2021/11/26 繁盛の黄金律

値上げの上手な店になろう

飲食店では、食材費の高騰などで値上げを余儀なくされています。しかし、主力商品は据え置きながら高単価商品を投入したり、値上げしても注文皿数を増やせれば、売上が確保できるのです。

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Vol.123

単品の店、単一価格の店は値上げがしづらい

 今回は、ズバリ「上手な値上げのやり方」です。
 
 ガソリン代は上がる、物流費は上がる、人件費は上がる、食材費は上がる、でもう我慢の限界です。外食業だけでなく、あらゆる業種が値上げに踏み出そうとしています。

 日本の外食は、我慢に我慢を重ねて、この20年間、ほとんど値上げをしてこなかったのです。その結果どうなったかというと、給料は上げられない、店の改装はできない、良い食材は使えないで、豊かさの提供ができなくなり、総体的なビジネス劣化が起こってしまいました。そのために外食業は市場の成長が止まってしまったのです。

 他方、高齢化の進行が止まりませんし、若い人の所得も伸びていませんから、値上げができなかったということもあります。しかし、現行価格を守っていたら、利益が出なくなっているのですから、外食業界全体が値上げに踏み切らざるを得ないというところまで追いつめられています。チェーンのグループも値上げに踏み切るところが増えています。

 しかし、値上げをすれば必ず客数は落ちます。やり方によっては、二度と立ち直れないくらいの打撃を受けることもあります。衝撃度はメニューが少ないところほど大きくなります。単品店は特にそうですね。牛丼店などは、その典型です。350円の牛丼を380円にしただけで、モロに影響が出ます。他の競争店が価格を守ったら、一気にお客は競争店に流れてしまいます。また、均一価格の居酒屋も衝撃度大です。メニューの全品を一斉に上げなければならないのですから。回転寿司は、以前は「100均」でやっていましたから、あれをそのままやっていたら非常に値上げがしづらい業種になっていたはずです。

値下げして、値上げと同じ効果が得られる

 今の回転寿司はどうでしょう。100円皿を前面に打ち出しながら、高単価皿をバンバン打ち出しています。1貫100円皿はもちろんのこと、中トロなどは1貫300円です。「マグロ握りセット4貫800円」というメニューもありますし、ラーメン、うどん、丼もの、天ぷら、デザートと、メニュー数も価格もどんどん増えています。

 こうなると、値上げはしやすいのです。新メニュー、季節メニュー、寿司以外のメニューで高単価商品を入れればいいのです。単に高単価ではいけません。そこにはお値打ち感が伴っていなければなりません。

 以前の回(「Vol.120 低単価の店は、低原価でないと成立しない」)で述べた通り、単価の高い商品には高い原価をかけてもいいのです。粗利益率は低くても粗利益高が取れますからね。ここに値上げの成功セオリーがありますね。ベーシック商品を据え置いて、高単価商品を導入することで、結果的に値上げができ、客単価も上げられる。

 例えば、ハンバーグが主力品であればベーシックなハンバーグの価格は変えずに、ほかのハンバーグの価格を上げる、という方法です。「おっ」と驚くような季節の素材を使った新メニューには、お客は飛びつくものです。そして、そういう新商品に関しては、財布のひもが少しばかりゆるくなります。トッピングを変えたハンバーグというだけで一つ高い価格が許容されます。主力商品の周辺には、トライアルニーズを喚起する新商品を散りばめておくことです。

 価格は据え置くが、食材の質を下げたり、ポーションを減らすというやり方を探る店がありますが、これは禁じ手です。すぐにバレます。そして、店の評判を下げさせるだけです。そんなことをやるのであれば、「苦しいので値上げします」と率直に、正直にお客に伝えたほうが、はるかに好感が持たれます。店の経営が苦しくなって、利益が出づらくなっていることは、お客も分かっているのですから。

 高単価商品を入れるといっても、店の価格帯は守らねばなりません。例えば、800円台が中心のスパゲティ専門店があったとします。この店が1,000円、あるいは1,200円の季節の新しいスパゲティを入れることは許されるでしょう。しかし、2,000円のスパゲティを出したら「何だ!」と強い反発を買いますよね。たとえそのスパゲティが価値あるものになっていたとしても、その店で出すメニューではありません。「我が店の価格の守備範囲」を守ることはとても大事なことなのです。

 もう一つ、値下げをして実質値上げを獲得するという方法があります。変な言い方ですが、できるのです。

 一言で言うと、注文皿数を増やすのです。ラーメン店のギョウザ、あれがいい参考例ですね。2人連れのお客がラーメン1杯ずつに加えて、ギョウザ1品を注文してくれたらどうでしょう。客単価が上がり、実質値上げと同じ効果が得られます。

 あるラーメン店が商品設計をやり直し、ギョウザの品質を上げて300円で売っていたものを250円に下げたら、30%しかなかった併売率が60%に跳ね上がったというのです。

 併売率というのは、100人のお客の何人が主力メニューと他のあるメニュー(この場合、ギョウザ)を注文してくれたか、ということです。前の例で言えば、30人の注文が60人に跳ね上がったということですね。価格を下げて注文しやすくして「もう一品」として注文してもらう、ということです。

 成功のコツは、つい注文してしまう価格設定です。さまざまなサイドディッシュ、生ビール、デザート、コーヒー、客単価が上げられるメニューはたくさんあるのに「つい注文してしまう価格」になっていないために、注文数が一向に上がらないというケースはよくあることです。

 その点で一番参考になるのは、サイゼリヤでしょう。200円、300円の価値あるサイドメニューがどっさりあります。つい注文してしまいます。あのメニュー構成と値付けをじっくりと勉強してください。

 たとえ値を下げても注文皿を増やすことで、実質値上げができるのだということを頭に叩き込んでおいてください。値上げは避けられません。ここで知恵を出し、かえって客単価も上がって、客数も増えたよ、という成果を得てください。やればできるのです。メニュー価格を全面的に洗い直すチャンスです。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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