由
【キーワード1】消費者ニーズとのマッチ
【キーワード2】感染予防◎のイメージ
【キーワード3】“ツイてる”立地での出店
【キーワード4】客層・シーンの変化への対応
【キーワード5】省人化&DX化
【キーワード6】メニューのコストパフォーマンス
「これからの飲食業界に求められるもの」とは?
■人気店の事例に見る焼肉業界の強みとメリット
【SPECIAL INTERVIEW】株式会社1&Dホールディングス 代表取締役社長 髙橋 淳 氏
【CASE1】お肉屋さんのひとり焼肉 若江岩田駅前店
【CASE2】380円レーン焼肉 火の国 袋井店
【CASE3】とり焼肉酒場 鶏ん家
飲食店コンサルタントが語る焼肉業界、好調の理由
【キーワード1】消費者ニーズとのマッチ
外食に求めるごちそう感&特別感。家で食べる頻度の少なさもプラスに
コロナ禍により時短営業や休業、事業規模の縮小などを余儀なくされた飲食業界。その中で目を引くのが、焼肉業態の強さだ。2020年における売上の前年同月比の推移(下表)を見ると、焼肉業態は最初の緊急事態宣言下の2020年4月こそ約30%まで落ちたが、その後、急速に回復し、Go Toキャンペーンが実施された10~11月はともに前年を上回っている。2回目の緊急事態宣言下の今年2月からの回復も速かった。一方、居酒屋は2020年4月に10%以下まで落ち込み、その後の回復も緩やかで苦戦が続いている。また、ぐるなび調べによる「2021年に食べたいメニュー」(下表)でも、焼肉が1位で、ニーズの高さが読み取れる。では、なぜ焼肉は今、消費者に選ばれているのだろうか。
株式会社船井総合研究所の二杉明宏氏は、「焼肉ニーズの高まりは、以前から見られた傾向。それがコロナ禍によって加速した」と指摘する。焼肉が選ばれる理由の一つは、圧倒的な〝ごちそう感と特別感〞だ。焼肉の主力食材である牛肉は、鶏肉や豚肉と比べると単価が高く、家庭の食卓に上る頻度も少ない。加えて、「焼肉が家庭調理のカテゴリーから消えつつある」(二杉氏)ことも理由の一つ。かつては、家のホットプレートなどで焼肉を楽しむ光景は珍しくなかった。だが、一軒家からマンションなどへの住環境の変化や、共働きの増加により、「臭いが室内に残る」「後片付けが大変」といった理由で敬遠されるように。やがて、〝食べたいけれど、家ではあまり食べない(食べられない)〞メニューの代表的な存在となり、消費者が外食の価値を強く感じる業態になったのだ。さらに今は、外食の頻度が減っているため、「少ない機会を無駄にしたくない」という心理から、満足度の高い焼肉業態が一層選ばれやすくなっている。
とはいえ、全ての焼肉店が繁盛しているわけではなく、消費者ニーズも好調の一要因にすぎない。その他のキーワードも含めて、飲食業界全体が参考にできる要素も多い。苦境を乗り越え、次の成長につなげるヒントにしていただきたい。
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【キーワード2】感染予防◎のイメージ
換気機能をいち早く、かつ具体的にアピールし、“安心感”を醸成
感染予防策をしっかりと行うことは、今やあらゆる場所で不可欠の取り組み。飲食店では、食事する際に必ずマスクを外すため、より一層重要度は増す。「飲食店における感染予防の不徹底を気にするお客様は依然として多いです。『お店のスタッフがマスクをずらして会話をしていた』などと、クレームが入ることも珍しくありません」と、二杉氏は指摘する。
入店時の検温や手指の消毒、客席のソーシャルディスタンス、スタッフの正しいマスクの着用などと合わせて、エアロゾルによる感染などを予防するために換気の重要性も指摘されている。多くの飲食店も換気をしているが、仮に窓を開けていても、窓から離れた奥の席までしっかり空気が循環しているかなど、把握はしづらい。その点、焼肉店はテーブルごとに吸気ダクトが付いているケースが多く、換気のための新たな設備投資や対策が最小限で済む店が多かったことや、消費者にとって目の前で換気が行われていると実感しやすいことが、他の飲食店にはない強みになったといえる。
ただ、「換気機能の優位性自体が、消費者の来店動機に直結しているとまでは言いきれない」と二杉氏。むしろポイントは、焼肉=換気が良いというイメージを作った情報発信にある。実際、「焼肉店の中には、ダクトのメーカーと連携し『3分ごとに店内の空気が入れ替わっています』といった具体的な情報を、早い段階から積極的に発信したところもあります」と二杉氏。それを見た消費者が、焼肉店のテーブルに設置された排気設備などを思い起こし、安心感が醸成された可能性はある。
他業態でも、消費者に安心感や信頼感を持ってもらい、選ばれやすい店になるためには、あらゆる感染予防策とともに、説得力のあるアピールが重要。目に見える予防だけでなく、換気や目に見えない対策を徹底し、それをしっかりと消費者に伝えることが肝心だ。例えば、店内の二酸化炭素濃度を測定し公表することも一案。感染予防策に積極的な店として、イメージアップを図ることもできるだろう。
【キーワード3】“ツイてる”立地での出店
郊外やロードサイドなど、住宅地に近い場所は、集客力の回復も早い
焼肉業態がコロナ禍で好調を維持している大きな理由として二杉氏が挙げるのが、「〝ツイてる立地〞への出店が多かったこと」だ。
〝ツイてる立地〞とは、緊急事態宣言などによる集客の落ち込みが小さく、解除後の回復も早いエリアのこと。具体的には、郊外やロードサイド、居住者が多い地域の駅前商圏などだ。一方、〝ツイてない立地〞とは、オフィス街や観光地、繁華街などで、売上の落ち込みが大きく、回復のめども立ちにくい。「例えば、東京駅周辺でも、丸の内や大手町など完全なオフィス街は、なかなか客足が戻りませんが、八丁堀など、同じオフィス街でも近くに住宅地があると比較的回復が早い傾向にあります。人が住んでいるところに近いかどうかが、ツイてる立地かどうかの分岐点」と、二杉氏は語る。
これは、ステイホームやリモートワークが推奨され、会食や宴会の自粛が要請されたことから必然的に生まれた現象。昼のオフィス街と夜の繁華街から消えた人々が、それぞれ居住する地域でランチとディナーの店選びをしているため、立地の明暗がはっきりと分かれた形だ。「日本人の胃袋の数が急速に減ったり、サイズが小さくなったわけではなく、食べる場所が住宅地近くに偏ってしまっただけ」(二杉氏)で、これが立地による優位性につながっている。
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では、焼肉店の出店エリアはどうか。繁華街の居酒屋を業態変更して成功したケースも含めて、オフィスや繁華街にも焼肉店はあるが、「焼肉業態のメインの出店立地は、ターゲットであるファミリーが来店しやすい住宅地に近いエリア」(二杉氏)だ。その背景には、排気ダクトなど特有の設備が必要な焼肉店が、ハードの問題で繁華街の飲食店ビルなどに出店しにくいという事情もある。元々焼肉業態が郊外やロードサイドを中心に出店してきたことが、図らずも功を奏したといえる。
立地と業態には相性があり、どんな業態でも〝ツイてる立地〞なら繁盛するとは限らない。だが、コロナ禍で変化したライフスタイルが、収束とともに完全に元に戻るとは考えにくい。「明らかになった〝ツイてる立地〞にフォーカスした出店計画なども検討の余地がある」と二杉氏は語る。
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【キーワード4】客層・シーンの変化への対応
宴会や接待などのグループユースから1人~少人数のパーソナルユースへ
コロナ禍による客層や利用シーンの変化も焼肉業態には有利に働いた。二杉氏は「元々、焼肉業態の主な客層は、家族や友人などの小グループ。企業の宴会や接待で選ばれにくい半面、ファミリーの日常使いや記念日などで利用されてきました」と解説する。一方、居酒屋の客層は、ビジネス層が中心。仕事帰りに同僚との1杯といった、少人数の日常使いもあるが、忘年会や歓送迎会などオフィシャルな大人数での宴会の受け皿でもあった。そのため、企業の接待や宴会が軒並み自粛となったことで、一気に集客力がダウン。対照的に、焼肉業態の客層や利用シーンは、コロナの影響を受けにくかったことから、業態間で集客力に大きな格差が生まれる結果になったのだ。
だが、こうした格差は、実はコロナ以前から徐々に始まっていた。「消費税率が10%に引き上げられた2019年10月、居酒屋業態の売上が前年同月比の水準を下回る一方、焼肉業態は100%以上と好調でした。この背景には、外食の利用動機が、すでにグループユースからパーソナルユースへとシフトし始めており、焼肉業態はこの傾向にいち早く反応し、市場をリードしてきたから」と指摘する。
象徴的なのが、2018年に出店した1人焼肉業態「焼肉ライク」(株式会社ダイニングイノベーション)だ。各卓に1台ずつロースターを配置して〝1人で焼肉〞という新しい利用シーンの開拓に成功。個食が推奨されるコロナ禍により、さらに注目を集めることになった。また、居酒屋でも同様の傾向は見られた。「コロナ禍以前に、大きな宴会場を持たない少人数向けの大衆酒場『鳥貴族』(株式会社鳥貴族ホールディングス)や、『串カツ田中』(株式会社串カツ田中ホールディングス)が好調だったのも、パーソナルユースのニーズの高まりの表れ」(二杉氏)と言える。
こうした流れを見れば、今後の飲食業界で、パーソナルユースの重要度はますます上がるはず。二杉氏は「少人数の日常使いをいかに獲得するかという視点が大切になる」と断言。お1人様やプライベートの少人数グループが気軽に楽しめるサービスや業態開発が必要不可欠になりそうだ。
【キーワード5】省人化&DX化
セルフレジや運搬ロボットなど、人手不足対策はさらに重要に
省人化とDX化(デジタルトランスフォーメーション=IT技術やデジタル技術の活用によって製品・サービスやビジネスモデルを変革していくこと)も、好調な焼肉店に共通する特徴の一つ。「焼肉業態は、メインの調理である〝肉を焼く〞という工程をお客様がやってくれるので、厨房も含めて省人化がしやすい業態」と二杉氏。大手焼肉チェーンの多くがタッチパネルのオーダーシステムを導入するほか、「焼肉の和民」(ワタミ株式会社)は料理提供用の特急レーンや運搬ロボットで省人化を進めている。また、「0秒レモンサワー仙台ホルモン焼肉酒場ときわ亭」(GOSSO株式会社)は、全卓にセルフ式のレモンサワーサーバーを設置し、省人化と来店客のオーダーストレスの解消を実現した。ほかにも、スマートフォンによるモバイルオーダーや、ウエイティングの自動案内、セルフレジなどの導入も、焼肉業態に見られる傾向だ。
二杉氏は「生産性を上げて収益率を最大化することは、飲食企業にとって不可欠な命題となっており、そのために省人化などを推進する企業が増えるのは自然な流れ」と強調する。しかも、以前であれば「省人化=サービスの質が下がる」と受け取られかねなかったが、今は省人化による非接触サービスをポジティブな要素として捉える消費者が増加。加えて、提供スピードのアップなどのメリットもあり、「今後、コロナ禍が落ち着き、経済活動が活発になれば、人材採用が難しくなり、飲食業界がさらなる人手不足に陥る可能性も高い。そうした将来も見越して、今こそ省人化などに本腰を入れるチャンス」と、二杉氏は呼び掛ける。
もちろん、業態や店の規模によって取り組める範囲に差があるのは当然。例えば、高齢者の来店が多い店で一気にDX化を進めれば、客離れを引き起こす原因にもなりかねない。自店の現状に合った対応が必要だが、「それも過渡期特有の現象」と二杉氏。「消費者への浸透が進めば、オペレーションコストは一気に下がり、新たな収益構造が見えてくるはず。まずは、可能な部分だけでも取り組んでいただきたい」とアドバイスする。一方で、人がやることで外食の価値を感じてもらえる部分があることも事実。省人化などで収益性を高めつつ、どこに人材を配置し、どんな価値を生み出すのかを追求していくことも重要になるだろう。
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【キーワード6】メニューのコストパフォーマンス
お得感は依然強い引きに。SNS映えなど、視覚的な訴求も効果的
好立地に店を構え、客層・利用シーンの変化に対応したとしても、来店客の満足度が低ければ再来店の可能性は下がってしまう。飲食店にとって常に問われるのが、〝料理やサービスで、いかに価値を感じてもらうか〞だ。「今は外食の機会が減っているため、コストパフォーマンスの良さやエンタメ性、希少性などがないと選ばれにくくなっている」と二杉氏。この点においても、焼肉店はメニュー開発に力を入れてきた。
例えば、「焼肉きんぐ」(株式会社物語コーポレーション)は、ランチで焼肉とソフトドリンク食べ飲み放題(100分、2178円)を提供。幼児は無料、小学生は半額、60歳以上は300円引きにして3世代の心を捉えた。また、「焼肉ライク」は肉の部位や量を選べる1人用のセットメニューで1人客のニーズをキャッチ。「0秒レモンサワー仙台ホルモン焼肉酒場ときわ亭」は、レモンサワーのセルフサーバーを各テーブルに設置して外食の楽しさを感じてもらい、ファンを獲得した。さらに、「かみむら牧場」(ワタミ株式会社)は、鹿児島県の和牛生産者・カミチクグループとタッグを組み、上質な和牛の安定的な供給と、高いコストパフォーマンスを実現した。
こうした取り組みは、簡単に真似できるものばかりではない。しかし、外食の頻度が少なく、消費者の財布のひもが固い今、「お得感を感じてもらうために、原価をかけるべきメニューには、しっかりかける」(二杉氏)といった工夫が必要だ。二杉氏は「今は家賃交渉がしやすく、省人化などを進めれば生産性の向上も見込めます。これまでのやり方に捉われずに、食材に原価をかけた上で利益もしっかり出る収益構造を構築することは可能」と語る。もちろん、低価格だけに価値があるわけではない。安価な居酒屋でも高級店でも、いかに期待値を上回る料理やサービスを提供するかという戦略が重要だ。
また、焼肉店で記念日の肉ケーキや階段盛りなどを出す店は増えており、「若い層を中心に、依然としてSNS映えに代表される〝視覚的にわかりやすい価値〞も重要」と二杉氏。いずれにしても、さまざまな角度から来店客に外食の価値や楽しさを感じてもらう工夫が求められているといえる。
二杉氏が考える「これからの飲食業界に求められるもの」とは?
テイクアウトや“二毛作”など、変化に対応できる業態開発を!
今、飲食業界では、他業態から焼肉業態への転換が増えています。成長市場に参入することは“時流適応”の一つ。有効なアクションではありますが、焼肉業態は調理工程がシンプルで参入障壁が低いので、競合店が一気に増加するかもしれません。参入者が増えると、衛生管理のレベルが低い店も現れ、食中毒などの問題が発生したときに焼肉業態全体のイメージダウンにつながる可能性もあります。安易な業態替えではなく、売りをしっかり作り、収益性の高い経営基盤を確立して地域の一番店になる戦略が必要。そうでなければ、自粛などで「7割経済」と呼ばれている今の市場では生き残っていけません。
コロナ禍で、飲食業界は一つの事業だけに注力する危うさを、嫌というほど思い知りました。店内営業だけでなく、さまざまな販売チャネルを持つなど、事業全体を見直すことが大切です。そこで、私たちが提案している業態が、住宅地での“二毛作”です。ポイントは、昼は食堂とテイクアウト、夜は大衆酒場という2つの顔を持っていることです。この業態のいいところは、店内飲食に制限がかかると、自然と売上の軸がテイクアウトにシフトし、逆に経済が動き出すと、テイクアウトが減る代わりに店内飲食が増えていくという点。状況に応じて、商圏に住む人々の日常的な食事ニーズを、昼も夜も取り込むのが狙いです。また、物販やネット通販に参入するのもおすすめ。現在は、こうした事業再構築には国から補助金も出るので、新しい事業を始めやすい状況です。
加えて、これからは、スマートフォンが販促における中心的なデバイスになっていくはず。販促のみならず、オーダー、決済、顧客管理、情報発信などを一元化していく流れになるでしょう。LINEをはじめ、その種のアプリの開発は進んでいますから、導入を検討するのも一案です。
コロナの収束について、まだ出口は見えません。今は守りを固め、キャッシュフローを管理するとともに、スタッフの雇用を守ることが大切。一方で、現在は、数年来のチャンスともいえます。いい物件が空き、人材採用もしやすい。補助金などの支援も、平時では考えられないような条件で受けられます。目の前の危機だけに目を向けず、10年後の未来を明るくするために、前に進んでいただきたいです(二杉氏)。
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人気店の事例に見る焼肉業界の強みとメリット
【SPECIAL INTERVIEW】株式会社1&Dホールディングス 代表取締役社長 髙橋 淳 氏
1965年に髙橋淳氏の父・健次氏が鯨肉を扱う「髙橋商店」として創業。2016年にホールディングス化。傘下には、焼肉店「ワンカルビ」、しゃぶしゃぶ店「きんのぶた」など外食店127店舗を展開する株式会社ワン・ダイニングと、主に食品スーパーや商業施設の中に食肉小売店を55店舗展開する株式会社ダイリキがある。2020年には1人焼肉業態「お肉屋さんのひとり焼肉」を出店。他社にはない強みを生かした新業態で話題に。
食肉販売と飲食事業を手掛けるグループ全体のノウハウを、1人焼肉の新業態に凝縮しました
株式会社1&Dホールディングス傘下で、西日本を中心に焼肉店「ワンカルビ」などを展開する株式会社ワン・ダイニングと、食肉販売店を展開するダイリキ株式会社。そのダイリキが昨年9月、大阪・東大阪の若江岩田駅前にオープンした「お肉屋さんのひとり焼肉」が好調だ。自社の強みを生かした新業態の開発経緯や特徴などを、代表取締役社長の髙橋淳氏に聞いた。
――まず、「お肉屋さんのひとり焼肉」の、出店経緯を教えてください。
若江岩田のスーパーマーケットにダイリキの精肉店が出店していたのですが、2019 年にそのスーパーが閉店したのがきっかけです。常連のお客様も多かったことから、若江岩田駅近くの高架下に精肉店を出すことにしたのですが、精肉店単体でスーパーほどの集客力は望めません。そこで、自社の肉を使った焼肉店を併設することにしたのです。〝1人焼肉〞の業態にしたのは、ここ数年でお1人様のマーケットが拡大し続けていたから。扱う肉を精肉店と焼肉店で共有することで、相乗効果による集客アップはもちろん、ロスの削減にもつながります。ダイリキにとって飲食事業は初めてなので、グループ会社のワン・ダイニングが持つ飲食業のノウハウを活用しました。
――メニュー構成や店づくりでは、どんなことにこだわったのでしょうか。
1人客がターゲットなので、「上ハラミ&ダイリキカルビ&牛タン定食」など11種類の定食を主力メニューとしました。ほか、追加オーダーを取るために、ホルモンなどの単品メニューも12種類用意。併設する精肉店と共有する厨房でカットした肉を使用することで、最もおいしく鮮度の高い状態で提供できるのが強みです。また、QRコードを活用したモバイルオーダーやセルフレジを導入することで、省人化や非接触サービスも実現しています。モバイルオーダーの導入で、提供遅れの原因になる人為的なオーダーミスや、ピーク時に「店員を呼んでも来ない」というような状況も発生せず、オーダーから3分以内での提供を実現できています。このほか、コロナ禍でのニーズを踏まえ、非接触型の検温装置や可動式のパーティションなども導入しました。
――出店後は行列ができるなど、好調が続いています。要因はどこにあるとお考えですか。
「食肉販売のダイリキが出した焼肉店」というストーリーがお客様の期待につながったのではないかと思います。出店前は、ビジネスマンや学生の1人客がメインになると予想していましたが、精肉店をご活用いただいているシニア層やファミリーも多く、客層は幅広いです。特に、現在、コロナの影響で、スーパーなどに試食コーナーが設置できないため、焼肉店が代わりに〝肉の味を確かめる場所〞という立ち位置になっており、他の店にはない武器になっています。まさに1&Dグループとしてトータルのノウハウを凝縮した新しい業態だと感じています。1号店の成功を受けて、昨年12月には、もともと改装を予定していた「ダイリキ」の「イトーヨーカドー八尾店」(大阪)と併設する形で2号店を出店。1、2号店ともに、精肉店と焼肉店が相乗的に売上を伸ばしています。
――飲食店の経営や業態開発をする上で心掛けていること、決めていることはありますか。
食肉を扱うプロという自社の強みをどうやったら最大限に生かせるか、ということは常に考えています。また、FC展開はせず、全店舗直営にしているのもこだわり。その理由は、店舗運営におけるスピリッツやノウハウ、方向性をスタッフにしっかりと浸透させるため。そして、セントラルキッチンを設置せず、各店舗に技術を持った職人を配置するためです。FC展開やセントラルキッチンによる効率化よりも、食材や料理、サービスのクオリティーにこだわっているので、この方針は今後も変わりません。
――店舗展開を含めて、今後の展望を教えてください。
現在、スーパーの食料品売り場は以前と違い、単純に売るだけではなく、〝体験できる〞〝学べる〞〝楽しめる〞場所にしようという流れがあります。「お肉屋さんのひとり焼肉」の併設は、こうした動きにマッチするので、今後も既存の精肉店とセットで展開していきたい。また、ワン・ダイニングの店舗も、モバイルオーダーの導入を進めていきます。一方で、人が行う接客も大切にしていきたい。人がやらなくてもいい部分は徹底的に効率化しつつ、人がやるから価値が出るサービスや店内での加工・調理などは今後も磨き続けます。この先も、コロナ禍のように社会全体の価値基準が変わるような出来事は起こりうると思います。その中でも、自社の強みをしっかり認識し、決してぶれず、愚直に事業を展開していきたいと考えています。
【CASE1】お肉屋さんのひとり焼肉 若江岩田駅前店
精肉店を併設して、1人焼肉業態を出店。相乗効果で集客に成功! 省人化で提供の早さが向上。非接触で安全・安心も実現
大阪・若江岩田駅近くに、2020年9月オープンした「お肉屋さんのひとり焼肉 若江岩田駅前店」。経営は食肉販売を手掛ける株式会社ダイリキで、同社が運営する精肉店「ダイリキ焼肉市場」も併設。〝精肉店が出した焼肉店〞として、行列店となっている。
特徴は、省人化と非接触に重点を置いていること。来店客は、自動検温機能付きの受付機で番号札を取り、スタッフの案内で客席へ。客席は可動式パーティションで仕切られ、1台ずつ無煙ロースターが設置されている。注文は、モバイルオーダー(口頭でのオーダーも可能)で、会計もセルフレジで行う。全24席が埋まるピーク時でもフロア3人、キッチン2人で回しており、「スタッフは、メニューの丁寧な説明や迅速な商品提供といった業務に集中できています」と、店長の金川隆祐氏はメリットを語る。
肉は隣の精肉店でカットしたチルド肉を使うことで鮮度の高い状態で提供。部位ごとに焼肉に最適な厚みや切り込みを入れるなど、精肉のプロならではの技が光る。メニューは、一番人気の「上ハラミ&ダイリキカルビ&牛タン定食」(120g /968円〜)など、11種類の定食がメイン。幅広い客層を想定して、肉の量は3サイズ(120g 、150g 、200g )を用意している。このほか、追加オーダー用に12種のホルモンを含む単品20種、サラダや冷麺などのサイドメニュー10種をラインナップ。さらに、月ごとに期間限定メニューも打ち出して常連を飽きさせない。売上構成比は、定食が約80%、ドリンクが約6%、残りが追加オーダー分で、「お酒を飲みながらというより、食事ニーズが高く、お1人あたりの滞在時間はおよそ30分です」と、金川氏は語る。
客層は20〜30代が中心で、男女比は半々。「お1人様は5割程度で、予想以上にファミリーやカップル、友人同士など少人数での来店も多いです。家族で来ても、それぞれ自分のペースで焼けるスタイルが受けているのかもしれません」と、金川氏は分析する。
加えて、精肉店と併設しているメリットも実感。「焼肉店は、いい肉を安く提供でき、精肉店では焼肉を食べた帰りの〝ついで買い〞が増えています」と金川氏。高まるお1人様ニーズを捉え、精肉店併設のメリットと省人化で、良質な肉をリーズナブルに提供し、地域の人気店に成長している。
大阪府東大阪市岩田町4-18-33
http://www.dairiki.co.jp/hitoriyakiniku/
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【CASE2】380円レーン焼肉 火の国 袋井店
料理を運ぶ配送レーンなどで省人化&380円均一を実現! 人件費を抑えることで、質の良い肉をお得に提供
静岡県浜松市に本社を置く株式会社ランドマーク。創業した22年前はイタリア料理店や居酒屋、焼肉店などを経営していたが、2008年のリーマンショックを機に焼肉店に特化。「理由は、唯一、焼肉業態の業績が落ちなかったから。不況でも客離れが少なく、記念日に選ばれやすいのもポイントでした」と、取締役副社長の久保田奈津美氏。浜松市と近隣都市でのドミナント戦略で、立地や客層に合わせて価格帯やメニュー構成の異なる4業態8店舗を展開している。
中でも好調なのが、静岡・袋井市の郊外にある「380円レーン焼肉火の国袋井店」だ。2019年3月、幹線道路沿いにオープンし、昼は主婦、夜と週末はファミリーを中心に集客している。人手不足解消のため、タブレットでの注文、自動配送レーンでの提供、巡回ロボットによる空き皿の回収などを導入しており、「週末の忙しい時間帯でも、ホールスタッフ3人で120席を回せています。配送レーンを使用していることで、提供スピードが早いこともメリットです」と、久保田氏は語る。
メニューの特徴は、「国産牛カルビ」や、見た目にインパクトのある「一本ドラゴンカルビ」なども含め、単品メニューを全て380円(税抜き)均一にしていること。リーズナブルな価格設定の背景には、省人化で人件費を抑えていることに加え、8店舗のスケールメリットを活かした牛の一頭買いや大量仕入れ、セントラルキッチンの活用などがある。「単純に安さだけを追求するのではなく、食材には原価をかけて、肉の質、おいしさにもこだわっています」と久保田氏。また、昼は「ランチ限定食べ放題」(2178円)や4種類の「ランチセット」(ドリンクバー付き1480円)を含む7種類の定食も用意し、一人客からファミリーまで幅広く集客している。
昨春は売上が落ちたものの、6月以降は客数が回復。地元のファミリーにより支持されるようになり、リピーターが増えている。。厳しい状況でも好調を続ける要因は、「換気がよいことと、ファミリー向けの手頃な価格帯、肉のおいしさだと考えています」(久保田氏)。
今後は、各店舗にモバイルオーダーシステムを導入する予定。メニューも、「支払総額がわかりやすく、ファミリーに好評」(久保田氏)なことから、食べ放題に重点を置く方針だ。
静岡県袋井市川井71-2
https://r.gnavi.co.jp/5refc60w0000/
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【CASE3】とり焼肉酒場 鶏ん家
レモンサワーと鶏焼肉の相乗効果で追加注文数がアップ! リーズナブル&ヘルシーな鶏焼肉でビジネス層を獲得
水炊き専門店「博多華味鳥」など、国内外に約40店舗を展開するトリゼンダイニング株式会社。飲食事業に加え、自社グループ内でブランド鶏「華味鳥」の養鶏、加工、販売も手掛けている。そんな自社の強みを生かした新業態が、2020年11月、オフィスが集まる福岡・渡辺通にオープンした「とり焼肉酒場 鶏ん家(とりんち)」だ。華味鳥を使った鶏焼肉をリーズナブルに提供し、近隣に勤める30〜50代のビジネス層を中心に集客している。「脂身が多くやわらかい華味鳥は串打ちしにくく焼鳥には不向き。最もおいしく食べられる方法として、たどり着いたのが焼肉でした。福岡には、水炊きや鶏皮串など鶏肉の名物が多いですが、鶏焼肉は扱う店が少なく、他店と差別化もできると考えました」と、店長の高橋徹氏は語る。
看板メニューの「名物一枚ももカルビ」(890円)は、もも肉に塩とハーブで下味を付けて一晩寝かせたもので、30㎝ 、約270g のボリューム感が特徴。一番おいしい状態で食べてもらうために、スタッフが客席で焼くサービスも好評で、95%の注文率を誇る。ほかにも、自家製バジルソースに漬けた「バジルレモンハラミ」(570円)や味噌ダレに漬け込んだ「鶏ホルモン盛り」(860円)などが人気。「鶏肉は淡泊なので、お酒に合うように濃い目の味付けにしています」と、高橋氏はこだわりを語る。
ドリンクは、国産レモンを使ったレモンサワーが売りで、一番人気の「鶏ん家純レモンサワー」(460円)など、7種類をそろえる。しっかり味付けされた鶏肉との相性も良く、肉の追加オーダー時には、多くの人がレモンサワーなどのドリンクも注文。「レモンサワーの平均オーダー数は一人4〜5杯。予想以上の人気で客単価も3500円と、想定より1000円ほど高いです」と、高橋氏は笑顔を見せる。
今年5月には鶏の一品料理を11種類増やすなど、メニューを強化。卓上の調味料も一新し、マスタードやタルタルソースなど15 種を用意して〝味変〞が楽しめるようにした。「常連のお客様を飽きさせないように変化を加えながら、鶏焼肉を浸透させたい」と高橋氏。現在、「鶏ん家」の好調ぶりに手ごたえを感じており、今後、同業態での店舗展開を進めていく予定だ。
福岡県福岡市中央区渡辺通2-2-12
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