2022/06/14 特集

失敗しない飲食店のDX~どんな業務を、どんなツールで、どんな流れで進めればよい?~

IT化による利便性の向上などを指すDX(デジタルトランスフォーメーション)。飲食店でDX化を進める際に大切にしたい考え方やメリット・デメリット、DX化する業務の優先度、ツールの見極め方などを識者に聞いた。

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目次
DXの意味、目的は?
DXのメリット・デメリットは?
DX化できる業務の種類とツール、コスト、効果は?
どうやってDXを進めたらよい?

DXの目的は“顧客満足度の向上”。将来的な一元管理を見据え、まずはPOSレジなどから着手を!

 近年、飲食業界を問わず必要性が叫ばれるようになったDX(デジタルトランスフォーメーション)。飲食店の業務をデジタル化するためのツールも以前と比べて各段に増え、コロナ禍によって非接触がポジティブに受け入れられるようになったことなど、DXを後押しする要因も増えている。では、実際に飲食店がDX化していく上で、どんな業務をどんなツールを使って、どんな考え方で進めればいいのか。飲食店のDXコンサルティングを手掛ける株式会社Sense of Timeの代表取締役・村田レイ氏に話を聞いた。

株式会社Sense of Time 代表取締役 村田レイ氏
1971年アメリカ生まれ。大学卒業後、ITバブル下でWEBサイトプロデュースとセールスエンジニア、飲食企業を経て、2009年に飲食店コンサルタントとして独立。店舗コンセプトの提案から関連業社の手配、業務オペレーションの構築、Webサイトの企画制作及びマーケティング、店舗ロゴのデザイン、ワインコンサルティングなどを行う。2020年には株式会社Sense of Timeを設立し、中小企業のDXに関するコンサルティングも手掛けている。

DXの意味、目的は?

DXとは、デジタル化によって生活のあらゆる面で利便性を向上させること

 DXとは、「ITの浸透によって、人々の生活をさまざまな面でより良く変えていくこと」を指す。言葉自体は目新しく、難しそうな印象を受ける人も少なくないだろう。しかし、ペーパーレス化(文書などを紙ではなく電子化すること)という言葉であれば、なじみがあるかもしれない。「ITバブルと呼ばれた1990年代後半~2000年くらいに浸透したペーパーレス化もDXの1つ。当時は一からシステムを作らなければならず、企業が3,000万~4,000万円規模の予算を掛けてペーパーレス化に取り組んでいました。その後、さまざまなベンダー(販売業者)が生まれ、今は20年前の10分の1程度の予算で同じ環境が整備できるようになりました。こうした技術革新によって、事業規模が小さい企業でもDX化に取り組めるようになったといえます」と、村田氏は話す。

単純な機械化や省人化ではなく、「顧客満足度の向上」がゴール

 ただ、ペーパーレス化をはじめとしたデジタル化をしただけで「DXを達成した」とは言えない。真のDXはデジタルの力を借りた業務効率化、ひいてはそこからサービスや商品の質の向上による顧客満足度の向上につなげることが目的だからだ。例えば顧客管理をデジタル化すれば、これまでの来店回数や注文内容、同行者、アレルギーの有無などの情報が蓄積されていく。全スタッフがその情報を簡単に共有できるため、特定のスタッフに都度確認する必要がなくなり、来店客にとっても「言わなくても知ってもらえている」という満足感や店への信頼につながるのだ。

 「DXは目的でなく手段。目指すゴールはお客様の利便性や満足度の向上です。確かに業務を効率化し、人件費を削減するなど、店にもメリットはありますが、それよりもDXによって浮いた時間を、ほかのサービスに使うことの方が大切。ただ業務が楽になっただけで終わらせず、お客様とコミュニケーションを取る時間を増やすなど、いかに顧客の利便性や満足度の向上につなげるかということを考えながら取り組んでいただきたいです」(村田氏)。

DXのメリット・デメリットは?

メリットは、業務の効率化や顧客の利便性の向上

 飲食店におけるDXの主なメリットは以下の通り。

①業務の効率化
②業務の正確性の向上
③業務の強化
④顧客の利便性の向上

 ①や②の代表例として、POSレジの導入があげられる。「会計時間を短縮し、打ち間違いもなくなります。ささいなことのようですが、日々の業務の中では大きなこと」と村田氏。加えて、日々の売上データが正しく蓄積されていれば、どのメニューがどれだけ出ているのか簡単に確認することができ、ABC分析(商品の売上・コスト・在庫など、重視する指標を決め、ウェイトが大きい順に並べて分類し、管理する方法)をして販売戦略を練ることもできる。

 同じく、顧客台帳システムも正確かつ効率的な顧客情報の管理を実現するツール。「顧客台帳システムに集約した情報を基に、それぞれの顧客に合わせたサービスを提供することによって満足度を高めることも可能。それが集客力の向上にもつながります」と村田氏。

 ③の例としては、SNSや飲食店検索サイトなどを使うことで情報発信力を高めたり、防犯カメラを設置することでセキュリティーを強化する、といったものがあげられる。

 ④についても、ネット予約やモバイルオーダー、キャッシュレス決済など、利便性を高めるツールやサービスが次々と誕生しており、DXの目的である顧客満足度の向上に直結する部分といえるだろう。

適切なDX化をしないと、満足度を下げるので要注意

 一方、デメリットは何か。「正しくDXを進めればデメリットはほとんどありませんが、本来の目的(顧客満足度の向上)を忘れて、コストや労働時間の削減、省人化といった店の都合ばかりに気を取られていると、失敗してしまいます」と村田氏はくぎを刺す。間違ったDXをしてしまった場合のデメリットとして考えられるのが、

⑤サービスの無機質化
⑥サービスとニーズの乖離による満足度低下
⑦コストや業務負荷の増大

 ⑤については、「エンドユーザー(来店客)との関わりをどこで作るのかを意識しないことが原因。むやみにデジタル化を進めた結果、機械的で無機質な店になり、飲食店が本来得意としていた、人によるサービスの温かさや気配りがなくなり、満足度を下げてしまうのです」と村田氏は指摘する。「完全に非接触化したとしても、顧客がどういう反応をして食べるのかということをイメージできれば、満足度の高い対応ができるはず。そのためには、来店客の声を拾う場やツールを作らなければいけません。クレームであっても改善のチャンスの1つとして捉え、きめ細やかなアフターサービスを心掛けましょう」(村田氏)。

 ⑥は、店のDX化が来店客のニーズに合っていないことに起因する。例えば、デジタルツールに対する知識や利用経験が乏しい高齢者がメインターゲットの店で、いきなり注文をモバイルオーダーのみにしたり、キャッシュレス決済でしか会計できないようにすることで客離れが発生してしまうようなケースだ。自店の客層や利用シーンを含めた状況を踏まえて、段階的に導入していかないと、むしろ満足度の低下をまねいてしまうので要注意だ。

 ⑦も、店の現状に則してデジタル化ができていない場合に起こりうる。極端な例で言えば、10坪程度の立ち飲み業態に配膳ロボットを導入してもコストがかかるだけで効果が期待できず、むしろ邪魔な存在になりかねない。また、一気にあらゆる業務をデジタル化することで、現場が混乱し、かえってサービスの質が低下したり、生産性が下がることもありうる。「今はさまざまなサービスやツールがあるので、資金が潤沢でなくても予算に合わせてDX化できます。とはいえ、やみくもに手を付けるのではなく、店舗業務のどの部分をDX化するのか見極めることが大切。現場が操作に慣れる時間も考慮して、導入していくことが望ましいです」と村田氏は話す。

 こうしたデメリットは、自店の現状(客層やニーズ、業態の特徴など)を無視したり、DX化の目的をはき違えた場合に起こりうること。逆に言えば、来店客目線に立って、自店に合ったツールを導入することが、失敗しないDX化への第一歩といえる。

DX化できる業務の種類とツール、効果は?

ホールでは、会計に関連する業務がDXによる効果が出やすい

 飲食店におけるDXをするエリアは、サービスエリア(ホール)と、厨房・バックオフィスの2つに大きく分けられる。

 サービスエリアにおいてDX化の対象となる業務の1つに会計業務がある。「POSレジ」を導入し、メニューと値段をあらかじめ登録しておくことで、打ち間違いや計算違いを防ぐことができ、会計業務のスピードアップにもなる。また会計処理をPOSレジで行うことで、利用時間帯や注文内容などの売上データを収集し、精度の高い分析をすることができる。近年はタブレット型のPOSレジが主流なので狭いスペースで設置でき、旧式レジスターのように場所を取ることもない。

 同じく会計業務の効率化に寄与する可能性が高いのが、キャッシュレス決算への対応だ。「決済手段を現金のみではなく、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済に対応することで、財布を開けて小銭を探したり、おつりを渡したりする時間がなくなる上、コロナ禍で生まれた“非接触”という新たなニーズにも対応できます」(村田氏)。利用ごとに決済手数料が掛かるが、導入自体は0円で始められるものも多い。

 このほか、スマートフォンで注文するモバイルオーダーや、卓上に設置された専用端末で注文するテーブルオーダーも、さまざまな店で見かけるようになった。ホールスタッフが注文を受ける必要がなく、その分、別のサービスに労力を注ぐことができる。注文を取り違えることがなく、来店客にとってもスタッフを呼ぶ手間がなく、注文の履歴や現在の料金(小計)を確認できるといった利点がある。

 また、ウェイティングが発生しているのであれば「順番待ち管理システム」の導入も検討対象になるだろう。月数千円で利用でき、番号の発券から呼び出しまでスタッフの手間を掛けずにスムーズに行うことができる。待ち時間の目安や待機人数がわかるため、来店客も時間を有効に使うことができるというメリットがある。

 見落としがちなのが、フリーWi-Fiだ。通信キャリアのキャンペーンによっては0円で導入・使用することもできる。「特に外国人客はフリーWi-Fiの有無で店を決める傾向にあるので、再びインバウンド客の増加を見据えるなら、導入するのも一案です」(村田氏)。

 注文したメニューがレーンに乗って配膳される特急レーンや配膳ロボットは、非接触、人件費削減といった多くの利点があるが、導入費用は安くない。個店であれば人件費のほうが安く済む場合があるので、ある程度の店舗数を運営していてスケールメリットが活かせる事業規模であれば検討する価値があるかもしれない。

厨房・バックオフィスでは、予約&顧客情報管理のDX化が業務効率を高めやすい

 一方、厨房・バックオフィス業務で、DXの対象にしやすいものの1つが、顧客情報の管理だ。ノートへの手書きなどに記録・管理していた来店客の情報を、顧客台帳システムで管理することで、情報を正確に効率的に保管でき、必要な情報を探すのも容易になる。また、スタッフへの共有もしやすいので、「常連客の好みの料理やドリンクについて、店長しか知らないのでほかのスタッフが対応できない」といったサービスの属人化を防ぐことにもつながる。「費用はさまざまですが、予約管理システムやPOSレジと連携しているものなら月数千円での導入も可能。ただし、サービスによっては顧客情報がベンダー側の所有物になり、店の資産として自由に活用することができないものもあります」(村田氏)。

 また、予約の管理業務も、DX化することで業務負荷の軽減ができる。複数の飲食店検索サイトのネット予約を一元管理できるサービスもあり、ダブルブッキングを防ぐことも可能だ。コストは月額2万円程度、そのほか予約1件あたりの手数料という形で請求されることがほとんどで、予約が多く入るほど費用が掛かる。

 加えて、「DX化を検討するなら優先的に導入したい」(村田氏)のが、経営管理システムだ。手書きの管理表と違い、POSレジと連携させれば、いつでもリアルタイムで収支や在庫状況などを確認できる。

 仕入れについても日々の業務の中でオペレーションの負荷が大きい業務。今もFAXを使っているという店舗が少なくないが、オンラインの発注システムを利用すれば、発注履歴が残るので、今月の発注量や合計金額などが一目で確認できる。仕入れ先がFAXしか受け付けていないという場合でも、利用するサービスによってはFAXでの注文を代行してくれ、すべてネット上で管理することができる。初期費用は0円からで、飲食店は手数料も掛からない場合がある。

 そのほか、集客販促ツールとしては、InstagramなどのSNSやGoogleビジネスプロフィール(マイビジネス)であれば、無料で始めることができる。ただし本格的に取り組む場合は、投稿内容や写真、投稿タイミング、頻度など考えなければいけないことが多く、マンパワーが必要となる。「数万円程度で更新代行を請け負う業者もあるので、運用をプロに一任するのも1つの方法です」と村田氏は提案する。

 同じく、ホームページや飲食店検索サイトなどでの発信も、集客力向上には有効。ホームページは4~5万円程度で委託制作することができる。飲食店検索サイトの場合は、業態や価格帯、立地などを考慮して、掲載するサイトを見極めることが重要になってくる。「飲食店検索サイトごとに、掲載費も異なり、利用者層も異なります。自店のターゲットとサービスの利用者層を比較して、効果が出せそうなサイトを選ぶのがよいでしょう」(村田氏)。

 さらに、防犯カメラもDXの1つ。トラブルや犯罪を抑止する効果がある上、撮影した映像を分析して来店客の層や動き、スタッフの業務を分析することも可能。月数千円程度で設置することができる。

 最後に厨房におけるDXについては、自動調理システムなどが代表例だ。コストは安くないが、自動ビールサーバーなどはメーカーが無償で提供していることもある。店舗の業態や厨房のスペースなどに合わせて導入を検討したい。

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どうやってDXを進めたらよい?

POSレジが最優先。予約管理や顧客台帳を含めた一元管理を想定したツール選びを

 このように、DX化できる業務はさまざまだが、「最優先すべきはPOSレジ。次に予約管理システム、顧客台帳システム、経営管理システムを優先するのがおすすめです」と村田氏。DX化にあたってはすべてを最初から導入する必要はないが、自分が導入したいと考えているシステムを網羅していて一元管理できるベンダーを選ぶのが得策だ。「契約する相手が増えると、そのぶん現場の負担も増加してしまいます。トータルでそろえたほうが割安になりますし、互換性もいい。今後を見据えた上でスモールスタートさせ、そこから広げていくのがいいでしょう」(村田氏)。

 また、導入してから他社のサービスに切り替えるのは労力が大きく、売上や顧客情報などのデータの引き継ぎも簡単ではない。スタートラインで「どこまでサービスを拡張できるのか」「他社のサービスとの違いは何か」をしっかり検討して決めたい。そこに割く時間がなければ、コンサルタントに相談するのも一案だ。

補助金の活用も検討を

 DX化の際には、「IT導入補助金」「ものづくり補助金(デジタル枠)」といった補助金も利用できる。サービスによってこれらの補助金の対象にならないものもあるので、事前に対象かどうかを確認し、判断材料の1つにするのがいいだろう。

 いずれにしても、最終的な目的は顧客満足度の向上。現在の自分の店の状況(業務や客層)を踏まえて、どこをデジタル化し、どの業務を人に任せるかを決めることが先決。その上で、どんなサービスやツールがあるか、それぞれの特徴を調べて機能やコスト、管理のしやすさなどを含めて、少しずつでもDX化を進めていけば、スタッフがサービスの向上に使える時間が増え、結果的に顧客満足度も高まるはず。ぜひ、よりよい店づくりのためのDX化を進めて、生産性の高い店舗運営を実現していただきたい。

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