QSCの質が低いから値上げで客数が減る

値上げをしても客数に影響が出ない店があります。そういう店に共通しているのは「店のあるべき姿と形が、明確に決められている」ことです。今回は、外食業の基本であるQSC+Aについて考えていきましょう。

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Vol.149

QSCをやり抜いている店は、客数が減らない

外食チェーンの値上げが相次いでいます。中には、去年1年間で3回も値上げをしたところもあります。

お客様も値上げ慣れしてしまって、「まあ、仕方ないよなぁ」と、渋々ですが、受け入れてくださっています。

値上げをすれば、客数減は避けられませんが、その「減」が小さいところと大きなところが、はっきりと分かれています。これは、チェーンでも個店でも同じです。中には値上げしても客数が伸びている店(チェーン)もあるのです。

客数への影響が小さいところは、共通しています。QSC+Aを守ったところは、客数減が小さい。もしくは、「増」にすらなっているのです。

QSC+Aとは、Qはクオリティ(商品の質)、Sはサービス、Cはクレンリネス(ピカピカに磨かれた店)、Aはアトモスフェア(店の雰囲気)ですね。

「QSC+A?もう聞き飽きたよ、うちは何年もやってるよ」、こう反論する経営者も少なくありませんが、こういう人は大体、何もやっていません。そしてQSC+Aのレベルは、少しずつ少しずつ落ちているのです。

値上げの幅にもよりますが、値上げで客数が減った店はQSC+Aのレベルが落ちている店です。どの経営者に聞いても「QSC+Aは大事だ」という答えが返ってきます。外食業の基本中の基本です。そう胸を張って答えます。しかし意識的に、持続的に、徹底してやり続けている経営者は、本当に少ないのです。

凡事徹底という言葉があります。当たり前のことをやり遂げること、やり抜くことです。これができるようで、本当に難しいのですね。そして、確実に言えることは、QSC+Aにおいて凡事徹底をやり続けている店は、値上げをしてもお客様の数は減りません。

あるべき姿と形が、明確に決められていること

まず、Q(クオリティ)についてですが、看板商品の質を上げ続けなければなりません。質を上げる、味を変えない、これを実践し続けなければなりません。老舗店はこれをやり続けているから、名声を維持できているのです。食材の質、組み合わせ、調理工程、この3つを常に改善し続けているのです。

強い商品というものは、実は中身を変えているのです。ひと言でいえば高質化です。これをやり続けているところだけが、「いつも変わらない味でいいね」という評判を得ることができます。

特に注意しなければならないことは、調理工程です。調理機器は進化し続けていますから工程が変わることがあります。これは、調理工程の改善ですね。いけないのは、機器も変えていないのに、工程が変わってしまうことです。

主力商品は出数も多いですから、調理工程の簡便化が進みやすいのです。手抜きですね。また、工程の順序がしばしば変わります。要するに楽に調理できるように、キッチン内で手抜き工程が慣習化してしまうのです。「主力商品に限ってそんなことはありません」と反論するかもしれませんが、主力商品だから手抜きと変更が行われやすい。そのことを肝に銘じておかなければなりません。

最も得意とするところに深い落とし穴があることをゆめゆめ忘れてはなりません。

S(サービス)ですが、値上げの時に一番影響が出るのがサービスのレベルです。クイック(料理の適温が守られている)でフレンドリーなサービスを完璧にしている店に、常連のお客様が来店して、いつも注文する商品が値上げをしている事に気付くとしましょう。

サービスの質が高い店ならば、そして適当な範囲の値上げであるならば、「仕方ない」と思ってくれるでしょう。「よく頑張った」と励ましの気持ちを持ってくださるかもしれません。広い心で値上げを受け止めてくださるのです。

しかし値上げはするわ、サービスは酷い、料理は冷めている、という店では、お客様も「二度とこんな店には足を踏み入れない」と固い決意をすることでしょう。クイックでフレンドリーなサービスと言っても抽象的すぎます。サービスの内容も具体的になっていなければなりません。

例えば、
・入店の際にお客様と正体(正面に向き合って)してアイコンタクトをとってお客様に「いらっしゃいませ」が言えていますか。
・テーブルまでのご案内ができていますか。
・テーブルタッチ(注文を取る、料理を運ぶ、お水のリフィルをする、中間バッシングをする)は何回行われていますか。その回数は決まっていますか。
・料理は何分以内に提供していますか。その提供時間は決まっていますか。
・会計を済ませて店を出るお客様に向かって、深々と頭を下げて「ありがとうございました」を言っていますか。
 
サービスはこの他にもありますが、この基本の5つが完璧に行われているでしょうか。この5つの基本姿勢、基本行動の形が決まっていますか。このS(サービス)の基本が守られているところは、ほとんどありません。外食業の基本中の基本であるにも関わらず、当たり前の事が徹底されてないのです。

Cのクレンリネスはどうでしょうか。「毎日、きちんと掃除しましょう」、そう言い続けている経営者は少なくありませんが、これでは何も言っていないのと同じです。

道具はそろっているのか、清掃の内容と時間は決まっているのか、掃除の仕方の訓練はできているのか。キッチンの清掃は誰がいつ、どういう形で行われるのか。その一つ一つが、具体的に決まっていなければ前に進みません。いやその前に、どういう状態のなった時にクレンリネスが行われていると言っているのか。その状態の基準がなければなりません。「店をきれいに」「掃除、掃除!」と言い続けても、クレンリネスのレベルには上がりません。

もう一つ、改装が定期的に行われているか、があります。店は開店した翌日から劣化が始まります。ですから初めから改装計画を持っていなければなりません。改装にも、小さな改装から中改装、そして大改装があります。そのための資金が必要です。毎月の売上の中から、改装の費用を貯金しておかなければなりません。

店の劣化に一番気が付かないのは、毎日働いている人たちです。一番よく気が付くのは、久しぶりに来店されたお客様です。このお客様には、店は「変わり果てた姿」に映っているはずです。慣れって本当に怖いです。

QSCのレベルが上がり続けると、すばらしいA=アトモスフェア(店の雰囲気)が実現するのです。いけないのは、QSCの基準がないことです。あるべき状態の目標がなければ、前進することができません。まず、明確な基本を決めなければなりません。

一番大事なことは、お客様をほっこりとさせることです。この店で食事をすると、心が和むような、活力が出るような、そういう店になれていれば、値上げをしても大丈夫です。客数は減りません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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鍛えられた十分な取材力、現場を見抜く観察力、網羅的な情報力、変化を先取りする予見力、この4つの強みを生かして、外食業に起こっている変化の本質を摘出し、その未来を明確に指し示す“主張のある専門誌”です。表層的なトレンドではなく、外食業に起こっていることの本質を知りたい人にこそ購読をおすすめします。読みたい人に直接お届け!(書店では販売しておりません)

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