2021/06/17 挑戦者たち

株式会社アンドセイス 代表取締役 梶原 剛 氏

「酒と銀シャリせいす」など、北海道・札幌で7 店舗を展開する株式会社アンドセイスの代表取締役・梶原剛氏。物件から得たイメージを軸に業態やコンセプトを練るスタイルの発想の源と、今後に向けた戦略を聞いた。

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物件ありきの業態開発が自分の成功パターンと再認識しました

――高校卒業以来、飲食業界ひと筋ですが、この世界に入ったきっかけは?

 明確な目標や目的があって飲食業界を選んだわけではありません。高校時代に所属していた野球部の監督から、「梶原はホテルマンに向いている」と言われて就職したのがきっかけ。そのホテルのレストランで、3年間サービスを経験しました。その後、札幌・すすきののダイニングバーに転職したのですが、しばらくして閉店してしまい、友人を頼って東京へ。生活の基盤を作るために飲食店に住み込みで働いた後、高級店などにスタッフを派遣する配膳人紹介所に登録しました。そこで、日本料理やフレンチの有名店など約30店舗で勤務後、和食の老舗から誘いを受け、系列店の支配人として3年ほどマネジメントを担当しました。

 こうして振り返ると、いろいろな店を転々としていますが、それでも飲食業を続けられたのは、子どものころに料理上手の祖母を手伝った楽しい記憶が根底にあったからかもしれません。

――その後、札幌に戻って開業しますが、すぐに独立したわけではないですね。

 東京で13年ほど働いた後に北海道に戻り、飲食企業に就職。入社2年目には役員になって、店舗運営を任されるなど、この会社には8年間勤めました。

 そして2015年に独立1店舗目として、札幌に古くからあるアーケード商店街・狸小路にオープンしたのが「Oyster Bar SALT MODERATE」です。当時、札幌にはあまりなかったオイスターバーと、トレンドだった熟成肉、そこにハワイアンテイストを加えたオリジナルの業態です。これが狙い通り評判となり、順調な船出が切れました。

 もともと、独立から2年で3店舗を目指していたのですが、1店舗目が思いのほか好調だったことから、1年目で3店舗の出店を実現。2017年には株式会社アンドセイスを設立し、狸小路に「酒と銀シャリせいす」を出店しました。

Tsuyoshi Kajiwara 1973 年、北海道・小樽市生まれ。高校卒業後、札幌のホテルなどに勤務 し東京へ。焼き鳥店や日本料理店、フランス料理店など約30 店舗で経験 を積んだ後、北海道に戻り、飲食企業に8 年ほど勤務。2015 年に独立・ 開業。「酒と銀シャリせいす」ほか、7 店舗を運営する。

――「酒と銀シャリせいす」は、全国から注目される人気店に成長しました。

 物件を見たときに浮かんだ〝大好きだったおばあちゃんに捧げる店にしたい〞という思いを表現した店です。祖母が作ってくれたご飯のように、おいしくて懐かしい料理を提供して、大人が落ち着いて楽しめる居酒屋を作ろうと考えました。食材は米からこだわり、器や料理の見せ方のほか、大きなのれんを掲げるファサードなど店舗デザインにも注力。高級過ぎず、かといって大衆的過ぎない雰囲気にしました。客単価は4000円以上と札幌の居酒屋としては安くないですが、これがヒット。月商800万円前後という予測でスタートしましたが、ふたを開けてみれば1000万円オーバー。正直、驚きましたが、このときの経験から、物件を見たときに感じたインスピレーションや、頭に浮かんだ世界観を基に飲食店の業態を決めていくことが、自分にとっての成功パターンかもしれないと思うようになりました。

 2018年には「せいすスタンド」をオープンしましたが、これも物件ありきの発想です。間口が広く奥行きが狭い店舗を見たとき、「ずっとやりたかった立ち飲み店ならいけるかもしれない!」と、ひらめいたんです。そこに「酒と銀シャリせいす」の人気メニューをリーズナブルに提供するというコンセプトを加えました。10坪の店でしたが月商700万円を超える人気店になりました。

 物件を見たときに「この業態ならうまくいきそう」という感覚は、東京のさまざまな名店で店舗運営に関わった経験から、自分の中に蓄積してきた〝成功や失敗のセオリー〞によって導き出されていると思います。「酒と銀シャリせいす」の2階に2019年にオープンさせた居酒屋「純情」のテーマは、〝昭和を感じさせる店〞。私自分が好きな昭和の空気感を表現するのにぴったりの場所だったことと、昭和の時代に憧れや郷愁を抱く人が多いと感じたことが出発点で、こちらも狙い通り好調です。

――2020年は新規出店もされていますが、コロナ禍の影響はいがかですか。

 昨年は4月以降、どの店もじりじりと売上が落ちていったので、2週間かけてテイクアウトとデリバリーの商品を開発し、宅配と持ち帰りをメインにした新店「出前せいす」(イートイン可)を立ち上げました。見た目にもこだわったオードブルなどが好評で、売上の補填につながっています。

 また、11月には狸小路7丁目のビル地下1階と1階に「ルマンド」「梶原ビリヤード」をオープンしました。地階の「ルマンド」は、もともとクラシックなどを楽しむ名曲喫茶だった空間を活かした、スナックとショットバーを融合したような業態。1階にある「梶原ビリヤード」は、ビリヤード店だったレトロな空間をおしゃれな雰囲気に改装した鉄板焼き店です。さらに、今年4月には、「酒と銀シャリせいす」の隣に中国料理店「ニュー花園」もオープンしました。故郷の小樽で、子どもの頃に行った中華屋の雰囲気を作り込み、男性スタッフは白スーツに蝶ネクタイ、女性スタッフはメイド服で接客するなど遊び心も加えました。これらの出店は、コロナ禍でいい物件が空いたこともきっかけの一つですが、「当社=せいす」のイメージが強くなりすぎたため、全く別の方向性を打ち出したいという思いから生まれた業態でもあります。

 その結果、「ルマンド」は、新しいスタイルとして受け入れられ滑り出しは好調。「ニュー花園」も、コロナ禍での食事需要を捉えて想像をはるかに超える売上を記録しています。

 一方、「梶原ビリヤード」は、採算ベースではあるものの、期待したほどの伸びがありません。自分の中では理由が明確で、「梶原ビリヤード」だけは、先に業態を決めて物件にはめるという、従来とは違う出店方法をしたんです。「物件を見て描いた世界観を大切にする」という従来のやり方が、自分にとっては正解であることを再認識しました。

最新店「ニュー花園」では、「薄皮羽根餃子」(写真8個770 円)など、酒に合う中国料理を豊富にラインナップ

――そうした発見も踏まえた中で、今後はどんな戦略を立てていますか?

 コロナ禍の影響でオープンを延期している店がもう1店舗あり、それが完成すると8店舗となります。東西に伸びる狸小路の1丁目に2店舗、6丁目に3店舗、7丁目にも2店舗。同じ通りにあることで集客しやすいだけでなく、「ルマンド」では「梶原ビリヤード」と「酒と銀シャリせいす」の料理を注文できるなど、店舗が近接しているメリットを生かしています。ただ、これは課題の裏返しでもあります。というのは、どの店舗も私の経験と感覚で一つの世界観を作り上げたので、サービスの仕方など、いつも目を配らないと維持できないんです。そのため、当面はこの8店舗で打ち止めにし、店舗の内容や社内体制の強化を図りたいと考えています。同時に人材育成にも力を入れていきたい。業態開発の世界観を共有しつつ、スタッフにも業態開発の機会などを与えて、会社全体でレベルアップしていければと考えています。

Company Data

会社名
株式会社アンドセイス

所在地
北海道札幌市中央区南3条西1丁目2-1

Company History

2015年 「Oyster Bar SALT MODERATE」オープン
2017年 株式会社アンドセイス(& SEIS.inc)設立。「酒と銀シャリ せいす」オープン
2018年 立ち飲み業態「せいすスタンド」オープン
2019年 「酒と銀シャリ せいす」の2階に昭和をイメージした居酒屋「純情」オープン
2020年 "せいす"ブランドから離れた「ルマンド」、「梶原ビリヤード」オープン
2021年 「酒と銀シャリ せいす」の隣に、初の中華業態「ニュー花園」オープン

ニュー花園(北海道・札幌)
https://r.gnavi.co.jp/9v03xcxc0000/
2021 年4 月オープン。昭和の田舎の中国料理店をイメージした店内、メイド服のスタッフなど、独特の世界観が魅力。
ルマンド(北海道・札幌)
https://r.gnavi.co.jp/a3eyr2ds0000/

2020 年11 月オープン。以前は名曲喫茶だった空間を活かした、バーともスナックともつかない昭和の雰囲気が人気に。