2021/07/13 特集

コロナ対策をアップデート 科学的知見をベースに、効果のある衛生対策を!(2ページ目)

URLコピー

店ごとに異なる感染リスク。個別の事情に合わせた対策が重要

滞在時間が長く、会話を楽しむ業態では「マスク会食」を!

 飲食店と一口に言っても、業態や店内の構造、客の利用状況などでも感染リスクは異なり、それらの違いを踏まえた対策が重要だとも、青木氏は訴える。「例えばラーメン店や牛丼店など、カウンターメインで食事が短時間で済み、滞在時間の短い業態では、会話はほとんどなく、厨房の換気設備によって店内全体が十分に換気されているため、飛沫感染、エアロゾル感染ともに、リスクが低いと言えます。席ごとにパーティションを設置すれば十分でしょう」。

 これに対し、客の滞在時間が比較的長く、会話をしながら食事を楽しむ業態では、細かな対策が必要になる。先に挙げた飛沫感染、エアロゾル感染それぞれの対策に加えて、来店客に食事中以外のマスク着用を推奨することもぜひ行いたい。自身も“マスク会食”を実践しているという青木氏は、「やってみると想像したほど手間ではなく、理にかなった方法だと感じます。物を介した接触感染のリスクは低いため、入店時に手指をアルコール消毒していれば、マスクを手で触ることについてもそこまで神経質になる必要はありません」と解説する。

レストランやバル、居酒屋など、食事とともに会話を楽しむような業態では、客同士がマスクを外して会話することで、飛沫感染のリスクが高くなる。飲食する時以外は、その都度マスクを付けてもらうことが重要。あごまでマスクをずらし、食べ飲みした後にまた戻す方法でもOK。「一度やってみると、意外と簡単なことが実感できると思います。ぜひ『マスク会食』の徹底を呼び掛けてほしい」(青木氏)

飲食店と消費者、双方のメリットが期待できる「第三者認証」

 また、飲食店の感染対策について、現在、各自治体で取り組みが進んでいるのが「第三者認証制度」だ。第三者認証制度とは、衛生対策の徹底度合いを、自治体や団体などの第三者が確かめて、認証するもの。全国に先駆けて取り組んできた山梨県では、第三者認証による感染予防の効果が高く評価されており、千葉、神奈川など各地でスタートしつつある。国も全国の自治体に第三者認証制度の導入を呼びかけており、今後も導入の動きは加速すると見られる。

 第三者認証の基本的な流れは、まず自治体や団体が感染対策の基準(ガイドライン)を示し、その基準を満たしているかどうか実地調査を行った上で、適合した店に認証マークが交付される。事業者の自己申告ではなく、調査員が実際に店舗を訪れてチェックする点が特徴で、青木氏が医師として参画する「科学的根拠に基づく感染症対策ソリューション推進協議会(C-SIDE)」も認証業務を自治体から受託する団体の一つだ。

 「飲食店の衛生対策を『見える化』する第三者認証制度は、業界全体の衛生レベル向上につながるだけでなく、消費者にとっても店選びの重要な判断材料になります」と青木氏。制度をより実効的なものにするためにも、この先、認証を受けた店舗には時短要請を緩和するといった優遇措置が、各自治体の制度に組み込まれることが期待される。

 C-SIDEでは今後、地域の感染状況や業態、来店客の滞在時間など、店ごとの感染リスクを考慮した、よりきめ細かい認証基準を整えることを予定している。それにより、店にとって負担が少なく、継続しやすい、効果的な感染対策を推進していく考えだ。

 「コロナの収束後も、別の新たなパンデミックは起こり得ます。飲食店の皆さんには第三者認証制度を積極的に活用いただき、長期的な視点で、ぜひ前向きに感染対策の備えを講じていただきたいです」と青木氏。衛生対策の徹底が来店客や従業員の安全につながり、店の経営を守ることにもつながる点を心に留め、情報をアップデートしながら引き続き対策に努めたい。

全2ページ