これをやるから繁盛が持続しない(前編)

繁盛店を維持するのはなぜ難しいのか?料理の味や品質の劣化、増えすぎたメニュー、調理の悪慣れ、古くなった店舗設備など、繁盛を阻む要因を神山氏は指摘します。前後編に分かれた本記事(前編)では、看板商品の質の保ち方やメニュー戦略、季節メニューの扱い方など、繁盛を持続させるために見直すべきポイントを6つ、具体的に紹介。飲食店経営のヒントが満載の内容です。

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株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

Vol.165

放っておくと看板商品の質は下がり続ける

「繁盛店を作ることは、そう難しいことではない。しかし、繁盛を維持することは至難の技だ」

昔、アメリカの大手レストランチェーンの社長を取材した時に直接、彼の口から出た言葉です。今でも私の心に印象深く、強く残っています。

「店は、開店した翌日から老朽化が始まっている」。こう言ったのは、物語コーポレーションの現社長、加藤 央之(ひさゆき)さんです。

ここで言う老朽化とは、看板、建物、厨房などの“ハード”だけではなく、店主のヤル気や勉強心、野心といった、“心の衰え”の両方を指します。繁盛店を築くのも容易ではありませんが、長く繁盛を保つのは、本当に難しいものです。

では、具体的に、繁盛店の維持を妨げる要因を6つ紹介していきましょう。

<繁盛店の維持を妨げる要因>
看板商品の劣化
メニュー数が増えていく
新メニュー、季節メニューがない
調理の慣れ
調理機器の性能が落ちる
店が古ぼけてくる

①看板商品の劣化
「味を変えない」、「質を上げ続ける」ことの大切さについては、この連載でも何度も取り上げています。同じ素材で、同じ調理法で、同じ料理を出していると、客数は必ず落ちます。

看板商品の“絶えざる品質向上”こそが、繁盛店の必須要件です。味を変えないことを前提に、より質の高い食材を調達する、組み合わせや調理方法を変えてみる。こういった改善を試み続けてはじめて、看板商品は売れ続けるのです。

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②メニュー数が増えていく
外食業は放っておくとメニューがどんどん増えていきます。ハッと気が付くと創業時の倍のメニュー数になっていたりします。専門店がいつの間にか、「何でもある店」になってしまっています。

しかし、メニューが増えても客数は増えません。メニューの増加を避けるためには、ベーシックメニューとサブメニューのメニュー数を決めておくことです。新しいメニューを1品追加したら既存メニューから1品減らすことです。サブメニューも同じです。メニュー数を増やさないことが重要です。

③新メニュー、季節メニューがない
一見、②と矛盾しているようですが、新メニュー、季節メニューは必要です。これも的確に打ち込んでいかないと、いつの間にか客足が遠のいてしまいます。外食業の最大の敵は、「休眠客」です。絶えずお客様を刺激してかないと、休眠客が増え、客数がいつの間にか半分になってしまったりします。

しかし、メニューで一番やらなければならないのは、前述の「看板商品の質の向上」です。これを放置して、新しいメニューの開発ばかりに力を入れている店をよく見かけます。いや、そういう飲食店の方が多いかもしれません。

むしろ季節メニューも定番化して、提供する期間も特定するべきです。そして、「定番化したメニューの磨き込みに力を入れる」のです。これが定着すると、「そろそろあのメニューが出る頃だな」とお客様の期待が高まります。

けれどこの場合、期待を少し裏切ることも大事です。つまり、毎年少しずつ変化させることです。これも休眠防止につながります。

新メニューの開発で留意しなければならないことは、「調理が複雑にならないこと」、「全体の調理の流れを妨げないこと」です。新メニューがあるばかりに、全体の提供時間が遅れてしまっては、お客様の不平・不満が高まってしまいます。

メニューは絶えず、少しずつ変化させる、でも基本は変わらない。品質は少しずつ上がっている。これをやり続けてようやく、繁盛店の維持が可能になるのです。

メニューと運用の見直しが繁盛維持のカギ

看板商品の質を保つことが繁盛維持の第一歩である一方で、店全体の運営面にも落とし穴は潜んでいます。特に、メニュー構成や日々の調理、厨房設備、店舗そのものの状態など、日常的な運用の見直しを怠ると、知らず知らずのうちにお客様が離れていく原因となります。

以下では、見落とされがちな残り3つの課題を挙げていきます。

④調理の慣れ
「慣れのどこが悪い」とお思いでしょうが、慣れはしばしば「悪慣れ」につながります。つまり「手抜きの横行」です。これは看板商品で行われることが多いのです。看板商品は出数が多いですから、調理の簡略化や手順の変更が行われがちです。裏マニュアルがいつの間にか定着してしまうのです。

店主は、これが行われていないか、常に調理のやり方に目を光らせていなければなりませんが、案外、店主が手抜きの張本人だったりします。
 
もちろん厨房機器が変われば、手順も変わります。また、食材の変更があれば、調理時間が変わることもあります。そういう時は、マニュアルそのものを変えなければなりません。つまり、文書の書き換えが必要です。

店主の頭の中だけでの「変更」は、絶対にやってはいけません。他のメンバーと共有できなければなりません。調理の慣れがしばしば、商品の劣化を引き起こす、このことは肝に銘じておかなければなりません。

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⑤調理機器の性能が落ちる
調理機器は、使えば使うほど性能が落ちてきます。グリドル、フライヤー、コンベクションオーブン、蒸し器、ゆで麺機…何でもそうです。当たり前の事なのに、多くの店がブレイクダウンするまで使い続けます。

温度が上がらない、温度のムラが出る。つまり、調理時間や工程にまで影響しているのに、壊れるまで使い続ける店があまりに多いのです。飛行機のメンテナンスを怠る航空会社がどうなるか。大惨事を招きますよね。だから、消耗の激しい部品は定期的に取り替えられます。マニュアルにおいても、また法的にも、メンテと交換が厳密に定められています。

外食業だって同じことなのに、厨房機器の交換を積極的に行う店は少ないです。それで、商品の質が劣化しているのであれば、それこそ、大惨事です。個人店、単独店では、追加投資を嫌う傾向がありますが、それが店の寿命を縮めていることに気が付かなければなりません。

それから、あらゆる厨房機器が日進月歩しています。やみくもに新しいもの飛びつくことは危険ですが、それでもキッチンの仕事が飛躍的に楽になるのであれば、迷わず導入すべきです。ただし、導入することで主力商品の質が1ミリでも落ちるのであれば、それは「NO!」です。

⑥店が古ぼけてくる
外装、看板、入り口部分、壁面、床面、椅子、テーブル、カウンター、食器類、トイレ、便器…店を構成するあらゆるものが、それこそ開店した翌日から劣化が始まります。

木材や金属などの材料を厳選して、本格的な素材で店を作っている場合、年月が「独特の味わい」に変わってくれることがあります。しかし、こういう場合でも絶えざるメンテナンスが必要なのです。

困ったことに、個人店、単独店の主(あるじ)達の改装、改造意識は極めて低い、と言わなければなりません。毎日、店に居続けているので、店の劣化に最も気付かないのです。一度作ったら閉業するまで使い続ける、といったケースがあまりにも多いのです。

チェーン店でも優劣の差はあって、郊外のロードサイドを走っていると、看板や外装がすっかり退色してしまっていて、「閉店しているのか」と思わせる店も少なくありません。

しかし強いチェーン店は、店の改装、改造計画表を必ず持っています。特に看板や外装は、頻度高くメンテナンスや取り替えが行われています。それを放置しておくと、店が目立たなくなって、お客様の来店頻度がガタ落ちすることを知り抜いているから、熱心にやるのです。

個人店もこの計画表を持つべきです。つまり、自分の店を飛行機だと認識するべきです。飛行機ならば、メンテナンスの放置は死活問題ですから、相当横着な持ち主も定期点検と部品交換はやり続けるでしょう。

外食業では、大惨事はめったに起きませんが、「店は毎日毎日劣化が進んで、客数が減り続けているのだ」、ということを痛切に思い知らなければなりません。
(次回に続く)

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