平成生まれの経営者たちが飲食業界の未来を課題と未来を語る
人手不足や原価高騰など、さまざまな課題を抱える飲食業界。次代の業界を担う若手経営者たちは、業界にどんな課題を感じ、どんな未来を描いているのか。2025年春に「HND(HEISEI NEXT DREAMERS)」を立ち上げた4人の若手経営者に集まってもらい、座談会を開催。
HNDで行っている活動の内容や、飲食業界に感じている課題と解決策、飲食業界でどんな未来を描いているのか、実現させたいか、などを語ってもらった。
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座談会メンバー
ファシリテーター
目次
・平成会の発足と活動内容
・労働環境と人材課題
・飲食店の生産性と収益性
・業界の将来像とHNDの展望
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平成会の発足と活動内容
志水 まずはHND(HEISEI NEXT DREAMERS)の立ち上げについて伺います。どのような経緯で始まり、今どのような活動をされていますか。
大崎 HND は2025年5月に正式に発足しました。もともと東京・大阪のそれぞれに平成生まれの同世代の経営者同士のゆるやかなつながりがあったんですが、僕自身、東京から見て大阪の経営者たちの勢いのよさをコンサル業を通じて感じていました。そこで「一緒に飲み会をやったら面白いだろうな」という思いで集まったのがHNDの始まりです。その後、きちんと理念を固めて組織化することにしました。
柴田 僕たち大阪の同世代の経営者は、勢いよく出店を重ねていくスタイルが多いんですが、東京の若い経営者は1店舗ごとに完成度が高くて細部の作り込みを重視するスタイルで、特徴がちょっと違うなと思っていて。同世代で横のつながりを作ることで、お互いに学ぶことが多いと思いました。
山田 僕は飲食店経営者ではありませんが、HNDの運営を補佐する事務局の立場で関わっています。2025年5月に行われた初回の会には、総勢25人の経営者が参加しました。会では大崎さんが人事に関する話をされたほか、「日本外食新聞」編集長の川端 崇資(たかし)さんの方を招いて、居酒屋業界の歴史を一から教えていただきました。
大崎 HNDのコンセプトは「子どもたちの夢になる業界に」です。僕たちの世代は、情報をシェアしたいという思いが強い。ノウハウを出し惜しみせず、「みんなで業界を良くしていこう」という思いでつながっていければと思います。
現在の参加条件は「10店舗以上の飲食店を経営している、あるいは目指していること」、そして「既存メンバーからの推薦があること」の2点です。来年以降はもう少し参加の幅を広げていきたいと考えています。今は2か月に1回の定期勉強会と懇親会を想定していますが、いずれは店長たちが主体的に学べる場も設けていきたいですね。
山田 2026年度以降に、現場で働く店長やリーダー層に向けた勉強コンテンツの作成にも取り組みたいと話しているところです。飲食業界に関心を持ってもらい、「ここで働いてみたい」と思ってもらえるようなきっかけをつくれたらうれしいです。
塩澤 僕は地元の山梨で飲食店を経営していますが、地方では今も現金商売や家族経営の店が多く、都市圏とは異なる課題があります。そうした中で、HNDのように若い世代が集まって議論できる場があることは、地方にも新しい発想やイノベーションをもたらすきっかけになると期待しています。
労働環境と人材課題
志水 次に、HNDのみなさんが感じる飲食業界の課題について伺います。
大崎 前回の会で特に意見が一致したのが、「店長の給与が低すぎる」という点でした。飲食業があこがれの職業になるには、まず労働環境と給与水準の見直しが必須です。現状では月給30万円台というケースも多いですが、それでは夢を持たせられません。最低でも月50万円、ゆくゆくは年収1,000万円を目指すようなモデルが必要だと考えています。
塩澤 一般的に飲食業は出店のハードルが比較的低いですが、それによるメリットもデメリットもあると思います。例えば、飲食店にも免許制を設けるなど、一定の参入基準があってもおもしろいかもしれません。
志水 飲食業界自体の制度的な課題もあります。たとえば午後10時以降の勤務には割増賃金を支払う必要がありますが、飲食店では深夜料金がルール化されておらず、価格に反映できないのが実情です。こうした不均衡を是正するための行動も必要ではないでしょうか。
柴田 そうですね。そもそも飲食業界は、業界内での情報共有が足りなさすぎると感じています。良い取り組みをしている会社はたくさんあるのに、他社のやり方を知らないまま働いている従業員や経営者が多く、結果として古い、または悪い価値観に引きずられてしまう。だからこそ、売上アップの方法や制度設計などを積極的に共有し、業界全体が良い方向に進むようにしたいと考えています。
志水 HNDのような横のつながりが広がれば、知らずに不利な状況に陥る経営者や店長を減らせるかもしれませんね。
山田 「飲食業は儲からない」とよく言われますが、決してそんなことはありません。DXを取り入れて業務効率を上げたり、メニューにしっかりと付加価値を乗せることで、必要なところには投資しつつ、無駄なコストは抑えることができ、きちんと利益は確保できます。業界全体の評価を高めていくには、一定の水準を満たす企業が増えることが不可欠です。
柴田 人材不足が課題とされていますが、例えば僕の会社では、年6回ほど社内イベントを行い、学びと本気の楽しさを両立させる取り組みを続けています。その結果として、高い定着率を維持できています。他社からの引き抜きについても、僕はポジティブに捉えています。きちんと評価される環境に人が流れるのは自然なことですし、逆にそこをサボっている会社から人が離れていくのは健全なことだと思います。
大崎 僕の会社では「カンテラ採用」という制度を導入しています。アルバイトとして働く若手が「ここで働き続けたい」と、社員にステップアップできる仕組みです。現場で活躍する店長やマネージャー、部長が生き生きと楽しく働いている姿を見せることが、制度の成功につながっています。HNDに参加している経営者の多くも、カンテラ採用やリファラル採用を積極的に取り入れていて、これが僕たち世代の強みだと感じています。
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飲食店の生産性と収益性
志水 日本の飲食店では、生産性や収益性がなかなか上がらないという声も多く聞かれます。
山田 飲食業界では、お客様に良いものを届けたいという思いが強い経営者が多い反面、裏側のオペレーションやバックオフィスの整備に対する意識が弱いと感じています。その結果、業務効率化が進まず、無駄なコストや労力が発生しているのが現状です。また日本の消費者には、まるで「スタンプラリー」のようにさまざまな店を巡る文化が根づいていて、店にとってはリピーター獲得が難しく、新規顧客に頼らざるをえない一面もあります。これもまた、飲食店の生産性を大きく下げる要因になっています。
今回の参加メンバーの店舗のように、しっかりと利益を確保できる取り組みをしている飲食店を増やすことが、業界全体の底上げにつながると思います。
大崎 HNDには優秀なメンバーがそろっているので、僕たち自身が業界のモデルケースになれるように取り組みたいと思っています。生産性や収益性に課題があるとされるこの業界ですが、僕たちがしっかり上を目指して成長していけば、その姿が業界全体の意識を引き上げる力になると信じています。
業界の将来像とHNDの展望
志水 HNDとして、またはそれぞれの会社として、5年後や10年後にどのような業界の未来を描いているのか、お聞かせください。
山田 これまで築かれてきた飲食業界の歴史や文化を尊重しながら、私たちの代で業界をよりクリーンに、そして働く人たちが物心ともに豊かになる環境にしていきたいです。次世代を担う若い人たちがワクワクできる、希望ある業界をつくっていけたらと思います。
柴田 従業員数が非常に多い業界なので、働く人たちが日々の業務で、自分の存在価値や成長をしっかり実感できる職場にしていきたいですね。「飲食店で働きたい」と前向きになれる業界にしていきます。
塩澤 地元の山梨を良くしたいという思いから、東京からUターンして飲食店を開業しました。地域にはさまざまな課題がありますが、それらの課題解決のためには自社を成長させることが第一です。地域に根差しながら、業界全体の課題と向き合える存在になりたいと考えています。
大崎 HNDには飲食業界をより良くしていきたいという熱い思いを持ったメンバーがそろっています。だからこそ、この会を5年後、10年後も継続し、志をつなげていくことが大切です。僕たちが諦めてしまえば、次の世代に希望はつながりません。「飲食業って、いい仕事だよね」と胸を張って言ってもらえるような未来をつくっていきたいです。
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