目次
・3つの改革で赤字から一転、利益体質に
・仕入先&メニュー変更で、お得&おいしい店へ
・おいしい&ロス削減メニューを開発
・実際原価を意識し、ロス削減に成功!
「仕入れの見直し」「メニュー改定」「コスト意識の徹底」で、赤字から一転、利益体質に
2021年3月に、大阪・福島駅から徒歩7分の商店街にオープンした「福島 焼肉ホルモン こいちゃん」。厳選した黒毛和牛や国産ホルモンを売りにした焼き肉店だ。
同店が利益を生み出している要因は、仕入れとメニュー設計にある。仕入れ値を抑えて、それをしっかり「値下げ」という形で顧客に還元しつつ、「利益が出せる」「以前よりおいしい」「ロスをなくす」といった”メニュー設計”を敢行。食材ロスについては細かく集計することで利益が残せる運営を実現している。
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仕入れ先の変更をきっかけにメニューを見直し、「よりお得&おいしい店」に
今でこそ経営が軌道にのった同店だが、オープン時から順風満帆だったわけではなく、実はむしろ苦戦続きだった。当初は、テーブル席のほかに一人客の来店を想定してカウンター席も配していたが、席稼働率がさほど高くなかったため、開業から1年後にカウンターを廃して個室に改装。これを機に地元のファミリーの来店が増えたという。
ただ、利益が出たのは個室を設けた直後の2022年3~4月のみで、それ以降は赤字が続いた。「コロナ禍に強いと見込んで焼き肉業態を出店したのですが、簡単には集客できませんでした」と、料理長の宮本優氏は振り返る。
そんな中、何とか利益体質を構築しようとコンサルタントのアドバイスを基に取り組んだのが、仕入れ先の見直しだ。2022年12月にコンサルタントの人脈を生かして肉の仕入れ先を変更し、上質な黒毛和牛を以前より安く仕入れられる体制を整えた。同時に、仕入れ内容やメニューの変更、新メニューの開発によって、歩留まりが格段に良くなったという。
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「例えばタンであれば、以前は硬くて商品にしにくいタン先も含めた塊で仕入れていましたが、今はタン先をカットしたものを入荷しています。こうすることで、歩留まりはほぼ100%。効率良く食材を消費でき、原価率が抑えられています」(宮本氏)。やわらかいタン元を使った人気商品「厚切りマンゴータン」(1,499円)は、以前より利益率の高いメニューに生まれ変わったという。
逆に、カルビは部位ごとに仕入れていたが、複数の部位がまとまっている塊肉で仕入れることで仕入れ値を抑えた。これにより、それまで端材肉を使っていた「黒毛和牛キーマカレー」(899円)に、カルビの脂部分を加えることができるようになり、来店客から「前よりおいしくなった」と評判に。シメの一品として、以前の倍の注文数を獲得している。
おいしくて、ロスを出さない新メニューも開発
一方で、塊肉で仕入れるようになったことで、カルビの中でも脂が多過ぎて使いにくい部分も扱うことに。そこで、開発した新メニューが「黒毛和牛葱カルビ」(1個299円)だ。これは、脂身の多い部分を薄く削ぎ切りにして香りの良いネギを巻いたメニュー。価格も手ごろで1個単位でオーダーできることから、高い注文率を誇っている。
同じく、もともと人気メニューの「レアステーキユッケ」(999円)は仕入れの見直しに合わせて、使用する肉の部位を変えたメニュー。それまで使っていた国産ハラミから国産の赤身肉に変更。ハラミの人気は高かったがその分単価も高かったのが理由。「赤身に変更することで単価も安くなり、より注文しやすい商品になりました。赤身でも十分おいしいですし、ユッケのニーズは高いので、注文率は高いです」と宮本氏。以前と同じ人気を保ったまま、利益率の高いメニューへと変ぼうを遂げた好例だ。
こうしたメニュー改定によって全体的に単価を下げたことで、平均客単価は7,000円から6,500円に下がったが、その分、使い勝手のいい店として認知が広がり、集客力はアップ。徐々に経営が軌道に乗っていったという。
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“実際原価”を“理論原価”に近づける取り組みで、ロス削減に成功!
さらに、利益体質を実現する上で重要な変化があった。それは、宮本氏をはじめとした調理スタッフのコスト意識だ。「コンサルタントのアドバイスで、理論原価と実際原価を意識するようになって、いかに今まで無駄が多かったかを痛感しました」と宮本氏は語る。
理論原価とは、その名の通り「理論上の原価率」のこと。例えば、あるメニューで肉を70gで提供すると決めていて、きっちりその通りにすべて使い切った場合の原価率のことだ。
一方で、実際原価とは、「実際に調理した結果、算出される原価率」のこと。70gで提供するべきところを72gで提供してしまったり、日が経って変色した肉の表面を削らざるを得なかったりと、さまざまな理由で実際原価は理論原価よりも高くなる(利益率が下がる)ことがほとんどだ。「当店でも、『お客様が喜んでくれるかもしれない』という、ちょっとしたサービス精神で、少し多めに盛り付けることもあり、理論原価と実際原価はかけ離れた状態でした」(宮本氏)。
そこで、実際原価を理論原価に近づけるべく、食材ごとに実際原価を集計した上で、それを厨房のメンバーで共有し、コスト感覚を植え付けるように徹底したという。
「当店の主力食材である黒毛和牛は、仕入れ価格が高価なので、特に1g単位で使用する量を意識するようになりました」(宮本氏)。実際原価を集計した結果、どれくらい理論原価と差があり、ロスが多かったかを実感することができ、意識改革の結果、10%以上あった理論原価と実際原価の差が約5%にまで縮まった。将来的には、この差を2~3%にすることも可能だと考えている。
このほか、飲食業の定石としてアルコールでも利益を生めるよう工夫をしている。特に原価率を低く設定しやすいサワー系を充実させており、「はちみつレモンサワー」(499円)や「生絞りすだち酎ハイ」(768円)などが高い人気を誇っている。
こうして、仕入れ先の変更、メニュー設計の見直し、コスト意識の徹底により、数字を意識した運営の土台作りと利益体質の構築に成功。コロナ禍が落ち着いてきた2023年4月には過去最高月商を達成した。今後も、顧客満足度を追求しつつ、さらなる利益率アップを目指していく。
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