サブ商品群の中にダイヤモンドの原石が眠っている

お店を繁盛させるには、お客様を魅了する「看板メニュー」とフレンドリーな接客、そして心温まるサービスの3要素が必要です。しかし、看板メニューがお店の看板であり続けるためには、常日頃から“品質を上げ続ける”という努力が必要になります。さらにお客様の来店頻度を高めるためには、どうしたらいいでしょうか。神山氏が解説します。

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株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

Vol.162

調理の手抜き、調理機器の劣化で、看板商品が売れなくなる

看板商品の売れ個数が、ジワジワと落ちているとしたら、それは危険信号です。

「他のメニューが売れているからまあ、いいか」などと考えていると、状況は悪化の一途をたどります。食材も調理方法も変えていないのに、なぜ売れ個数が落ちるのだろうと疑問に思う方もいると思いますが、「変えていないから、落ちるんですよ」と、私は言いたい。

これは前にも述べましたが、「味は変えない、しかし品質は上げ続ける」。これを実践していかないと、売れ個数は必ず落ちます。

外食でも食品メーカーでも、長年売れ続けている看板商品は、絶えざる改善を行っています。食材も変える、配合も変える、調理(製造)工程も変える。しかし、味は変えない。これをやり続けているところだけが、看板商品のパワーが維持できているのです。

絶えざる改善、前進を行わなければならないのに、売れて当たり前というおごりから、手抜きが行われていることがしばしばあります。

まず、調理工程の手抜きがあります。下準備を、朝1回にまとめてやってしまうなどは、手抜きの典型です。従来は、朝1回、夜の開店前に1回、都合2回やっていたものを、朝1回にまとめてしまう。よくやることです。

当然、経時劣化が起こって、品質が落ちてしまいます。いかに危ないことをやっているのか、ちょっと考えれば分かることなのに、手間を惜しんで安易な道に走ってしまうのです。

それから、実際の調理でも手抜きが行われています。たとえば、A→B→C→Dという工程で作らなければならないのに、AとBを一度にやってしまう。あるいはBとCを逆にやってしまう、こういうことがしばしば行われています。その方が楽だからです。

注文の多い商品は、放っておくとしばしばこの手抜きが行われています。工程の厳守、これをキッチンの現場に徹底しなければなりません。そして一定の間隔をおいて、調理工程をチェックし続けなければなりません。

もう一つは、厨房機器の劣化があります。鉄板がデコボコになっていたり、薄くなっていたり、温度が上がらなくなっていたり、と使用頻度の高い機器は必ず性能が落ちていきます。

つまり、看板商品が一番劣化しやすい状況にある、ということです。飛行機は使用頻度の高い部分、部品の交換は、マニュアルで厳しく義務付けられています。ひとたび故障があれば、とんでもない惨事が起こってしまいますから、当然です。

「まだ、動くからいいだろう」と考えがちですが、そのことで看板商品の質が少しずつ落ちていることを、忘れてはなりません。

売れ個数が少しずつ落ちてきたら
①やってはいけない下準備をしてはいないか
②調理工程を勝手に変えてはいないか
③調理機器の性能が下がってはいないか
この3つをチェックしなければなりません。というよりは、この3つは必ず発生するものだ、と考えるべきでしょう。看板商品が看板であり続けるためには、不断の努力と警戒が必要なのです。

アフォーダブルなサブメニューが来店頻度を高める

一方、特別力を入れているわけでもないのに、売れ個数が少しずつ伸びている、そんな商品があったら、そこに熱い視線を注ぎましょう。

もしかしたらその商品は、ダイヤモンドの原石なのかもしれません。第2の看板商品の芽が出始めたのかもしれません。大事に育てる価値があります。たとえそれがメイン商品ではなくても、サブの看板商品になる可能性があるからです。

繁盛店になるためには、看板商品を支える強いサブ商品を2つ3つ持つ必要があります。ラーメン店におけるギョーザのような存在ですね。強いサブ商品を持つと注文皿数が増えて、客単価が上がります。

そればかりではありません。お客様の潜在意識の中に、そのサブ商品がインプットされて、それがお店に来店するきっかけになる。つまり、来店頻度が上がります。

サブ商品は価格が大事です。つい注文してしまう、というお手頃価格が実現できていなければなりません。これを専門用語で「アフォーダブルプライス」(なんの抵抗もなく注文できる価格)といいますが、サブ商品の中にはこのアフォーダブルが実現できていないがために売れない、というケースがしばしばあります。

もう一度、自店のサブ商品群をチェックしてみてください。価格をもう少し下げれば、つい注文してしまう商品になるものが、いくつもあるはずです。

参考になるのは、サイゼリヤですね。メニュー表を広げると、最初の見開きページにサイドディッシュの商品群がドーンと出てきます。そしてその価格の安いこと安いこと。メインのパスタやピザ、ドリアも安いですが、このサブメニューの注文数が多いために注文皿数を増やすことができるのです。

まさにアフォーダブルプライスの実現です。メイン商品を値上げする時も、サブ商品の価格をちょっと下げるだけで、値上げの印象がだいぶ変わります。サブ商品群の価格は、値上げがもたらす来店頻度のダウン(=客数減)を和らげる力を持つのです。

もう一つ、サブメニューには、原価率の調整という役割があります。お客様が、この商品を注文してくださることによって、狙い通りのところに原価率を落ち着かせることができるのです。ですから、サブアイテムは基本的に原価が低くなければなりません。

いくつかの高い原価のメニューがあっても構いませんが、その場合でも調理の手間があまりかからないことが大事です。下準備でほぼ完成形ができていて、ひと手間で即提供できることが条件です。ギョーザは焼成時間を要するので、提供には時間がかかりますが、注文があってから成型するわけではありませんから、調理に要する手間はかかりません。

サブメニューは食卓を豊かにします。あまりお金をかけずに豊かにできれば、顧客満足度はいやが上にも高まります。看板商品の絶えざる進化、そしてつい注文してしまう価値あるサブメニュー群。これさえ持てば、繁盛店への道をまっしぐらに進めます。もちろん、快活でフレンドリーな、そして心温まるサービスがなければなりませんが。

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