2021/07/13 特集

コロナ対策をアップデート 科学的知見をベースに、効果のある衛生対策を!

新型コロナの発生から約1年半。この間、新たな知見が出てきており、飲食店の対策もアップデートしていく必要がある。そこで、最新知見に基づく衛生対策と、今注目を集める「第三者認証」について解説する。

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お話を聞いたのは… 銀座よしえクリニック都立大院 院長 青木 晃氏
自衛隊中央病院の内科医長を務めた職歴を持つ元自衛隊医官。防衛庁を退職後、順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座准教授、横浜クリニック院長などを経て、2019年より現職。感染症対策の認証制度を推進する「科学的根拠に基づく感染症対策ソリューション推進協議会(C-SIDE)」に参画。飲食店への新型コロナ対策指導も行う。日本ソムリエ協会認定ワインソムリエであり、ワインスクール レコール・デュ・ヴァン渋谷校校長も務めている。

蓄積された最新知見をもとに、継続しやすく、効果的な取り組みを

飲食店で注意すべきは「飛沫」と「エアロゾル」

 新型コロナウイルスが国内で初めて発生してから約1年半。収束にはまだ時間を要すると見られる中、ソムリエとして飲食店経営にも精通し、内科医師の立場からコロナ禍の飲食業界支援に取り組む青木晃氏は、「自店の衛生対策が、科学的根拠(エビデンス)に基づいているかどうかを、今一度見直すことが重要です」と話す。

 「発生から時間を経て、ウイルス自体の特性やそれを踏まえた予防法について、世界中で多くの科学的知見が蓄積されてきました」(青木氏)。数ある感染対策の中には、発生当初に重視されたにもかかわらず、研究の結果、実施効果が低いとわかってきたものもある。また、闇雲に対策を立てて現場の負担が大きくなり、肝心の店舗運営に支障が出るようでは本末転倒だ。「行政の施策も、リスクを科学的に分析した上で組み立てられるべき。飲食店もそうした情報に常にアンテナを張っていただきたいです」と青木氏は話す。

 では、新しい知見を踏まえて、飲食店に求められる衛生対策とはどのようなものだろうか。青木氏は注力すべきこととして、「飛沫感染」と「エアロゾル感染」の2つの感染経路に着目した対策を挙げる。「飛沫感染」は、感染者の飛沫(くしゃみ、咳で飛ぶ細かな唾液など)が他の人の口や鼻などの粘膜に付着して起き得る。また「エアロゾル感染」は、感染者の呼気に活性を保ったウイルスが多く含まれていた場合、それが空気中に漂い、他の人が吸い込むことで感染する。

 1点目の「飛沫感染」対策としては、座席の間隔を1m以上確保することや、客席の中で来店客同士が隣り合う、もしくは向かい合う可能性がある場所に、目の位置よりも高いパーティションを設置することが望ましい。

 また、2点目の「エアロゾル感染」対策には部屋の換気が有効で、国の基準では30 分ごとに5 分程度、2方向の窓を全開しての換気が推奨されている。

 この換気について、「多くの飲食店では、国の基準以上の十分な換気ができています」と青木氏。「飲食店の約7割を占める小規模店舗では、厨房にカウンター席が面しているなど、厨房と客席が同じ空間内にあることが多い。私たちが換気の専門家とともに調査したところ、そうした小規模店舗であれば、厨房の換気設備を稼働させることで、2分以内に店内全体の空気が入れ替わり、基準を十分に満たせることが分かりました」と話す。各テーブルに排気装置が設置されている焼き肉店などでは、換気効率はさらに高く、1分半程度で店全体が換気される計算になるという。

エアロゾル感染を予防するには、「十分な換気」が不可欠。地下店舗や完全個室など、窓がなく換気しづらい場合は、30分に1回以上、入口を開けて空気を入れ替えることに加え、空気清浄機を併用したい。CO2濃度測定器などで換気状況を把握することも有用

 一方、厨房と客席の間に壁などの隔たりがある店や、地下の店舗、完全個室などでは、30分ごとに5分以上、ドアか窓を開放して換気を行うとともに、空気清浄機を併用することが推奨される。「二酸化炭素(CO2)濃度測定器などを使用し、換気状況を数値で把握することも重要。例えば『CO2濃度が上がっているので個室の扉を開放させてもらいます』といった具合に、来店客に理解を求める際にも役立ちます」と青木氏はアドバイスする。

 ほかに「接触感染」も感染経路の1つとされるが、現実的にリスクは低いと青木氏は言う。「感染者の手指に付いたウイルスが物の表面に付着し残留することは確かにありますが、ウイルスの量が少ないため、そこから別の人に感染が成立する確率は低いことが分かってきています。入店時に手指のアルコール消毒を行うことは大切ですが、接触感染への過剰な対策は科学的には必要ありません」。

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